イギリスのポリフォニックから発売された新作CD「非道な運命:イギリス吹奏楽作品集 第23集(Outrageous Fortune)」。WBP Plus!でレビューを書きましたので、Wind Band Pressでもご紹介したいと思います。
ナイジェル・クラークの「非道な運命(Outrageous Fortune)」をタイトルにした、人気シリーズ「グレート・ブリティッシュ・ミュージック・フォー・バンド」の第23集(2020年)です。
演奏は王立北部音楽大学ウインド・オーケストラ(ロイヤルノーザンカレッジオブミュージック)。大学なのでメンバーも毎年変わると思うのですが、非常に高い演奏レベルを維持し続けているバンドで、日本にもファンの方がいらっしゃるのではないでしょうか。今回もとても演奏クオリティが高いです。
「非道な運命(Outrageous Fortune)」は、シェイクスピアのハムレットを題材にした作品で、「Outrageous Fortune」はハムレットの有名な独白「生きるべきか死ぬべきか?」というくだりに出てくる言葉ですね。「The slings and arrows of outrageous fortune,」(非道な運命の矢弾)という風に出てきます。トロンボーンとアクター(アクトレス)と吹奏楽のための作品で、「ドラマチックだね」という一言では片付けられない、緊張感が高く迫力もありながら気品を感じさせる作品です。日本語のテキストがあったとしても日本で演奏されることはないだろうなという曲ですね。イギリスならではという感じ。
そして多くの方が聴いてみたいのはスパークの「ドラゴンの年(2017年版)」じゃないでしょうか。これ以前にも音源があったと思いますし、日本においては改訂について賛否両論的な感じだったのが懐かしいですね。元が良いので想い出補正とか変なバイアスを抜きにしても2017年版も素敵な作品だと思いますし、これは好みかなという気がします。僕はどっちでも素敵な演奏が聴ければそれで良いです(笑)。ロイヤルノーザンはこの録音でとても良いパフォーマンスをしていると思います。
一つ飛ばして先にウィッフィン。WBP Plus!を運営しているONSAの楽譜出版事業の「Golden Hearts Publications」のほうでもウィッフィンさんの自費出版社とは契約をしているのですが、これはStudio Musicの楽譜かな。「ライト・ミュージック」は言葉遊び的なところがあるので日本語訳はしていないのですが、「Light」という言葉がもつ意味の様々な側面を描いた3楽章からなる組曲です。基本的には「光」という意味の「Light」がそれぞれの楽章のタイトルになっているのですが、メロディアスでポップないわゆる「ライト・ミュージック」という音楽の意味もかけてあります。このCDの中では最も「ライト」でしょうね。
そしてエレビー(エラビー)の曲が2曲収録されています。
「アンフィビオシティ」は2014年のマウントバッテン・フェスティバルのためにイギリス海兵隊バンド(ロイヤル・マリーンズ)によって委嘱された作品。イギリス海兵隊の350周年を記念した作品で、同隊に関連した曲のメロディも散りばめられているそうです。基本的には勇壮できらびやかな作品ですね。かなりカッコイイので僕は好きです。
「英国のキャロルによる小交響曲」は昔のエレビーの組曲の雰囲気がある楽しくキラキラした作品で、同じエレビーの「クライズ・オブ・ロンドン」に似たような雰囲気がありますね。。1-3分の短い8曲からなる作品です。室内合唱がバンバン入ってくるのと、おそらくイギリス向けの作品なので、これも日本ではまあ演奏されないでしょうから、CDでしっかり楽しんでほしいと思います。バンドも合唱もすごく優しくジェントルな音で(そうなるような楽譜なんでしょうけど)、聴いていて気持ち良いですね。
演奏も作品も素敵な一枚なので、ぜひ聴いてほしいと思います。
レビュー:梅本周平(Wind Band Press)
商品詳細は以下の通り。
■原題:Outrageous Fortune : Great British Music for Wind Band Vol. 23
■指揮者:
クラーク・ランデル(Clark Rundell)
マーク・へロン(Mark Heron)
ジェフリー・マシューズ(Jefrey Mathews)
リード・トーマス(Reed Thomas)
アレクサンダー・ウェッブ(Alexander Webb)
合唱指揮:エリー・スロラッハ(Ellie Slorach)
■演奏団体/演奏者:王立北部音楽大学ウインド・オーケストラ (Royal Northern College of Music Wind Orchestra)
トロンボーン:ブレット・ベイカー(Brett Baker)1
女優:ナタリー・グレイディ(Natalie Grady)1
合唱:カントス室内合唱団(Kantos Chamber Choir)5-12
■レーベル:ポリフォニック(Polyphonic)
■発売年:2020年
■収録曲:
1. 非道な運命:ナイジェル・クラーク [24.16]
Outrageous Fortune:Nigel Clarke
2. ドラゴンの年(2017年版) [13.50]
The Year of the Dragon (2017 Version):Philip Sparke
3. アンフィビオシティ:マーティン・エレビー [9.03]
Amphibiosity:Martin Ellerby
4 . ライト・ミュージック:ロブ・ウィッフィン [12.17]
Light Music:Rob Wiffin
5-12. 英国のキャロルによる小交響曲:マーティン・エレビー [16.16]
A Little Symphony of English Carols:Martin Ellerby
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