【編集長が最近思うこと】「吹奏楽コンクールの自由曲にオススメ!」に注意しよう

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こんばんは!ただいま営業時間外の22時頃。

Wind Band Press編集長の梅本です。

この編集長コラムでは、最近気になることや、経験上何か役立ちそうなことなんかを、ちょこちょこと書いていきます。


吹奏楽のマーケットと一口に言ってもいろいろな商品があって商品ごとに「売り時」のようなシーズンがあります。

今日は楽譜のお話です。

だいたい1月~3月くらいに、各出版社や小売店が「今年の吹奏楽コンクール自由曲にはこんな曲がオススメですよ」といった具合に「コンクール自由曲」に特化したカタログCDを出したり、キャンペーンを仕掛けたりします。

それ自体は何も悪いことはなくて、「新しい曲でコンクールに臨みたいな」というバンドや、「今年のカラーに合うような曲を探したいな」というバンドにとって役に立つものです。

部活動や社会人吹奏楽団に指導に来ている演奏家などがオススメ曲を持ってきたり、OB・OGから曲を推薦されることもあるでしょう。

世に出ている楽譜の数が膨大なので、やはりいくつかセレクトしてもらったほうが助かる面もあるかと思います。そこは素直に「ありがとう」で良いと思います。

ただ、ひとつ注意したいのが著作権です。

著作権の中の「著作者人格権」という権利の中に「同一性保持権」というものがあります(著作権法第20条1項)。

JASRACのページから引用しますと、

著作物の内容および題号(タイトル)の同一性を保持する権利をいいます。この権利は、著作者のみに専属(一身専属)するため(同法第59条)、編曲、替歌、詞の翻訳など作品を改変して利用する場合、JASRACの管理作品であっても、作曲者や作詞者など原著作者の同意が必要になります。

となります。

JASRAC自体は「財産権」について信託を受ける団体なので、「同一性保持権」についてはJASRACに言っても何も対応できません。そのため「JASRACの管理作品であっても、作曲者や作詞者など原著作者の同意が必要になります」という表記になっていますね。

上記を理解していただいた上で、お話を進めていきます。

大きな改変を伴う「編曲」などは「権利者からの許諾が要るんだろうなあ」ということは薄々感じておられる方は多いかなと思います。知らない方もいらっしゃるとは思いますけれど、最初は誰も知らないので、都度知っていけば良いかなと思います。

気をつけたいのは「カット」ですね。

吹奏楽コンクールといえばカット、カットといえば吹奏楽コンクールというレベルで吹奏楽コンクールと密接な関係にあるカットですが、これも基本的には著作者または権利者に無許諾で行う場合は「同一性保持権の侵害」と考えられます。

カットそのものは、良いも悪いもなくて、権利者によって価値観が様々なので、「カットしても良いよー、なんならカット案考えちゃうよー」という方もいれば、「絶対カットは認めないよー」という方もおられるでしょう。それは著作者の自由な権利なので「あいつはカットを認めない」などと批判するのは筋違いというものです。

例えば皆さんが渾身の4コマ漫画を書いたとして、「長いから3コマ目は削っていいだろう」と勝手に削られたら、話が変わってしまいますよね。曲をカットするということはそれと似たようなことかなと思います。「もし自分の作品だったら・・・」と想像力を働かせるのも大事です。

また、カットについては、「吹奏楽コンクールでのカットを認める」ということを権利者とあらかじめ取り決めている出版社もあれば、そうでなくて、都度著作者に確認する出版社もあるでしょう。

いずれにしても「作品を改変して利用する場合」、「作曲者や作詞者など原著作者の同意が必要になります」というわけですから、事前に「カットはご自由に」と権利者から言われているわけでなければ、「吹奏楽コンクールで使いたいのでカットしても良いですかー」というお伺いを立てなければいけません。その窓口になるのが出版社だったりするだけです。

最近は楽曲を使用する側(演奏する側)でも著作権に関する意識も高まってきていますし、各吹奏楽連盟が「改変するなら許諾書出してね」というようなことを出場団体に求めていると思うので、大昔に比べれば大丈夫だろうとは思うのですが、「カット」に対してどこまでクリーンにやっているかは疑問があります。

数年前にも作曲家のジョン・マッキーが、コンクールでカットされた自分の曲の映像をFacebookに投稿して嘆いていましたね。あれがマッキーがカットを認めた演奏なのかそうでない無許可のカットの演奏なのか、僕は知りませんけれど。

あとは、「昨年まではカットを認めていたけれど、今年は認めない」ということも起こりえます。

なぜかというとカットを含めた著作物の内容の改変を認めるか認めないかの権利は「著作者のみに専属(一身専属)するため」です。

著作者または権利者が方針を変えれば、「今年はカットは認めませんよ」ということも起こりえるわけですね。

カットというのはそういうものなので、特に注意していただきたいなと思うのは、「明らかに吹奏楽コンクールの規定時間内に収まらない作品を出版社や小売店やその他の人から推薦されたとき」です。

オススメしてきた人がカットの許諾を得てくれるわけではないですし、どこに許諾申請をすればいいかも知らないかもしれません。

特に海外の長尺の曲をオススメされた場合は注意して下さい。「この曲でコンクールに臨むぞ!」と楽譜を購入したものの、肝心のカットの許諾が得られない可能性もありますし、「お店が推薦しているんだからカットしても良いんだろうなあ」と早合点して無許可でカットして、後から「そのカットでの演奏は認めていませんよ」と著作権や出版社から演奏を禁止されたりした場合、損をするのはオススメした人たちではなく演奏者です。

曲をオススメする会社や人も、別に著作権のことを細かくわかっているとは限りませんし、むしろ知らない人のほうが多いかもしれません。長く違法コピーが蔓延していた業界ですから、そういう中で育っていれば、別に大人だろうがお店の人だろうが著作権に関する認識については演奏現場とそう大差ないか、知識がアップデートされておらず演奏現場よりも詳しくない人も当然いるでしょう。(中には凄く詳しい人もいらっしゃいます)

ましてやオススメする会社やお店の人は著作者ではないですし、許諾代行業務を委託されていない限り、編曲許諾を出す権利もないわけです。

ですので、カットそのものの善悪や是非の話ではなくて、「カットしないと収まらない曲を自由曲にオススメされたときに」は「その曲を選んで大丈夫だろうか」と注意しましょう、というお話です。

「どうせ日本で無許可でやっていることなんて海外の著作者にわかりっこない」と思うかもしれませんが、ところがどっこい今の時代はネットで世界中に発信されますからね。後から大問題に発展する可能性は昔より高いと思いますよ。

それが民事請求程度で済むのか、余罪を追及されるのか、刑事罰を受けるのか、国際問題になるのかはわかりませんが、著作権の侵害がヤバイことだという認識だけは持っておいて欲しいと思います。

カットをしなければ吹奏楽コンクールの規定時間内に収まらない作品をどうしてもカットして演奏したい場合には、楽譜を買う前に、出版社や、日本で代行をしている会社などを探して問い合わせをしておくと、様々なリスクから逃れることが出来るでしょう。

備えあれば憂いなし。

ちょっと最近気になったことでした。

もしカットの許諾についてどこに尋ねたら良いかわからない場合は、基本的には出版社になりますが、日本で代行している会社もあるので、その作品をオススメしている販売店などに調べてもらうと良いでしょう。

海外の出版社に問い合わせたい場合「どんな英語を書いたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるかと思いますので、最初に連絡するときの文例をGolden Hearts Publicationsのサイト内に用意しています。よろしければ参考にしてみて下さい。

https://goldenheartspublications.com/?mode=f9

ひとまずは今年も多くの演奏者の方が吹奏楽コンクールに出場することを楽しみにされているでしょうから、無事に開催されるよう、状況が少しでも収まることをお祈りしたいと思います。




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