【メルマガバックナンバー】著作者人格権の中の「同一性保持権」の話

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こんにちは!

Wind Band Press編集長の梅本です。

編集長コラムでは、最近気になることや、経験上何か役立ちそうなことなんかを、ちょこちょこと書いていきます。

今日は2023年3月30日のメルマガのバックナンバーです。


ちょっと前(先週か先々週くらい)、作曲家のオットー・M・シュワルツ氏がFacebookで怒っていました。

彼が吹奏楽作品のスコアを公開していたら、「友達」が彼のスコアをインターネットから「コピー」したそうです。

これがダウンロードを指すのか、ダウンロード出来ないスコアを写し取ったのかは不明です。

そのうちの一人がどうやら彼の曲を勝手にアレンジしてYoutubeに音源をアップロードして、さらにそれを販売したいとオンラインに投稿していたようです。

これについてシュワルツ氏は「なぜか狂気が勝っている」と言っています。(Facebookの翻訳によると)

改変やカットも含めて、日本だけでなく海外でも起こる「無許諾アレンジ」。

何が問題なんでしょうか。

今日は著作権のうち最も基本で重要な権利、「著作者人格権」についてお話してみます。

著作権は人格的な権利(著作者人格権)と財産的な権利(財産権)に分かれます。

「著作者人格権」とは基本的に下記のような内容です。

・公表権

・氏名表示権

・同一性保持権

という3種類の権利が含まれます。

著作者人格権は著作者だけが持っている権利で、譲渡したり、相続したりすることができません。

まず公表権は、「自分の著作物を公表するかしないか、また、いつどのように公表するかを決めることができる」という権利です。

氏名表示権は、「著作物の公表にあたって、著作者の名を表示するかどうか、表示する場合は実名にするのかペンネームにするのか、そういったことを決めることができる権利」のことです。

そして今日の本丸の同一性保持権。

これは、「自分の著作物の内容などを自分の意に反して勝手に改変されない権利」です。

つまり、どのような形で作品を公表するか、という権利は著作者のみに付与する権利であり(作曲した時点で無条件で発生します)、許諾を得ずに他人が作品の形を変えて公表する権利はないということです。

ましてやそれを販売する権利もありません。

販売については著作者人格権とともに財産権にも関係してくる内容で、よく「違法コピー」と問題になるのはこの財産権に含まれる「複製権」の部分の話ですね。

この辺はWind Band Pressの過去記事を下の方にリンクしておきますのであらためて確認してください。

同一性保持権が大きく関わるコンクールカットに関して言えば、権利内容を演奏する側から解釈すると、「著作者の著作物の内容などを著作者の意に反して勝手に改変してはいけない」ということになりますね。(許諾を得ていればOK)

結局無許諾カット・改変も違法コピーも、それを行っても何も起きないのは、単に作家さん(著作者)や出版社の「お目こぼし」に預かっているだけであり、彼らがキレたら当然民事請求や刑事告訴の対象になる可能性があります。

個人で違法行為をしているだけであれば影響が及ぶ範囲は個人ですが、例えばそれが学校の吹奏楽部の関係者だったらどうでしょう。

刑事責任を問われるような事態になればその学校の「吹奏楽部」の存続について学校側は検討せざるを得ないのではないでしょうか。

僕はWind Band Pressを通じて著作権についていくつか発信してきましたが、正義だ悪だという話ではなくて、「最終的に割を食うのが学生(または他の団員)」という状況になってほしくないから書いてきました。

また、「最終的に違法かどうかを判断するのは法廷である」というあくまでも法律の話になるので、例えば「万引きをしたら捕まるよ」とか、そういうことと同じように、「音楽に携わる人」の一般知識として知っておいて欲しい決まりごとだなと思っています。

今はコンクールの映像がYou Tubeに(違法か合法かを問わず)アップされて、海外からも見られる状況です。

後から著作者や出版社と揉め事に発展することのないよう、カットする場合は事前に出版社などを通じて確認をしておくのがベターかなと思います。

繰り返しになりますが、改変内容について許諾を得ていればOKなのですから、カットなどをする場合には許諾を得るのがまず最初にすべきことかなと思います。

Wind Band Pressの過去の著作権法関連の記事はこちらです。

コンクール前に合わせて再読して頂ければ幸いです。

▼音楽著作権について学ぼう~特に吹奏楽部/団に関係が深いと思われる点についてJASRACさんに聞いてみました
https://windbandpress.net/4673

▼カットを含む編曲許諾についてはどこに問い合わせればいいの?基本的な事項と海外出版社の連絡先リスト
https://windbandpress.net/17979

▼「吹奏楽コンクールの自由曲にオススメ!」に注意しよう
https://windbandpress.net/17952

▼スコアの拡大コピーは違法?「でも出版社がA4サイズしか販売していないし、吹奏楽だとA4で指揮するのは難しい」そこでJASRACさんに確認してみました
https://windbandpress.net/16645

▼【許諾が必要な場合も】演奏会の動画配信やアップロードに必要な著作権の手続きなどについてJASRACに確認してみました
https://windbandpress.net/15225


以上、メルマガバックナンバーでした。

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