GIAパブリッシング (GIA Publising)の新譜「テーラーメイド(Taylor Made)」が届きましたので、簡単にレビューしてみようと思います。
皆様お待ちかね、最新の優れた作品を紹介してくれるコーポロン×ノース・テキサス・ウインド・シンフォニーのシリーズ、2018年版です。
このCDには、ジェイムズ・M・スティーヴンスン(James M. Stephenson)、ポール・ドゥーリー(Paul Dooley)、ヴィエット・クオン(Viet Cuong)といったまさに今アメリカで「旬」な作曲家の他、グランサムの新作、そしてブージョワ編曲のコゼニコフ「スラヴィアンスカヤ」の新録音などが含まれています。
まず注目は「交響曲第2番『ヴォイセズ』」が2017年のNBAウィリアム・D・レヴェリ作曲賞を受賞したばかりで、少し前に来日も果たしているジェイムズ・M・スティーヴンスン!
作曲はほとんど独学ですが、これまでに多くの委嘱を受けており、特に協奏曲が多く、シカゴ響のクラリネット奏者ジョン・イエ氏(John Yeh)から「コンチェルト・キング(The Concerto King)」というあだ名もつけられています。アメリカの主要なオーケストラの首席奏者や吹奏楽団からの委嘱が多く、今ノリにノッている作曲家ですね。
このCDには3本のトロンボーンのための協奏曲「スリー・ボーンズ・コンチェルト(Three Bones Concerto)」が収録されています。さすが「コンチェルト・キング」といったところでしょうか。この作品はCuban、Lazy、Hipと名付けられた3楽章で構成されています。それぞれのタイトルから想像できる通りのポップなテイストと、クラシカルな音楽が共存する、個性的な作品ですね。演奏するには3人の名手を揃える必要があるようで、このCDでもやや苦労の跡が見えますが、とても楽しく刺激的な作品に仕上がっています。
グランサムの「交響曲第2番“ハーフィズに寄せて”(Symphony No.2, “after Hafiz”)」、これは2016年にアメリカ海兵隊バンドがミッドウェスト・クリニックで初演した作品ですね。短い交響曲ですが、グランサムらしい独特のビートが効いています。楽器の使い方、旋律の使い方、どれをとってもさすがのクオリティですね。何度聴いても新しい発見がありそうなタイプの作品です。
そして1990年生まれながらすでに多くの作曲賞を獲得している俊才、ヴィエット・クオンの「モス(Moth)」。Mothというのは「蛾」という意味ですね。チョウと同じ目に分類される昆虫のうち、チョウ(アゲハチョウ科など)以外の昆虫を指すそうで、その種類はチョウの20-30倍もあるんだそうです。日本で蛾というと街灯やコンビニの光に集まってバタバタしていてなんか嫌だ、というイメージもあると思いますが、その辺りは共通で、ただしこの作品では蛾の「美しさ」と「グロテスクさ」を光と闇に置き替えて表現しています。光る才能を十分に感じられる作品ですので、ぜひ聴いてみてほしいですね。(ちなみに最近のコンビニはLEDなどを使っているので虫が寄り付きにくいそうです)
そして最後を飾るのは「マスクス・アンド・マシーンズ(Masks and Machines)」が2016年のSousa/ABAオストウォルド賞、2015年のNBAウィリアム・D・レヴェリ作曲賞を受賞し、一躍有名になったポール・ドゥーリーの今のところの最新作、「マーヴェリックス(Mavericks)」。
いやいや何度聴いてもいいですねやっぱり。すでに他の音源を聴いている方も多いかと思いますが、この打楽器大活躍の、下手をするとグチャグチャになってしまうようなギリギリのラインを攻めている作品を、コーポロンがどう料理したのか、お楽しみに。
今年もやっぱり、「買い」です。
ちなみにヴィエット・クオンの「モス」、ポール・ドゥーリーの「マーヴェリックス」の楽譜はWind Band Pressを運営するONSAの楽譜事業、Golden Hearts Publicationsを通じて購入可能です。
▼ヴィエット・クオン「モス」の楽譜はこちら
Golden Hearts Publications Online Storeで買う
WBP Plus!で買う
▼ポール・ドゥーリー「マーヴェリックス」の楽譜はこちら
Golden Hearts Publications Online Storeで買う
WBP Plus!で買う
また、こちらのCDは「WBP Plus!」でもお取り扱いしています。
レビュー:梅本周平(Wind Band Press)
商品詳細は以下の通り。
指揮者:ユージン・コーポロン (Eugene Migliaro Corporon)
演奏団体:ノース・テキサス・ウインド・シンフォニー (North Texas Wind Symphony)
1. コープランド・ポートレイト:デイヴィッド・コンテ(編曲:ライアン・ナウリン) [8:44]
A Copland Portrait:David Conte(arr. Ryan Nowlin)
スリー・ボーンズ・コンチェルト:ジェイムズ・M・スティーヴンスン
Three Bones Concerto:James M. Stephenson
2. キューバン Cuban [2:52]
3. レイジー Lazy [4:19]
4. ヒップ Hip [8:20]
交響曲第2番“ハーフィズに寄せて”:ドナルド・グランサム
Symphony No.2, “after Hafiz”:Donald Grantham
5. この音楽を聴け Listen to This Music [4:38]
6. 神への挨拶 Greeting God [5:46]
7. 私はライオンの前足を抱く I Hold the Lion’s Paw [7:44]
8. モス:ヴィエット・クォン [8:38]
Moth:Viet Cuong
交響曲第3番「スラビアンスカヤ」:ボリス・コゼニコフ(編曲:ジョン・R・ブージョワー)
Symphony No. 3, “Slavyanskaya”:Boris Kozhevnikov(arr. John R. Bourgeois)
9. アレグロ・ディサイシヴィリー Allegro, decisively [5:45]
10. スロー・ワルツ Slow Waltz [2:46]
11. ヴィヴァーチェ Vivace [2:16]
12. モデラート・ジョイアスリー Moderato, joyously [4:35]
13. マーヴェリックス:ポール・ドゥーリー [8:02]
Mavericks:Paul Dooley
協賛
その他Wind Band Pressと同じくONSAが運営する各事業もチェックお願いします!
■楽譜出版:Golden Hearts Publications(Amazon Payも使えます)
■演奏会の企画やチケット販売その他各種ビジネスのお悩み相談やプレスリリース代行依頼もお受けしています!
様々な経験をもとに、オンラインショップの売上を上げる方法や商品企画、各種広報に関するご相談、新規事業立ち上げのご相談など承ります。初回相談無料です。そのほか、プレスリリース代行などの実務作業も承ります。よろずご相談下さい。
▼人気の記事・連載記事
■プロの指揮者・岡田友弘氏から悩める学生指揮者へ送る「スーパー学指揮への道」
■有吉尚子の【耳を良くする管楽器レッスン法】~ソルフェージュ×アレクサンダー・テクニーク~
■【エッセイ】ユーフォニアム奏者・今村耀の『音楽とお茶の愉しみ』
■石原勇太郎の【演奏の引き立て役「曲目解説」の上手な書き方】
■石原勇太郎エッセイ「Aus einem Winkel der Musikwissenschaft」
■音楽著作権について学ぼう~特に吹奏楽部/団に関係が深いと思われる点についてJASRACさんに聞いてみました
■【許諾が必要な場合も】演奏会の動画配信やアップロードに必要な著作権の手続きなどについてJASRACに確認してみました