「自分の半径1メートルで自分の音を響かせる」サクソフォーン奏者:佐野功枝さんインタビュー




 

名古屋を拠点に、プロ吹奏楽団「名古屋アカデミックウインズ」、一宮市消防音楽隊、小江戸ウインドアンサンブル、アリオン・サクソフォン・カルテット、そしてソロ、とサクソフォーン奏者として活躍され、また金城学院大学、名古屋音楽大学の非常勤講師としても後進の指導にあたっている佐野功枝(さの のりえ)さん。

 

Wind Band Pressではこれまでに「アリオン・サクソフォン・カルテット」のこと、そして「アートピア・ウインドアンサンブル・アカデミー」についてのインタビューをさせていただいていますが、今回は佐野功枝さん自身にスポットを当ててあらためてメールインタビューをさせていただきました。

 

6月の名古屋アカデミックウインズなど最近の活動についても少し(結構?)伺っています。佐野さんのこだわりの姿勢、じっくりお読み下さい!

 


 

-サクソフォーンを始めたきっかけを教えて下さい。

佐野:中学校の部活動で吹奏楽部に入部して、バリトンサックスに一目惚れしたことがきっかけでした。

 

-サクソフォーンの好きなところを教えて下さい。

佐野:吹いていて、楽しい気持ちになる事です。

私の場合、サクソフォーンが好きだから音楽をやっているのではなく、たまたま出会って続けられている楽器がサクソフォーンだった感じです。

 

-日々の練習の際に心がけていること、気をつけていること、重点を置いていることを教えて下さい。

佐野:音色に重点を置いているので、自分の好きな音色が出ているか、気をつけて練習しています。

 

-楽器本体およびパーツや備品へのこだわり、また現在使用している楽器と備品などについて教えて下さい。

佐野:自分の理想とする音が出せる楽器、セッティングをいつも追いかけています。

新しい製品や楽器が出ると気になるタイプですが、結局のところ、自分の耳が一番、とは思っています。

【ソプラノ】

ヤマハ YAS-875EXHG マウスピース:D リガチャー:ウッドストーンGP

【アルト】

ヤマハ YAS-855(元はシルバーでしたが、我が師、雲井雅人先生の要望で小田桐工房の小田桐さんがピンクゴールドを掛けたものです)マウスピース:S90-180 リガチャー:シルバースタイン

※アルトは近々クランポンのSENZOのブロンズを購入予定

【テナー】

ヤマハ YTS-875 マウスピース:S80-C☆ リガチャー:BG

セルマー ジュビリーIII マウスピース:S80-C☆☆ リガチャー:シルバースタイン

【バリトン】

ヤマハ YBS-62 マウスピース:ヤマハ5C(近日中に変更) リガチャー:ヤマハ(近日中に変更)

 

-これまでのプロとしての活動の中で、様々なことがあったかと思いますが、「最高の瞬間」について教えて下さい。

佐野:自分の出したい音、表現したい事が出せた瞬間が時々あります。その瞬間が最高です。

 

-逆に「もっとも落ち込んだ瞬間」と、そこからどのように立ち直ったか、またはそれとどのように向き合ったか、について教えて下さい。

佐野:演奏中に突然過呼吸のような症状に襲われ、顎が震えて制御不能になった経験があります。この時はひたすら「息を吐け!」と自分に言い聞かせて難を逃れましたが、現在もその症状とは闘っています。震えが起こらないにしても、演奏中意識が無くなりそうな怖い目にも遭います。

パニック障害、ジストニア、イップス、顎関節症、様々な原因が現在では解明されてきました。

私もその中のどれか、はっきり病名はつけられていませんが、周囲でも、この症状に悩まされる奏者が増えています。この症状のために奏者を諦めたり、活動休止する友人もいます。

私は、幸い早い時点で心療内科を受診した事、無理な練習をしなかった事等で今も続けられているのかもしれません。

周囲にこのような症状の方がいらしたら「何緊張してんの?何で吹けないの?」などではなく、温かい気持ちを向けてください。

 

-ホールかどうかを問わず、様々な場所で演奏する機会もあるかと思いますが、本番での演奏にあたって心がけていること、気をつけていること、重点を置いていることなどを教えて下さい。

佐野:自分の半径1メートルで自分の音を響かせることを心掛けています。

そうすると、どんな場所でも力まず演奏できるように思います。

 

-これからさらに上達したいと考えているアマチュア奏者に「これだけは知っておいてほしい!」という心構えなどがあれば教えて下さい。

佐野:自分の楽器以外の演奏も、ぜひ、生で聴いてください!表現や音色の幅が広がります。

 

-佐野さんはプロ吹奏楽団「名古屋アカデミックウインズ」の代表も務められていますね。まず名古屋アカデミックウインズの結団のきっかけやバンドの特徴について教えてください。

佐野:一年に一回のお祭りバンドではなく「ウインドアンサンブル」を研究、追求していく機関を作りたい。という思いから結団しました。

ちょうどその頃、当時東京佼成ウインドオーケストラの団員だった仲田守さんを中心に、そのような活動を行なっているJWECC(日本管楽合奏指揮者会議)に参加する機会があり、そこに参加したメンバーで立ち上げました。

過去の作品で埋もれている曲や作曲家、日本はもちろん、世界で今、流行っている曲や作曲家を常にアンテナを張って探しています。いわゆる「吹奏楽コンクールで勝てる曲」とか、「吹奏楽で演奏した事のある知っている曲」とは違った切り口の曲を取り扱いコンサートにもプログラミングするので、とっつきにくい方もいらっしゃるかもしれません。

昨今愛好家の団体はとてもいい演奏をされていますしね。

私たちは「プロ」として活動しているので、プロは開拓者でもありたい、と感じます。もちろん、日本の吹奏楽界で有名な曲も演奏しています。

 

-6月1日には第7回となる定期演奏会が控えています。今回は「世界の吹奏楽作曲賞」をテーマに、世界の様々な作曲賞受賞作品および受賞者の作品を演奏されますが、もう少し掘り下げて、このコンセプトの下、この演目になった決め手や理由についてお伺いできますでしょうか。

佐野:昨年、私の大学の後輩であり友人の芳賀傑さんが、フランスの「クードヴァン国際吹奏楽作曲コンクール」で一位を獲りました。とても嬉しかったです。

日本で吹奏楽のコンクールと言うと「全日本吹奏楽コンクール」など、”演奏する”コンクールを思い浮かべる方がほとんどだと思いますが、海外では曲に焦点をあてたコンクールがたくさんあります。

そこで、芳賀さんの受賞をきっかけに、吹奏楽をやっている皆さんに、作曲家のコンクールが世界中に存在する事を知っていただきたくてこのテーマにしました。

世界の様々な作曲賞で入賞した作曲家はその後、「吹奏楽で演奏した事のある知っている曲」の作曲家になっていくのです。日本の吹奏楽経験者ならば知らない人はいない、と言っても過言では無い伊藤康英さん、真島俊夫さんなども、クードヴァンで入賞しています。

余談ですが、私が部活動や個人の指導でよく感じるのは、曲についても作曲家についても興味がない、と言う生徒が最近は多い事です。

作曲賞受賞作品や受賞者の曲を取り上げる事で、そこにも興味を持ってくれる生徒が増えるといいな、と思います。

 

-最近ではギター奏者の旦那様とのデュオも開催されましたが、サクソフォーンとギターのデュオは比較的珍しいのではないかと思います。このデュオでの音楽の面白いところや、活動を通して新しく発見できたことなどをお伺いできますでしょうか。

佐野:とても合う組み合わせ!とギターの事を知らなかった頃は思っていたのですが・・・。質問の通り、珍しいです。

それは何故か?!

主人はクラシックギターですので、アンプに繋いで演奏する事がほとんどありません。サクソフォーンは「音が大きい」ので、アンプが無いとギターをかき消してしまうのです(笑)

ギターとのデュオでは、アンプなどのPAが整った会場、またはアンプ持参で演奏しますが、サクソフォーンで弱々しくない”小さな音”を出す技術が以前よりも達者になりました。自分はこんなに小さな音を出す事が出来るんだ!と、発見できましたし、喜びを覚えました。

また、バッハ以前の古い音楽に触れる機会が増えました。

 

-最後に、アマチュア奏者の方や愛好家の方に向けて今一番伝えたいメッセージをお願いします。

佐野:もっと上手になりたい!と思う方は、ぜひ、いろんなコンサートに出かけて様々なプロの演奏を聴いてください!

 


インタビュー:梅本周平(Wind Band Press)


 

以上、佐野功枝さんへのインタビューでした。初めてお会いしてアリオン・サクソフォン・カルテットのことをインタビューしたのが2016年なので2年半くらい経ってますね。その間に佐野さんの環境の変化もありましたし僕自身もWind Band Pressの記事の作り方があっちにいったりこっちにいったりしていたのですが、ようやくベーシックな質問が出来たかなあと思います。その人自身に関するインタビューではまずは基本的なことがらをあらためて伺うようにしているのですが、毎回「人に歴史ありだなあ」と思いますね。

 

近日の佐野さんの演奏会はインタビューにもあった2019年6月1日の名古屋アカデミックウインズ、2019年9月4日のSAXY FIVE(名古屋アカデミックウインズのサクソフォーン・パートで始めたユニット)などがあります。

 

佐野功枝さんの公式サイトはこちらです。

https://noriesax.amebaownd.com/

 

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■佐野功枝氏プロフィール:

静岡県富士宮市出身。愛知県立芸術大学音楽学部卒業。

第7回「静岡の名手たち」オーディション合格。2005年よりソロ及び所属するアリオンサクソフォンカルテットのリサイタルを全国各地で開催。また、ソリストとしてセントラル愛知交響楽団と共演。

サクソフォンを池田崇明、中嶋秀乃、雲井雅人、仲田守の各氏に、室内楽を村田四郎、中川良平、菅原眸の各氏に師事。

名古屋アカデミックウインズ代表。

アリオンサクソフォンカルテット及び一宮市消防音楽隊テナーサクソフォン奏者。

小江戸ウインドアンサンブルメンバー。

CBDNA(全米大学吹奏楽指導者連盟)会員。

現代邦楽みさと笛三級師範。

金城学院大学非常勤講師。

名古屋音楽大学非常勤講師。




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