【今すぐ出来る実験付き】「誰でも持っている本来の力を誰でも使えるようにする」~アレクサンダー・テクニークってどうなの?講師の有吉尚子さんにお話を伺いました




近年、吹奏楽部や楽器奏者の間でメジャーになってきているワード「アレクサンダー・テクニーク」。

名前は聞いたことがあるけれど実際のところどうなんだろう?何なんだろう?役に立つの?取り入れるべき?そんなちょっと気になる「アレクサンダー・テクニーク」について、アレクサンダー・テクニーク講師の資格を持っており、Wind Band Pressでもコラムをご寄稿いただいている、クラリネット奏者の有吉尚子さんに、Skypeのビデオ通話を使って質問してみました。

皆さんもこれを読みながらアレクサンダー・テクニークの一端を垣間見ることが出来る実験も付いてます(被験者はインタビュアーの梅本自身)。

それでは「講師が語りまくるアレクサンダー・テクニーク」インタビュー、読むべし!


―早速ですが、「アレクサンダー・テクニーク」とはそもそも何なのか、という話からお伺いできますでしょうか。

アレクサンダー・テクニークって新しいスキルを身に付けたり、メソッドみたいなものと思われているんですけど、そういうものではなくて、人間がそもそも持っている、誰でも持っている本来の力を邪魔せずに使いましょう、ということなんですね。

訓練を凄く受けて特別な人しか使えないというものではなくて、元々人間の身体のしくみ自体で動けるようになっている部分を動かして、動けない部分は動かすとケガをしますから動けない部分を無理に動かそうとしないとか、「構造に沿った動きの使い方をしましょう」というものです。

それが出来なくなってしまう原因というのが、身体についての勘違いとか、動かない場所を動くと思っていたり動ける場所を動かないと思っていたりという勘違いが一つと、あとは思考についての誤解のようなものもあって、出来ないようなことをしていたり。

例えば「コンクールで審査員に上手だと思われよう」とか、恋愛だったら「自分が好きだから相手も好きになってしかるべきだ」と思ったりとか、自分でコントロールできないことをしようとしていたりとか。それでもやっぱり身体は何かをしようとして動きを起こそうとしてしまうので、ちょっとおかしなことになってしまうんですね。無理や負荷がかかったりします。

そういうことをしないで、例えばコップを持つのであれば、指がコップを掴んで、腕が曲がって、口元に来る、っていうシンプルな動き。曲がる場所、使える場所、掴むために使える場所、指だったらギュッと握るために使えますけれど、コップを持つために腕が頑張っても全然ダメなんですね。指が働かないと。そのように、出来ることを必要なことにつなげていきましょう、というものなんですね。

―元々は身体の使い方的なものでF.M.アレクサンダー氏によって考案されたんですよね。それが20世紀初頭とのことなのですが、これが110年経って近年は日本の管楽器の世界で名前が出始めたという印象があるのですが、近年盛んになっているこの経緯について教えて頂けますでしょうか。

元々、システムを発見したアレクサンダーさんが、「朗唱家」という、舞台でシェイクスピアを読んだりするお仕事の人だったんですね。声を出すのが仕事だったのですが、声が出なくなってしまい、「なんでだろう」「どうしたら治るんだろう」ということでお医者さんにも行ったけど解決しなくて、もうわからないから自分で何とかしようと。鏡を見ながら。その時に自分が何をやっているんだろうと観察して見つけていったシステム、身体の原理なんですね。

ヨーロッパの音楽学校ではスタンダードに授業として取り入れられていて、いま50代くらいの方が留学した頃にはもうすでに授業にあったそうなので、ヨーロッパでは音楽の面でも普及していて取り入れられています。

最近は日本では中学高校の吹奏楽とか、そういうところを中心に流行ってきているところがあります。バジル・クリッツァーさんが熱心に中高生向けの講座を行ったり書籍を出したりして頑張っていらっしゃるので、その影響で広まってきたというのが大きいかと思います。

―アレクサンダー・テクニークを取り入れる日本のプロの演奏家が増えている印象ですが、これはなぜだろうと思われますか。

やはり、人間のそもそも持っているシステムなので誰でも使えると言えば使えるのですが、動きの変化は繊細です。例えば今、私の頭と首が固まっている状態とゆるんでいる状態と、見た目には大きな変化が見られませんよね。

だけどそれが音になると凄くよくわかるんですよね。ダンサーさんであれば動きの質も変わりますし、ヨガの方であれば身体の動きやすさ、快適さという面では変わるのですが、音楽家はシビアに耳で音を聴いているので、変化を凄く感じ取りやすいんですよね。

そういう面でアマチュアの方よりはプロの方の方が、些細な変化を-リガチャーがどうとかリードがどうとか-聴き慣れているので、身体の使い方を変えたときに、「こんなに違うんだ」という情報をキャッチしやすいんだと思います。

―取り入れやすい、受け入れやすい素養のようなものがあるということですかね。

そうですね、変わったというのを感じやすいということに加えて、仕事にも直結しますよね。少しでも痛みがない、快適、違和感がない、というようなのが、整体に行ってお金を払ってというよりも自分で考えて出来ることなので安上がりではありますし。仕事につながるというのは大きいのかもしれませんね。

―誰でも使えるというお話がありましたが、特にどんな方に向いているのか、というのをお伺いしたいと思います。アレクサンダー・テクニークという名前はよく聞くし興味はあるんだけれど、自分に必要かどうかが分からない、と言う方はいらっしゃると思います。これを取り入れるか取り入れないかの判断はどのように行えば良いのか、という点についてもアドバイスをいただければと思います。

特にどこがどうなっているからやった方が良い、というのはないですね。音がもうちょっと良くなったら良いなあとか、タンギングが良くなったら良いなあとか、指回りが良くなったら良いなあとか、そういうことを具体的に持っている方はもちろん凄く効果を実感しやすいので、お悩みのある方にはまずオススメだと思いますね。

またそうでない方も、教える時に生徒さんが何をやっているんだろうというのを観察できるようになるので、自分は特に困ってないけど、と言う方でも良いと思います。

私も始めた時は何かに困って受講したわけではなくて、「なんか面白そうだな」という感じで見に行って(笑)、「あ、なるほど凄い面白いかも~」と思って続けてる、っていう感じだったので。

―顧問の先生や指導者の方で生徒さんのレッスンをされる方も、講習を受けたりして知識として得ておく分には無駄ではないという感じですかね。

そうですね、音楽で言えば、初心者で「昨日初めて楽器を持ちました」というような方の場合はあまり効果を実感しにくいところなので、ある程度経験があり、もう少しステップアップしたいとか、教えるのに役立てたい、という方には凄く良いかもしれませんね。

―初心者で始めたばかりの方の場合は、そこまで・・・という感じですか。

初心者の場合は身体の使い方よりも楽器の仕組みや基本的な音の出し方を知る方が先かなと、いうところですね。

―日本の管楽器奏者でも近年アレクサンダー・テクニークの講師の方が増えている印象がありますが、どんな人に指導を受ければ良いのでしょうか。例えばこんなことに困っている人はこんなタイプの講師が良いとか、相性みたいなものってあるんでしょうか。

やはり自分の演奏している楽器を専門としているアレクサンダー・テクニーク講師に習うのが一番だと思いますね。例えば打楽器の方がフルート奏者に習う、というよりは、打楽器は打楽器、フルートはフルート、という方が、繊細なところも分かったり、細かいコントロールの部分で共感出来るところもあるので、そのほうが良いかなあとは思いますね。

あとはアレクサンダー・テクニークの講座を1-2回受けました、半年くらいやってました、みたいな方だと、教えるためのスキルを習っていないことが多いんですね。アレクサンダー・テクニークを教えるのと楽器を教えるのはまた違うので、教えるためのスキル、資格を持っている人に習うほうが、質の高い指導が受けられるかなと思います。

―あとは場所的な問題で、どこで指導を受けられるのか、例えば音楽教室でやっている方も自宅事務所のようなところでやっている方もいらっしゃる印象ですが、自分の住んでいる場所の近くに講師がいるかどうかを探すためのサイトなどはありますか?

音楽専門の講師をまとめているサイトはないと思いますが、2017年の5月、私がアレクサンダー・テクニークの学校を卒業したタイミングで同期で卒業している何人かを私のページでまとめています。

音楽家向け各楽器専門のアレクサンダー・テクニーク教師一覧

後は、音楽専門ではBODY CHANCEスタジオが大阪で一つ、東京だと新宿に一つありますね。アレクサンダー・テクニーク自体を教える学校は何か所かあるのですが、音楽専門はBODY CHANCEだけかなと思います。個人で教えておられる方の場合は検索したらホームページやブログが出てくるかな?という感じですね。一覧になっているサイトはなかなか見当たらないかもしれません。

音楽に限らないのであれば日本アレクサンダー・テクニーク協会に参加してる教師の一覧もあります。

―アレクサンダー・テクニークを取り入れるにあたってのメリットとデメリットをそれぞれお伺いできますでしょうか。

メリットとしては、ロスがなくなるというのが一番大きいと思います。何かをしようとして頑張って、無駄に頑張っちゃうんだけど効果が出ない、ということが減っていくところですね。

脱力法みたいなイメージを持っている方もいらっしゃると思うのですが、脱力するわけではなくて、必要なことを必要なだけする、というものなので、無駄な頑張りとかトンチンカンな方向に行っちゃう、みたいなことが減っていくという点で、練習をするにも効率的になったり、時間短縮になったり、ケガや障害が出にくい、というところはあると思います。

自分で常に再調整していくというものなので、健康なままで動きとか動作とか、楽器でいえば演奏を、長く続けていけるのがメリットかなと思います。

デメリットとしては、格安で教えているところはないと思うので、習うのにお金が少しかかるかもしれませんね。

―だいたい相場としてはおいくらぐらいなのでしょうか。

人それぞれではありますが、1回5,000円以上というところがほとんどでしょうか。楽器を習うということであれば楽器のレッスン代+αですかね。

その他のデメリットとしては、1回2回受けても効果があんまり感じられなくて、何回か継続して動きの習慣付けを行うと効果が出やすいものですので、1回2回だけだと原理を理解するだけでも難しいというところはあるかもしれません。時間とお金がかかるかもしれませんね。

あとはそれまで行っていた習慣などを全部ひっくり返すので、例えば「腹筋をすれば上手くなる」と思っていたのが否定されたり、今まで自分が信じてたことが「そうじゃなかったんだ」とひっくり返されてしまう。

習慣を手放さなければならないところがあるので、「変化したくない」とか「新しいことをやるのが怖い、抵抗がある」という方にはそれがデメリットになるところかもしれませんね。

―歳を重ねると段々変化するのがおっくうになってきますよね、僕もそうですけど(笑)。習い始めるのに年齢は関係ありますかね?

年齢は関係ないですね。何歳からでも。

やっぱり若い方の方が習慣を新しく作りやすいので、学びのスピードが速かったり効果が出るのが早かったりするかもしれませんが、歳をとっているからダメってことはなくて、変わることに抵抗さえなければ何歳からでも大丈夫です。

筋肉を鍛えるというものではないので、むしろ歳をとって、昔は筋力でカバー出来ていたものがやりにくくなってきたという方は効果が出やすいかもしれません。

―習慣にしなければいけないという面があるということだと思うのですが、一度始めたらやめられない、やめたら悪影響が出る、というようなことはあるのでしょうか。

特にないですね。例えば肩こりをしていた人がアレクサンダー・テクニークで解消されたとして、アレクサンダー・テクニークをやめたらまた肩こりが出るかもしれませんけど、別にやめたから太るとか、そういう副作用みたいなものはないですね。元の状態に戻るだけだと思います。

―ちょっと話が変わるんですけど、僕は中学生くらいから猫背がひどくて、整体だけでは治らなくて、整体師さんからも自分でアゴを引くように意識してくださいと言われてるんです。筋肉を鍛えるというか。アレクサンダー・テクニークにもそういう筋肉を鍛える、矯正するみたいなイメージがあったんですけど、そうではないんですね。

例えば小学校とかで「気をつけ!」「背筋ピーン!」みたいな、猫背は良くない、丸くなってはいけない、という刷りこみのようなものが作られてるんじゃないかとも思うんですけど、丸くなっているものを反対側、背中側から引っ張って伸ばしましょうだと、疲れますよね。

そもそもの猫背になりたい理由はなんなんだろうっていう。例えば背が高すぎて、他の人と話すときに目線を合わせたいとか。何かしら理由があってやっていることだと思うことなので、それを解消する方法が「じゃあ反対に引っ張りましょう」だと根本解決にならないし、あんまりやりすぎるとジストニアとか、筋肉のこわばりとか、そういうのが出てきてしまう可能性がありますよね。

アレクサンダー・テクニークは、「姿勢を作りましょう」ではなくて「今何をやっているのか」「じゃあどうしたいのか」にアプローチするものなので、「正しい姿勢で吹きましょう」というものではないんですね。その人持っている骨格、筋力、その時やりたいことに沿って無理のない身体の使い方を見つけるものなんです。

―有吉さん自身はアレクサンダー・テクニークを取り入れて自分自身どんな変化がありましたか?

最初は、困っていることも特にないし好奇心で始めたんですけど、それまではそんなに音量が出るタイプではなくて、それでも大きな音量を出したい時もあって、よく先生には「軽自動車がアクセル全開でふかしてるみたいな音してるな」って言われるような吹き方だったんですね。それが割と楽に出せるようになってきました。

後は、練習する時に「うまくいかないなあ」とひっかかりがあったときに、どこがどうなっているのか自分で観察できるようになってきて練習が効率的になってきましたね。

例えば指を何本か一緒に動かすような場面で、全部を同時に動かさなきゃいけないような時、どの指がどういう速度で動いているから何の音がひっかかって変な音がするのか、という分析がやりやすくなっているので、身体の動き方についての知識を持っているのが凄く役に立っているなあと感じます。

―有吉さんに指導を受けるとして、ご自身の指導はどんな方に向いていると思われますか。

先ほどと話がかぶりますけど、初心者の方だとまずはどの指で何を押さえて、から始まるのでアレクサンダー・テクニークとはまたちょっと違って来ると思いますね。

ある程度吹いていて、もう少しブレスが伸びたら良いのになあとか、具体的に課題を持っている方であるとか、もう少し上手くなりたいけど何をしたら良いのかわからない、というような、より上手くなりたいという方、これまで長く吹いてきたけど行き詰っちゃったなあという方に向いているかなあと思います。

―ありがとうございます。インタビューは以上ですが・・・

梅本さん、ちょっとやってみましょうか(笑)

―えっ?いま楽器持ってないですけど何かここで出来ることってありますか?

よくレッスンでやるんですけど・・・梅本さん、いま背中かゆいですか?

―かゆくないです(笑)

かゆくないですよね(笑)。でもかいてみましょう。普段背中をかくときにどのくらいまで手が届くかなあってのを調べてみます。

―はい。(といいながら背中をかいています)

そうしたら次は、頭と首、動いちゃいけません。これで背中をかいてみましょう。

―・・・全然届かない!

届かないですよね。呼吸はどうなってますかね。

―止まってますね・・・

ですよね。大変なんでいったんやめましょう。では次は全部動いていいです。頭も首も方も背中も鎖骨もお腹も全部動いていいです。背中かいてみましょう。

―・・・おお!!息も出来るし届きますね!!

ですよね。この固まっている時と動けている時の違い、というのがアレクサンダー・テクニークを使うか使わないかの分かりやすい違いで、動けてる状態というのは、背中をかきたいんだったらより効率的にかける場合の方です。息が止まってしまったバージョンの時は、緊張しているときとか、難しい楽譜を初見でやるときとか、隣で嫌な人が吹いている時とか(笑)、そういう時に起こりやすい状態ですね。

ステージに上がったときにどっちのモードでやりたいか、という選択をするのが大事ですね。

―演奏時の緊張という話で言うと、僕は大学の吹奏楽部からクラリネットを始めて、最後の年の夏の公演で「くじゃく」の冒頭のソロを吹かなきゃいけなくなってしまったんですけど、初めて指揮者の先生の合奏レッスンが入った時には尋常じゃない汗をかいて、先生の前で吹き始めた時には自分でも聴いたことのないようなほっそ~い音が出てきましたね(笑)ピヨ~ッて(笑)全然息が入らない(笑)

そうなりますよね(笑)そういうシチュエーションで自分の身体に対して何て言うのかっていうのが凄く大事ですよね。

もう1個実験してみましょうか(笑)

目を閉じてイメージしてみてください。

今日はコンクールの本番です。

自分のクラリネットソロで曲が始まります。

朝イチだけど寝坊してしまいました。

慌てて会場に来て、舞台上で座っています。

指揮者の先生がもう袖から入ってきちゃいました。

審査員の先生が怖い顔でこっちを見ています。

・・・って思ったときの、呼吸の状態。

―うおお、止まってたあああ(笑)

ふふふふ(笑)身体の動き、関節の動き、結構動きが少なくなって縮こまってませんでしたか?

―いやもう固まってましたね(笑)指先だけモジモジ動いてました(笑)

そうなっちゃいますよね(笑)

それともう一つイメージしてみましょう。

コンクールが終わりました。

今日はお正月です。

後4日くらいお休みがあります。

コタツに入ってます。

テーブルの上にミカンがのって、テレビもついてます。

コタツはポカポカして暖かくて、お昼ご飯を食べた後でちょっと眠くなってきました。

・・・っていう時の呼吸の状態と身体の動き。

―わ、すんごいリラックスしてましたわ(笑)

ふふふふ(笑)ですよね。

「その時に自分に何を言っているのか」というのが凄く影響するんですよね。

この2つの実験でやっていることは同じなんです。緊張したときはこわばって動きにくくなったり。

かといって、緊張する場面でリラックスしたイメージを持ちましょう、ということではなくて、その時に自分に「息を止めたり固まったりしないで動いていい」って言えるかどうかで変わってくるんですね。

―例えば、本番前って特にアマチュア奏者はほとんどの方が緊張されると思うんですけど、舞台に上がって照明を受けてなおさら緊張する、そういう時に使えるアレクサンダー・テクニークの技ってありますかね。

そういう時に自分に何ていう声かけをするかっていうアイディアなんですけど、「緊張しなきゃいけない」「ちゃんとしなきゃいけない」「間違えたらいけない」って思うと、だいたい間違えます(笑)

なので、「緊張してるな」ってことを自分が知っている、「照明がいつもよりも暑い、まぶしいな」って感じている、ということを知ったうえで、「じゃあどうしたいか」。

このフレーズをこういう風に演奏しようとか、指をこういう風に動かそうとか、指揮者に合わせようとか、「動きのあるプラン」、肯定的な意図をもってそれを自分に言ってみる、というのが良いかなあと思いますね。

具体性がなかったり「~しない」っていう形で声をかけていると、身体が動かない方に行ってしまうので。

本番だと先ほどの照明の他にもお客様や仲間も含めて色々な刺激やプレッシャーがあるので、いつもと違う刺激が与えられたときに「じゃあ何をしよう」って改めて考えなおし続けるのが大事ですね。

そして舞台袖で考えてそれでOK、というわけにはいかないと思うんです。歩いていく、席に行くまでに緊張します。歩いている最中、椅子に座る瞬間、楽器を構えたときも緊張します。そこで、「ここで帰ってもいい」「演奏しないという選択肢もある」、その中で自分は何をしたいのかを問い続ける。そうすると、いつも通りというわけにはなかなかいかないかもしれませんけれど、普段のパフォーマンスに近い状態や、もしかしたらそれ以上のパフォーマンスができる状態に持っていけるんじゃないかなあと思います。

―なるほど。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。思った以上に喋っちゃいましたね(笑)


インタビュー・文:梅本周平(Wind Band Press)


まとめ:

いかがでしたでしょうか。

インタビューが終わったと思ったら思わぬ方向に展開し、予定の倍の時間を頂いてしまいましたが、面白い内容になったかと思います。

大学で心理学を専攻していた関係で心理学や脳神経系の話が好きな僕にもとても興味深いお話でした。

気になる方は有吉さんのメルマガなども読んでみると良いかもしれません。もちろんお問い合わせしてみても良いと思いますよ!


有吉尚子氏プロフィール

栃木県日光市出身。
都立井草高等学校卒業。2007年洗足学園音楽大学卒業。2009年同大学院修了。
クラリネットを大浦綾子、高橋知己、千葉直師の各氏に、室内楽を平澤匡朗、板倉康明、岡田伸夫の各氏に師事。

ミシェル・アリニョン、ポール・メイエ、アレッサンドロ・カルボナーレ、ピーター・シュミードルの各氏の公開レッスンを、バスクラリネットにてサウロ・ベルティ氏の公開レッスンを受講。

受講料全額助成を受けロシア国立モスクワ音楽院マスタークラスを修了。
及川音楽事務所第21回新人オーディション合格。

2010年より親子で聴ける解説付きのコンサ-ト「CLARINET CLASSICS」~クラシック音楽の聴き方~をシリーズで行う。
2015年、東京にてソロ・リサイタルを開催。

オーケストラやアンサンブルまたソロで演奏活動を行っている。
また、音楽講師のためのソルフェージュや音楽理論、演奏するときの効率的な身体の使い方などレッスンや執筆、コンクール審査などの活動も行っている。

ボディチャンス認定ボディシンキング(身体の構造と機能指導資格)コーチ。
アレクサンダー・テクニーク教師。

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