吹奏楽経験者でもあり現在はミーティング&ワークショップデザイナーとしてご活躍中の菅谷宏一さんに、吹奏楽部や吹奏楽団での活動に必須の「話し合い」を上手く進めるコツを語って頂く連載の第3回です。
以前にも「チームビルディング」についてのインタビューをさせていただいた菅谷宏一さん。菅谷さんは「チームビルディングジャパン」で働く傍ら、「すがや対話工房」として様々な企業や団体の「話し合いの場づくり」を応援されています。
吹奏楽部や吹奏楽団、または企業などでもミーティング・打ち合わせ・普段の会話など、様々な場面で「対話」が行われていますが、時には話し合いがうまく進まず、いつまでも結論が出なかったり、険悪なムードになってしまうこともあるかと思います。
そこで、そんな話し合いのプロ、菅谷さんに、部活や楽団でのミーティングを円滑に進めるためのお話をしていただく連載がこの「菅谷宏一のミーティングデザイン講座」です。
第1回は「そもそも何のために話し合うのか?」
第2回は「どこまで話し合うのか?」
がテーマでした。
第3回となる今回はのタイトルは「どこから話し合うのか?」。今日から実践できるテクニックもありますのでぜひ自分の状況と照らし合わせながらお読み頂ければ幸いです。
みなさま、こんにちは!
ミーティング&ワークショップデザイナーの菅谷です。
この連載では、楽団や部活の運営に欠かせない、打合せや会議といった
“ミーティング” をデザインしていくコツをお伝えしていきたいと思います。
前々回・前回で、ミーティングの目的・目標をはっきりしておこうという話を書きました。
「ミーティングをデザインしていくコツはまだ?」
そんな声がきこえてきそうです。
ミーティングの進め方の技や工夫は色々ありますが
「そもそも何のために話し合うのか?」という目的
「どこまで話し合うのか?」という目標
が定まらなければどんな技や工夫も効果を発揮しません。
逆効果になってしまうことすらあります。
だから、もう少しお付き合いください。
【ミーティングデザインのコツその3】
現状を具体的に共有すること
です。
目的・目標はゴールと呼ばれるのに対して
現状はスタートにあたります。
行先は同じでも
どこから出発するかによって
行き方が変わります。
前回は、目的と目標の違いを、旅行で例えました。
ハワイに行くのが目的だとすると
自宅の最寄駅までだったり、成田空港まで行ったりするのは目標です。
現状は、現在地にあたります。
日本からハワイに行くのと
ヨーロッパからハワイに行くのでは
かかる時間も向かう方向も違いますよね。
ミーティングでも同じことが言えます。
「どこまで話し合うのか?」という目標(ゴール)
「どこから話し合うのか?」という現状(スタート)
が定まらないと、どんな技や工夫も効果を発揮しません。
【では、どうすればいいか?】
あなたが、顧問や幹部といったミーティングを主宰する立場なら
まずは自分からミーティングの現状を確認してみましょう。
「いまチームはどんな状態だろう?」
できれば周りの人にも聞いてみることをお勧めします。
ポイントは、そのミーティング開始時刻のチームの状態を
できるだけ具体的にイメージすることです。
たとえば、選曲会議であれば次のような現状が考えられます。
「前回でコンサートのコンセプトまで決まった」
「今日までに候補曲を考えてくるのが宿題になっている」
「前回はおおまかなコンサートの方向性について話したけど、何が決まったのか不明確」
現状についても、具体的であれば具体的であるほど
ミーティングの方向性も具体的になり
効果的なミーティングになります。
そして、前回の目標の際にも書きましたが
現状を確認する際にも、ミーティングの内容だけでなく
チームの心理面の現状も想定しておきましょう。
たとえば、
「前回ちょっと揉めてたから、まだ話しにくい人ががいるかも」
「テスト前で、ミーティングどころじゃない人がいそう」
「年明けで心機一転、モチベーションが高いことが想定される」
といった具合です。
繰り返しになりますが
ミーティングはチーム活動。
チームワークを高めるチャンスでもあります。
ミーティングの現状を具体的に共有する
ポイントをまとめると以下の通りです。
- ミーティングの開始時刻を決める
- 開始時刻のチームの状態を具体的にイメージする
- イメージするときには、ミーティングの内容面だけでなくチームの心理面も
- そのイメージを言葉にする
目標設定の裏返しになります。
あなたが、ミーティングに参加する立場でも、できることがあります。
ミーティングの初めに現状共有がなく、ぐだぐだになる予感がしたら
こんな質問を投げかけてみましょう。
「前回はどんな話をしたんでしたっけ?」
いわば前回を振り返る問いです。
堂々めぐりで生産性の低い話し合いを防ぐために
みんなの思考を振り返りに向けてみましょう。
また、チェックインも有効です。
詳しくは、今後のコラムでお届けしますが
チェックインはミーティングの初めに参加者全員が一言ずつ共有することです。
チェックインには、メンバー一人ひとりのその時その場の気持ちや気になっていることなどの現状を共有する効果があります。
書きながら思ったのですが、ミーティングって旅みたいなものだと思います。
目的地を決めて
集合場所を決めて
行き方を決めて。
新幹線に乗ってさっさと目的地に着いて観光する旅もあれば
各駅停車で景色を楽しむ旅もあれば
まっすぐは行かず寄り道を楽しむ旅もある。
目的地がミーティングの目標
集合場所がミーティングの現状に
新幹線や各駅停車といった行き方が
さまざまな話し合い方の工夫にあたります。
目的地と集合場所が定まらないと
一緒に旅をすることはできません。
迷子になってしまいます。
ミーティングの目的・目標と現状を
確認・共有したうえで
話し合いの旅に出ましょう!
それでは、今日のところはこの辺で。
気になることや質問などあれば、気軽にご連絡ください。
みなさま素敵な話し合いを!
いかがでしたでしょうか。
「すがや対話工房」のウェブサイトはこちらから。お問い合わせも出来ます。
http://sugaya-dialogue.ws
これまでのWind Band Pressでの菅谷さんの記事はこちらから読むことが出来ますので、合わせてどうぞ。
※この記事の著作権は菅谷宏一氏に帰属します。
【菅谷宏一 プロフィール】
すがや対話工房 代表・ミーティング&ワークショップデザイナー。
中央大学にて心理学、筑波大学大学院にて教育学を専攻し、対話やファシリテーション、ワークショップの哲学と技術に出会う。社会科教師として子供の教育・学習支援に5年間携わった後、複業スタイルで対話の場づくりを通して、持続可能な地域・組織づくりをサポート中。
(株)チームビルディングジャパンで組織づくりに、NPOまちなかコーディネーター・トリアウテで地域づくりに、コラーニングスペース “勉強カフェ” で大人の学びの場づくりに取り組んでいる。
(一財)生涯学習開発財団認定ワークショップデザイナー・マスタークラス。
(特非)日本ファシリテーション協会 東京支部 会員。
音楽分野では、8歳からリコーダー、10歳からチューバを始め、独奏・室内楽・吹奏楽・管弦楽などで活動。所属する大学・一般の吹奏楽団で吹奏楽コンクール全国大会に3回出場し、うち1回は金賞を受賞している。
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