スコアの拡大コピーは違法?「でも出版社がA4サイズしか販売していないし、吹奏楽だとA4で指揮するのは難しい」そこでJASRACさんに確認してみました






こんにちは!Wind Band Press編集長の梅本です。

Wind Band PressではこれまでにもJASRACさんにご協力いただいて身近な疑問を記事にまとめています。

■【インタビュー】音楽著作権について学ぼう~特に吹奏楽部/団に関係が深いと思われる点についてJASRACさんに聞いてみました
https://windbandpress.net/4673

■【許諾が必要な場合も】演奏会の動画配信やアップロードに必要な著作権の手続きなどについてJASRACに確認してみました
https://windbandpress.net/15225

最初のインタビューにもあるように楽譜のコピー(複製)は結論から言うと(JASARC管理楽曲であれば)JASARCに複製手続きの申請が必要です。抜粋してみますね。

 

(梅本)―学校の部活動で楽譜を使用する場合、吹奏楽部で購入した楽譜(スコアやパート譜)を必要に応じて団員や指導者用にコピーして使用することはできますか?教育目的のコピーは認められるという意見もあると思いますが。

(JASARCさん)結論から申し上げますと、JASRACに手続きが必要です。

教育機関での「複製」に関しては、以下5つの要件をすべて満たす場合には著作権者の許諾を受けなくても良いとされています。

1. 学校その他の教育機関であること(営利を目的として設置されているものを除く)

2. 教育を担任する教員や教育や授業を受ける児童・生徒がおこなう複製であること

3. 授業の過程での使用を目的としていること

4. 必要と認められる限度内であること

5. その著作物の種類や用途、複製する部数や態様などから考慮して、著作者の利益を不当に害しないこと

ご質問のケースでは、上記の1から4はクリアできている、あるいはクリアできると思いますが、5に該当しないと考えます。

部活動での使用となりますとそれなりに人数もおられるでしょうし、たとえ人数が少ない場合でも繰り返し使用される実態を考慮しますと、結果的に多数のコピーを行うことと変わりなく、

著作権者の利益を害すると考えますので、出版利用の手続きをするよう案内しています。

 

というような内容でした。

でも、実際のところ、吹奏楽の楽譜(フルスコア)でA4サイズって、指揮や指導を行う際に読みづらいですよね。

レンタル楽譜とかだとスコアがA3やB4だったりすることもありそうですが、出版譜だとA4サイズのスコアが国内外問わず多いかなと思います。大判スコアの別売りがされているわけでもなく。(一部出版社は別途大判スコアを用意しています)

ですので、大判スコアを別途買うこともなかなか出来ないわけで、先生から生徒に「ちょっとこれ拡大コピーしておいて」と頼むようなことも割と普通にあるんじゃないかと思います。

その際に「よーし複製手続きすっぞー」なんていうバンドはほとんどないんじゃないでしょうか。しっかりされているバンドもたくさんあると信じたいですが、特に学生さんにそこまで教えている部活とかはないだろうな・・・ということで、

「これはOKなの、NGなの」

というところを今回はJASARCの「複製部出版課」の方にご回答をいただきました。

今回は申請(手続き)の方法なども記載しますので、ご活用ください。

基本的に、吹奏楽の楽譜(PDではない)の前提で質問をしています。

ではさっそくいってみましょう。


Q1. 吹奏楽の楽譜は楽器種類が多く、A4サイズのスコアでは読みづらいため、指揮者・指導者・先生などが生徒に拡大コピーを依頼したり、自分で拡大コピーをしたりすることがよくあるかと思われますが、下記の場合、この拡大コピーが違法コピーにあたるかどうか、教えていただきたく存じます。

なお、下記については「出版社がA4サイズのスコアしか販売していない」または「出版社がスコア単品での販売を行っておらず、なおかつ同梱されているスコアがA4サイズである」場合です。

・有料公演のための練習または公演本番での使用のために、A4サイズのフルスコアを拡大コピーする

・無料公演だが指揮者を含め出演者の誰かに出演料が発生する公演のための練習または公演本番での使用のために、A4サイズのフルスコアを拡大コピーする

・有料公演/無料公演を問わず、指揮者以外の外部講師や団員のためにA4サイズのフルスコアを拡大コピーする

・公演予定はなく、あくまでも使用は日常の練習の範囲内であるが、指揮者用にA4サイズのフルスコアを拡大コピーする

 

A1. 前提として複製権は倍率に係わらず権利が働きます。倍率の変更につきましては著作物の種類によっては認められないこともあるかと存じますが、楽譜コピーに関しては楽譜出版社にコピーの許可をお取りいただく際に確認していただければ良いと思います。

また、演奏権につきましては著作権法第38条で入場料無料・無報酬・営利性なしであれば著作権は制限されますが、複製に関しましては入場料無料・有料に係わらず著作権手続きが必要となります。

(複製権に関しましては著作権法第30条で私的使用のための複製が認められております。)

個別のご質問についてご回答いたします。

(1)有料公演のための練習または公演本番での使用のために、A4サイズのフルスコアを拡大コピーする 。

(2)無料公演だが指揮者を含め出演者の誰かに出演料が発生する公演のための練習または公演本番での使用のため に、A4サイズのフルスコアを拡大コピーする 。

(3)有料公演/無料公演を問わず、指揮者以外の外部講師や団員のためにA4サイズのフルスコアを拡大コピーする

(4)公演予定はなく、あくまでも使用は日常の練習の範囲内であるが、指揮者用にA4サイズのフルスコアを拡大コピーする

(1)~(4)とも私的複製の範囲を超えますので著作権手続きが必要となります。

楽譜出版社にコピーの許可をお取りいただいた後、著作権手続きをお取りください。

(注:手続きの方法は後述します)

Q2. 次に、縮小コピーについてです。下記は「出版社が販売しているフルスコアのサイズがA4・B4・A3のいずれかしかない」または「出版社がスコア単品での販売を行っておらず、なおかつ同梱されているスコアがA4・B4・A3のいずれかしかない」」場合を想定しています。

・指揮者、指導者、先生や団員、部員、または愛好家が、販売されているフルスコアのサイズ(A4-A3)では持ち運びに不便なため、移動中でもスコアを勉強したりするために縮小コピーを行う

これは違法コピーに該当しますか?(もちろん先に自分で購入している場合の話です)

A2. 個人が自分の勉強用にコピーをされることは私的複製の範囲内と判断されますので、ご自由にご利用いただけます。著作権手続きは必要ありません。但し縮小コピーをされることにつきましては楽譜出版社の許可をお取りいただいた方が良いかと存じます。

 


以上が基本的な「違法と考えられるかどうか」のご回答です。基本的に「読みづらいからといって勝手に拡大コピーしたらダメよ」という感じですね。

手順としては・・・

JASRAC管理楽曲の場合:出版社に拡大コピーについて確認後、JASRACに申請
JASRAC管理外の楽曲の場合(外国作品などでサブパブリッシャーがない場合など):出版社に拡大コピーについて確認

という流れになるかと思います。

国内作品・外国作品の管理状況についてはJASRACのデータベースをJ-WIDで検索できます。

J-WID
http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/

では、具体的な手続きはどうしたらよいのでしょうか。

JASRACの出版に関する申請方法はこちらにまとまっています。
https://www.jasrac.or.jp/info/create/publish.html

その前に、手続きをして複製をした場合にいくらぐらい費用がかかるのか、というお金の算出方法についても確認してみました。

■合法な複製に必要な費用の算出方法

楽譜コピーは販売用ではないその他の出版物(種別J)となります。
使用料はこちらをご参照ください。
https://www.jasrac.or.jp/info/create/cal_other.html

100部までは1件単価が1,600円+税ですね。これはJASRAC管理楽曲(内国作品)の場合です。意外と安い。

ただし「※外国作品につきましては、サブパブリッシャーが指定した最低使用料を1件単価が下回る場合には、最低使用料の額となります。」ともありますので外国作品については注意が必要です。後述する問い合わせ窓口に事前に相談したほうが良いでしょう。

なお、高校までの教育機関における楽譜コピーについては次の減額措置があるそうです。

100部まで 詞・曲それぞれ400円に減額
500部まで 詞・曲それぞれ800円に減額
(501部以上は規程使用料と同額)

スコアの拡大コピーの場合はおそらく1-2部でしょうから、1件単価としては400円+税という感じですかね。安いな。学割バンザイ。

では続いて申請を行う方法です。

■インターネットで複製の申請を行う方法(窓口)

J-RAPPの窓口開設を行えばインターネットでの申請が可能です。
J-RAPPの窓口開設はこちらをご参照ください。
https://j-rapp.jasrac.or.jp/default.asp?seq=0

■電話や郵送で複製の申請を行う方法(窓口)

出版利用申込書を郵送・FAX・メールのいずれかの方法で提出します。
出版利用申込書はこちらからダウンロード可能です。
https://www.jasrac.or.jp/info/dl/p_01.pdf

申請を終えた後の許諾料の支払いですが、許諾後2~3ヶ月後にJASRACから請求書が送られてくるので、記載の口座に振込をします。

基本的には以上のようになります。

その他、複製に関するJASRACのお問い合わせは複製部出版課で良いと思いますので、コピーについて「この場合はどうしたらいいのかな」と思ったら出版課まで。
shuppan-contact@jasrac.or.jp

その他お問い合わせ窓口一覧はこちらです。
https://www.jasrac.or.jp/smt/news/20/200410.html

お問い合わせの前に「よくあるご質問(FAQ)」のページを見ておきましょう。
https://secure.okbiz.okwave.jp/faq-jasrac/?site_domain=jp

Wind Band Pressでちょくちょくこういう記事を出すのは、最初のインタビューにもあるように、著作権法違反をした場合に罰則があるからです。

(梅本)―他人の著作物を無断で利用するとどうなりますか?

(JASARCさん)他人の著作物を無断で利用することは、著作権法に定める例外を除き、固く禁じられております(著作権侵害)。必ず事前に利用許諾手続きを済ませてください。

著作権者は、著作権侵害者に対し、損害賠償請求、不当利得返還請求、侵害物や侵害に供された機器の廃棄などを請求することができます。話合いで解決に至らない場合は、やむをえず司法に判断を求める場合もあります。

なお、悪質な侵害に対しては、民事上の責任だけでなく、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金など刑事上の罰則が定められています。

 

先生一人が罰せられてそれで済むならまだダメージも少ない方ですが、学校内や教育委員会で問題になって部活の存続や活動などに影響が出ると、「先生に言われてやっただけ」で損を被るのは生徒さんです。

楽器楽しそうだな、楽器好きだな、吹奏楽楽しいな、そうやって活動している人や、これから活動をしたいと考えている人から活動の場を奪ってしまうことにもなりかねません。

今回、拡大コピーに関して言えば、意外と安いことがわかったので、もしコピーが必要な場合は1.出版社に確認、2.(JASRAC管理楽曲の場合)JASRACに申請、という流れでやってみてください。

若干めんどくさいなと思うかもしれませんが、その手間を惜しむと上記のような民事・刑事の案件になる可能性もあるので、著作権法違反とならないように気をつけましょう。




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