コロナ禍を私たちはどう生きたか~未来に残すそれぞれの記憶~:イッポリート・パリネロさん(Ippolito Parrinello)(作曲家)へのインタビュー

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2020年、世界的に感染が拡大した新型コロナウイルス。この影響で世界中の多くの人の生活がそれまでと変わりました。日本では2020年4月7日から5月25日まで国全体が「緊急事態宣言」の下にあり、行動がかなり制限されました。特に音楽に関しては、学校が再開されないから部活動が出来ない、集まって演奏が出来ない、演奏会が出来ない、ということが起きました。その危機的状況の中でも、なんとかしなければいけない。何かをしなければいけない。そうして変化に対応する人も多くいました。

Wind Band Pressでは、2020年10月以降、特に音楽に関係する様々な立場の人にスポットを当てて、「コロナ禍を私たちはどう生きたか~未来に残すそれぞれの記憶~」という簡易的なインタビューシリーズを始めることにしました。

この難しい時期をサバイブした人の事例を残すことで、将来的にまた経済活動が停滞したり、音楽が思うようにできなくなった時に、何かしらのヒントになるのではないかと考えました。この記事は今を語っていますが未来に残すための記事です。

この記事が公開された時期はまだコロナ禍の真っ只中であり、日本は比較的落ち着きを取り戻しつつも各地での感染数が増えていたり、ヨーロッパでは感染の再拡大が起こり、毎年冬に流行するインフルエンザとも相まって不安が続く状況です。

今回はイタリアの作曲家、イッポリート・パリネロさん(Ippolito Parrinello)にお答えいただきました。


[English is below Japanese]

■コロナ禍にあって作編曲家として大変だったこと

作曲家になる前は演奏家として活動していて、(その後も)主に友人と室内楽の形式で演奏しています。

イタリアでのロックダウンの初日のことを今でも完全に覚えています。というのも、私たちが最初にキャンセルしなければならなかったコンサートでもあったからです。最初はどうしようかと混乱していましたが、時間が経つにつれ、状況が変化していることに気づき、自分たちの音楽を演奏するための多くの可能性が失われていることが明らかになりました。

特に新作の場合は、作品を知ってもらうためには発表することが不可欠なので、ライブがないことも大きな問題でした。最初は2つの方法で解決しようとしたのですが、かなり非効率的でした。

例えばリモート演奏は、仲間と連絡を取り合って演奏するには良い方法でしたが、各ミュージシャンには多くの技術的な機材を必要とし、インタープレイや音楽性は信じられないほど限られていました。その上、この方法で演奏できるのはごく一部の音楽だけです。

もう一つの解決策は自分で音楽を録音することでしたが、繰り返しになりますが、最近の音楽ストリーミングという大きな市場で方法を見つけるのは非常に難しく、現代音楽には適していないと思います:クラシカルな音楽家や作曲家はまだ楽譜やライブ演奏を通じて芸術を共有していますが、これは私の考えでは大きな特権です。

■それについてどう対応しているか(対応したか)

パンデミックでまず気付いたことは、急に勉強や練習の時間が増えたことです。この危機が世界に与えている壊滅的な影響があっても、私はまだチャンスと新しい解決策へのワクワク感を感じています。

この時間を自分や自分の作品を振り返るために使ってみたり、今まで読む時間がなかった作品をたくさん勉強するようになったり、自分で自分の演奏を録音することも多くなり、リスニング力や音楽に対する意識が高まりました。

これは私がすべてのミュージシャンに与えたいアドバイスです:技術(リモート演奏、オンライン音楽レッスン)で物事の通常の方法を再現しようとするのではなく、代わりに、自分自身とあなたの音楽と一緒に多くの時間を過ごすために、この機会を活用してみてください。

■今後の予定(どのように適応していこうとしているのか)

この時代に新しい現代作品を適応させるための最良の戦略をまだ考えています。今はソロ曲が非常に重要で、自宅でも小さなコンサートでも、最も演奏される可能性が高いことは明らかです。
私は現在、(ドメニコ・スカルラッティのスタイルで)どんな順番でも、どんな機会にも演奏できるような小さなピアノ・ソナタのシリーズを書いています。これらの新曲は、将来的にパンデミックが終わった時に、様々なアンサンブルにアレンジしやすいようなスタイルで書かれています。

現在開発中の他のタイプの作品は、録音済みのバッキングトラックを使用したソロ作品です。このような作品は、新しい可能性を広げることができると思いますし、ミュージシャンが録音してオンラインで共有することで、非常に満足感を得られると思います。

1. What was difficult for you as a composer/arranger in the wake of the corona disaster?

Before being a composer I’m a performer and I mostly play in chamber music formations with my friends. I still remember perfectly the first day of lockdown in Italy because it was also the first concert we had to cancel: at first there was a lot of confusion on what to do but with time, we slowly realized that things were changing and it became clear that many possibilities for performing our music were gone.

The absence of live performances was also a great issue especially for new music since it’s essential for new works to be presented to the public in order for people to know them. At first I tried to solve these problems with two different solutions, that proved to be quite inefficient though.

Remote playing, for example, was a good way to keep in touch and perform with fellow musicians but it requires a lot of technological equipment for each musician and it’s incredibly limited in interplay and musicality, besides, only a few pieces of music can be played this way. The other solution was recording music on my own but, once again, finding a way in the great market of music streaming nowadays is very hard and I think it’s not an appropriate venue for contemporary music: classical musicians and composer still share their art via sheet music and live performance which is a great privilege in my opinion.

2. How you are responding to it (or have you responded to it)?

The first thing I’ve noticed with the pandemic was the increased time that I suddenly had for studying and practicing. Even with the catastrophic impact that this crisis is having on the world, I still see an opportunity and the excitement for new solutions.

I’ve tried to use this time to reflect on myself and my art, I’ve started studying a lot of works that I never had time to read before and I’ve also started to record myself a lot more, increasing my listening skills and consciousness of my music.

This is an advice that I want to give to every musician: instead of trying to recreate the normal way of things with technology (remote playing, online music lessons) try to take advantage of this occasion to spend more time with yourself and your music.

3. Future plans (how you plan to adapt?)

I’m still trying to figure out the best strategy to adapt new contemporary works in this period. It’s clear that solo pieces are very important now and the most likely to be played, both at home and in small concerts; I’m currently writing a series of small piano sonatas (in the style of Domenico Scarlatti) that can be played in any order and for every occasion. These new pieces are also written in a style that makes them easy to arrange for various ensembles in the future, when the pandemic ends.

The other type of works I’m currently developing are solo pieces that uses a pre-recorded backing track: I think these type of works can open a lot of new possibilities and can be very satisfying for musicians to record and share online.


パリネロさん、ありがとうございました!

今回アイキャッチに使用した画像は今年の春に撮影されたビデオからのキャプションです(ピアノを弾いているのがパリネロさん)。文中に使用した画像はパリネロさんの地元(シチリア島のマッツァラ・デル・ヴァッロ)でご本人が撮影したものだそうです。

上述の通り、Wind Band Pressは、今後も様々な立場で音楽に関わる方がコロナ禍をどう過ごしたかの記録を未来に向けて残していきたいと考えています。




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