日本初のホルン無伴奏曲と推測される「千葉・黛共作(コンクール用小品)」。
この無伴奏曲は、1948年に東京音楽学校の学生であった作曲家の黛敏郎(当時 19 歳)とホルン奏者の千葉馨(当時20 歳)によって作曲されたものである。《コンクール用小品》と題されているが、公式な初演はされずに埋もれていた。その存在が認識されたのは、黛が亡くなった 1997 年 4 月のこと。急逝した黛の葬儀で親友の千葉が読んだ弔辞によってであった。
学生時代、試験の度に事件を巻き起こしていた黛敏郎。大胆にジャズ・ドラムとジャズ・ピアノを発揮した作品の発表や、副科ピアノの試験では《ラプソディー・イン・ブルー》を演奏して教授の度肝を抜いた。そのような型破りな才能は「恐るべき子供たち」として東京音楽学校を超えて、音楽界に知れ渡っていくのであった。
《コンクール用の小品》は、黛敏郎の初期傑作のひとつ《ディヴェルティメント》と同じ年1948年の作曲である。 《コンクール用の小品》 の詳細な作曲経緯は不明であるが、以下のように伝わっている。学生ながら多忙を極めた千葉は学内のホルンの試験で演奏する曲の伴奏者が見つからなかった。試験のために伴奏者と練習を重ねている時間さえ見つからなかったと言えるかもしれない。伴奏者がいないのであれば無伴奏曲を作ってしまおう。しかも、その作曲者と演奏者が同じであれば試験官は何も言えまい。作曲者の解釈で演奏しているのだから・・・。そのようなやり取りが千葉と黛の間にあったかどうかは推測でしかないが「千葉・黛共作」という世にも不思議な無伴奏曲が生まれた。
このホルン独奏曲「千葉・黛共作」は1997 年に千葉が読んだ弔辞のみがその情報源であった。しかし、本当に存在したかどうかさえも確認できていなかったのである。実際に千葉がこの曲を試験で演奏したかどうかも判明していない。そして千葉も 2008 年に亡くなり、この伝説の作品について、本当に伝説のままになるかと思われていたものが再び光を浴びたのは 2017 年。千葉の遺品からひょっこり発見されたのである。千葉の蔵書印が押され、丁寧に保管されていた楽譜は自筆譜であった。よく見ると、ほとんどが黛と思われる筆跡で丁寧に記されているが、最後の 1 音と中間部の(フラット)のみが鉛筆で書かれている。一体どのような形で千葉と黛が共作し たのか、それは推測の域を出ないのであるが、最後の 1 音をまるでダルマに目を書き入れるような場面があったのかもし れない。そうして、日本で最初の無伴奏ホルン曲が生まれたのだ。日本人としてホルンの音色に人一倍こだわった千葉。ホルンが際立って活躍する楽曲を残した黛。2 人のその後の広がりある音楽人生を思いながら、ユーモアと哀愁が 入り混じった魅力的な無伴奏曲の発見と出版を祝したい(西耕一)。
初演コンサート
ASIAN HORN FESTIVAL 2018
主催: 日本ホルン協会 Japan Horn Society
会場: 昭和音楽大学 Showa University of Music
日程:2018年11月10日(土)
17:00-17:30 千葉馨メモリアルにて
演奏 今井 仁志/IMAI, Hitoshi
楽譜商品名「黛敏郎・千葉馨 共作 / コンクール用小品」商品番号 SKU: KHNS-002
値段:¥1,800
出版 風の音(アカデミア・ミュージック)
協力:スリーシェルズ
発売日2018年11月10日
商品説明
ホルン界を牽引し、日本のホルン奏者のレベルを高め続けた故 千葉馨が東京音楽学校時代に作曲家の黛敏郎と共に作曲したといわれている作品です。この作品は戦後間もない1948年に作曲され、2017年に再発見されるまで誰にも知られることなく眠り続けていました。そして、2018年11月に第一回が開催されたAsian Horn Festivalで蘇演され、一躍脚光を浴びた作品です。1948年に作曲されたということは、邦人作曲家による日本で最初のホルンソロ曲となり、日本ホルン史のなかで重要なポジションとなる楽曲です。
※NHK交響楽団 首席ホルン奏者 今井仁志の校訂バージョンとなります。
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