「お客様と一緒に次のステージに向かいたい」ユーフォニアム奏者 今村耀氏が語る「リサイタル」

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2022年10月にホルン奏者の小川敦氏とのデュオ「Turquoise(ターコイズ)」の結成記念リサイタルツアーを行うユーフォニアム奏者の今村耀さん。

SNSに掲載された熱いメッセージから、「さらに詳しく話を聞いてみたい!」とインタビュー取材をさせていただきました。

今村さんにとってのリサイタルとは、今回のリサイタルの見どころは・・・など色々と語ってくれましたので、ぜひご一読ください。

演奏会の詳細およびチケット購入は下記記事からどうぞ。
https://windbandpress.net/18259

 


-今回のリサイタルは今村さんにとっては3回目のリサイタルで、2019年春ぶりなので3年以上ぶりとなるリサイタルですね。まだコロナ禍ではありますし、「収束」というものはないような気もしますが、他の多くの演奏家と同じように、必死に耐え忍んだ3年間と言っても良いと思います。

SNSでも発信されていたメッセージに、「私にとって【リサイタル】とは、音楽家人生をかけたとても大切な舞台です。ソロのコンサートやデュオ、室内楽、オーケストラなどたくさんのコンサートを開催・出演してきましたが、個人的には全く違うものとして、大切にしているのがリサイタルです。」とありますが、これについてもう少し詳しく話を聞かせてください。リサイタルを、他とコンサートやイベントなどとどのように違うものとして捉えているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

今村:例えば、自分が主体になって開催するようなリサイタル以外のコンサートだったら、色々何かしらテーマ性があったりして、そのテーマに沿った演奏をしていく、というのが普段やっているコンサートになります。リサイタルの場合は普段のコンサートに比べると、挑戦だったり、今まで自分が歩んできた道のまとめみたいな感じの意味合いが結構強いので、リサイタルを経てまた次に進んでいく、というような感じですね。

-ほかと比べて自発的な部分が強いという感じですかね。

今村:そうですね。プラグラムなんかもそうなんですけど、普段のコンサートだと、いつもは「お客様が楽しめるもの」ということを第一に考えているのですが、リサイタルはそこからさらに一歩踏み込んで、「自分がこういうものを出していきたい、やっていきたい、聴いてもらいたい」というのをちゃんとお客様に受け取ってもらえるだろう、ということだったり、お客様が絶対に楽しんでくれるだろう、ということを普段のコンサートよりもさらにグッと詰め込んだ感じになりますね。

-カフェ系のコンサートや小ぶりのコンサートだと、和気あいあいというイメージがあります。

今村:そうですね、「自分も楽しいし、聴いているお客様も楽しい」「みんなで一緒にコンサートを作る、楽しむ」というところは普段大事にしています。リサイタルもお客様と一緒に作るもの、という点は同じなのですが、一緒にこの瞬間に次のステージに向かっていきたいな、という意味合いも強いですね。

-お客様も一緒に次のステージに進んでほしいという。

今村:そうですね、その瞬間に立ち会ってもらいたいです。

-前の2回のリサイタルはソロ、今回のリサイタルは「Turquoise(ターコイズ)」結成記念のデュオ・リサイタルですね。小川さんとはこれまでに何度も共演されていますが、小川さんと知り合ったきっかけを教えていただけますか?

今村:小川さんと私は同じ学校(尚美ミュージックカレッジ)の出身なんですよ。小川さんが先輩にあたります。代は被っていないので学生時代に直接お会いしたことはなかったのですが。
コロナ禍になって、ミュージシャンがみんな大変な時期がありました。その時期に「自分たちにどんなことができるだろうか」「これからどうしていこうか」ということを話したりする中で小川さんと知り合いました。その時にお互い尚美出身ということが判明しました。

-小川さんの最初の印象はいかがでしたか?

今村:もともと私はコロナ前に小川さんが出演しているコンサートを聴きに行っていた、ということがあって、それも初めてお会いして話したときに発覚したんですよ。音を先に知っていたということになります。なので、「あの音の人がこの小川さんなんだ」という感じでした。お話した感じの印象は、「やっぱり誠実な演奏をされる方はこういう方なんだな」という印象ですね。

-音のイメージ通り。

今村:そうですね。

-今回のデュオ「Turquoise」結成に至る経緯について教えていただけますか。

今村:先程の「コロナ禍でアーティストがどう活動するか」という話につながってくるのですが、その話を小川さんと会ってお話しているときに、学校の先輩後輩だし、実は小川さんとは家が近いことも判明して、コロナ禍で遠くまで行けない時期だけど一緒に練習も出来るね、デュオとかやってみようよ、ということで始めたのがきっかけです。ですからコロナきっかけですね。ちょっと挑戦してみよう、みたいな。

-これまで小川さんと共演を重ねるに連れて、印象や関係性にはどのような変化がありましたか?

今村:最初はやっぱり偉大な先輩という印象で。経歴も素晴らしい方ですし。私はかしこまって毎回演奏させていただいていたんですけど、だんだんと、よくある話ではありますが、「ここを合わせよう」とか「こういう風にしたい」というような会話をしなくても、音を出しているだけで自然に合ってくるのというのが、共演を重ねていったうえで起きた変化ですね。

-良い関係ですね!

今村:やりやすいですね。

-その小川さんとのデュオ結成記念と銘打った10月のリサイタルは、ソロとデュオのプログラムがあり、それぞれの見せ場が用意されていますね。それぞれで特に注目してほしい点、期待してほしい点についてお聞かせください。

今村:ソロに関しては、私はスパークの「ファンタジー」と千秋次郎さんの「わらべうた春秋」を演奏するんですけど、先程お話していた普段のテーマ性があるコンサートの場合、こういう曲って取り上げないんですよね。お客様も疲れてしまうし(笑)。なので、その楽器のために書かれた曲だったり、その編成のために書かれた曲を、全体を通して楽しんでほしいと思っています。個人的には、今回楽譜の種類が「in C」「in F」「in Bb」「in Es」と4種類あるんですよ。ホルンでは結構そういうことがあるんですが、逆に今回ホルンは「in F」「in Es」しか読み替えがないんですよ。なので、聴いている人にはパッと聴きわからないけど、という部分かな。

-本人はめっちゃ苦労してるぞ、という。

今村:そうなんですよ(笑)。そこをちょっと面白がってもらえたら。あとは、リサイタルをやりたいなとなったときに、ホルンとユーフォニアムのために書かれた曲を探そうということになるわけですが、なかなかないんですよねそういう曲が。そんな中で見つけたのが、今回のフライヤーのテーマにもなっている「ジェミニ」という曲なんです。楽譜を手配して演奏してみて「あ、これは凄く攻めてる曲だね」と。この曲をやりたいからリサイタルをやろうという面もあったので、この「ジェミニ」という曲は楽しみにしていてほしいと思います。あとは、フライヤーには演奏順で曲名が書かれているんですけど、後半は「ハンターズムーン」から始まるんですね。これはホルンのソロの曲なんですけど、満月って色々な名前が付いていて、10月がこの「ハンターズムーン」という名前なのでそれと掛けています。また、この曲は、小川さんがホルンコンクールの「受賞記念コンサート」に出演した際に取り上げた曲で、それに再挑戦する、ということはおっしゃっていました。ですので、前半はクラシカルなプログラムで、後半は「ハンターズムーン」「わらべうた春秋」「ジェミニ」と、前半とは違って攻めにいくような雰囲気のある曲を詰め込んでいます。

-休憩が開けてからもまだまだ楽しめるようなプログラム構成になっているわけですね。次の質問に移りますが、今村さんはコロナ禍でも他の演奏家の方と比べて演奏機会は割とあったほうかなという印象です。逆に、ほとんど演奏や発表、表現の機会がないまま何年も時間が過ぎてしまって滅入ってしまっているアマチュア奏者の方も多いかと思います。今村さんにはWind Band Pressの「コロナ禍を私たちはどう生きたか」や「バーンアウト(燃え尽き症候群)にどう対処するか」の企画にもご協力いただきましたが、あれから少し時間も空いているので、あらためて今、ちょっと滅入ってしまっているようなアマチュア奏者の方々に伝えたいメッセージはありますか。

今村:演奏を一緒に出来る仲間もそうですが、演奏を一緒にする仲間だけじゃなくて「いつも聴きに来てくれていたお友達」もいるじゃないですか。その人達とのつながりと言うんですかね。自分が演奏していく中でのつながりを、大事にしてほしいなと思います。発表の機会の有る無しに関わらず、そういう仲間や友人って、多分このコロナ禍をみんな頑張って走ってきた中で、失われなかったものだと思うんです。ですので、その人達と一緒にまた演奏する、聴いてもらえる、という時を楽しみにしながら日々の練習などに取り組んでもらえたらいいかな。私も色々な生徒さんやお弟子さんがいるんですが、コロナ禍になってから休団して、楽団に顔を出せていない方もいるんです。でもレッスンだけは続けていて、なぜかという話になったときに、その方も「もう少し落ち着いたときに、自分の仲間や家族、友達に、このコロナ禍を乗り越えて成長した自分の演奏を聴いてほしいし、頑張ってこれたんだよということを見せたい」とおっしゃっていたんですよ。そういうことを思っている方は他にも多くいらっしゃると思うので、同じ気持ちでいる人は他にもいるんだということを感じてほしいし、諦めないでほしいと思います。

とはいえ、バーンアウトなどの記事を書かせてもらったりしているものの、私も今年の6月くらいは「仕事したくないなー」って時ゴロゴロするような時期があったんですよ。仕事しなきゃいけないので仕事はするんですけど。コロナ前と今の自分を比べたときに、今の自分の方が格段に演奏も良いし、色々な方から声をかけていただくこともたくさんあるんですけど、「コロナ禍」というワードだけで気持ちがそうなってしまう。「コロナ禍」という言葉を取り除くことは出来ないし、その中でどうしていくかというときに、生徒さんがそういうことをおっしゃって、「自分もそう思っていたけど、気持ちに蓋をしていたんだよな」と気付かされたというか。気付いてなかったわけではないんですけど…、言われると刺さりますよねやっぱり。

-一日の中でやる気のある時間帯と全然ダメな時間がぐるぐる回ったりしますよね。

今村:そうそう(笑)。

-上記と同じように、演奏はしないけど演奏会には行く、という愛好家の中にも、行きづらい雰囲気もあって演奏会に行く機会がなくなってしまった方も多いかもしれません。今回のリサイタルで、そういった方々の中から「久しぶりに」と足を運んでくれる人もいると思います。リサイタルを通じて、そういう方に何を伝えたいですか。

今村:さっき話していた中で、「コロナ禍でも歩みを止めずに頑張ってきたところを見てほしい」みたいな話がありましたが、それとはまたちょっと違うんですけど…・・・時間の流れは止められないので、その中で前に進み続けてきた自分がいるわけですが、コロナ禍で演奏を聴きに来れなくなった方で、コロナ前に私の演奏を前に聴いてくれていた方は、私の演奏を聴いた時間がそこで止まってしまっていると思うんですよ。今回のリサイタルに来ていただくことで、その間のギャップを埋めるのではなくて、一気に時間を進められるような、この2-3年の時間を一瞬で縮められるような演奏をしたいとは思っています。今回のリサイタルが、「久しぶりに行ってみようかな」という機会になっている方にとって、空白だったり、演奏会に行けない寂しさや、演奏会に行けなくてつまらない、と過ごしていた日々の中に、光を当てられるものになればいいかなと思っています。

-最後にあらためて、今回の久しぶりのリサイタルにかける意気込みをお願いします。

今村:今までソロのリサイタルを2回やって、今回はデュオとピアノなので、+1なんですよね。「二倍楽しめる」という言い方をよくすると思うのですが、二倍ではないんですよ。単純に大きくなるんじゃなくて、よりサウンドに厚みが増して、ソロのコンサートだけを聴きに来てくださっていた方にとっては、新しい世界が見える機会になると思っています。同じ金管楽器同士、吹奏楽だったら同じひな壇にいる楽器同士、その二人が攻めたらどうなるのか、というのを体感しに来てほしいなと思います。すごくこのリサイタルに賭けているので、その思いに応えてくれたら嬉しいです。

-時間が少し余ったので、オマケの質問をさせてください。僕もSNSを通じて今村さんの活動の一端を垣間見ているだけで実際に何が起きているのかは把握していないのですが、今村さんのSNS、特にTwitterでの発信は、ポジティブだったり力強かったり、凛としていたりする印象があります。ほんわかする投稿も多いのですが、ネガティブな投稿はほとんどない印象です。なかには他人や企業などを攻撃したりするようなネガティブな投稿が多い人もいます。使い方は人それぞれなので僕もそれを否定はしませんが、今村さんがSNSを使う上で自分の中での決め事や気をつけていることなどはありますか。

今村:いわゆる日常のツイートは、正直何も考えてないです(笑)。リサイタルとか真面目なことを言ったりするときには、書き方などに気をつけてはいます。今回のリサイタルにしても、例えばTwitterの検索でワードがどう引っかかるとか、短い文字数制限の中でいかに書きたいことを全部書くかということで語尾を調整したりとか、そういうことはしていますね。

-日常系ツイートは特に何も考えてない(笑)。

今村:何も考えてないというと嘘になりますけど(笑)。ポジティブ/ネガティブな話を書く書かないという話になると、私はもともとネガティブなことを言わないんですよね。明るく見せたいとかではなくて、楽しいことだけがある世界のほうが良いなあっていう。猫とか犬とか(笑)。

-なんでもかんでも思ったことを書いてしまうとネガティブなことも書かざるを得ないので、抑えるのも大事なのかなと思います。

今村:毎日不快なことはありますけど、それって別にSNSに書かなくてもいいし、猫に話しかけてれば良いことで(笑)。私も普段は人から聞かれて話すことが多くて、自ら自分のことってあまり話さないんですよ。Twitterって聞かれてもいないことを書く場所じゃないですか。だから自分が聞かれて嫌なことは書かないっていう。

-それは意識的にではなく無意識的なところで。

今村:そうですね。

 


インタビューは以上です。

今村さん、お忙しい中ありがとうございました!

演奏会の詳細およびチケット購入は下記記事からどうぞ。
https://windbandpress.net/18259

また、今村さんのTwitterアカウントはこちらです。ぜひフォローしてみてくださいね。(@euph_yoh)
https://twitter.com/euph_yoh

 


取材・文:梅本周平(Wind Band Press)


■今村耀氏プロフィール

埼玉県入間市出身。埼玉県立芸術総合高校音楽科卒業。成績優秀者卒業演奏会に出演。日本大学芸術学部を経て尚美ミュージックカレッジ専門学校コンセルヴァトアールディプロマ科を修了。
大阪国際音楽コンクール部門最高位他多数受賞。
ヤマハ人工知能合奏システムと国際イベント「デジタルコンテンツエキスポ」で共演。
吹奏楽雑誌「Wind-i mini vol.39」巻頭インタビュー掲載。ロケットミュージック「music people」コラム掲載。WBPにてエッセイ「音楽とお茶の愉しみ」を連載。日本ユーフォニアム・テューバ協会会報にリサイタルでの古楽器・ダブルベルユーフォニアムの演奏が掲載される他、コンサートレポート等を執筆。埼玉県のローカル局ICTVとFMチャッピーでインタビュー番組が1ヶ月放送される。
2021年夏配信アルバム「Eupianodica」リリース。
作編曲家として、ASKS Windsより室内楽、ロケットミュージックより「今村耀ユーフォニアムSOLOシリーズ」楽譜が発売中。
スタジオワークもこなしており、「テレビ東京系ドラマ・捨ててよ、安達さん」「パワフルプロ野球」「響け!ユーフォニアムxヤマハ≪北宇治高校吹奏楽部へようこそ!≫」水樹奈々他、劇伴やCD等に多数参加している。
各種コンクールの審査員をつとめる他、指導者として学生ソロコンテスト全国大会入賞を多数輩出し、吹奏楽コンクール強豪校や講習会での指導に携わり、全国大会出場や東日本大会金賞を実現している。
小江戸ウインドアンサンブル、ホルン&ユーフォニアムデュオ Turquoise メンバー。




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