CDレビュー:奏者と作品の究極的な対話の形。雲井雅人(サクソフォーン)「Tone Studies」

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CAFUAレコード様から2017/12/20発売のCD雲井雅人(サクソフォーン)「Tone Studies」が届きましたので、簡単にレビューしてみようと思います。

今回のCDはレビューをするのがとても難しかったですね。

というのもただただ「凄い・・・」としか言葉が出てこず、この感動をどう表現すれば良いのか、数日考えていました。

まずこのCDの特徴は、マスランカ作品を積極的に取り上げ、氏の作品と向き合い続けてきた日本のトッププレイヤーである雲井氏による、全曲マスランカ作品のCDである、ということが挙げられます。

雲井氏はこれまでのCDやリサイタルを聴いた人なら分かると思いますがストイックに作品の本質を探究していくような姿勢が特徴的ですよね。

マスランカ氏は、こちらも作品を通して神への信仰などを探求する作曲家でした。同じ時代に二人の探求者が出会うのは必然であったと思います。

このCDが発売される前にマスランカ氏は逝去してしまったので、追悼盤のようなイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、レコーディング時にはまだマスランカ氏は存命で、レコーディング音源も聴いています。その10日後に亡くなってしまったとのことです。

このCDから感じ取れるのは様々な相反する要素の混在、例えば閉鎖的であり開放的、激しさと静けさ、厳しい寒さと春の陽気、そのようなものです。

それはまるで会話のように繰り広げられます。

地下の深い深いところにある小部屋で、暖炉の前、ロッキンチェアーにゆられながら、雲井氏とマスランカ氏が、時に考え込むようにゆっくりと、時に思いのたけをぶちまけるように饒舌に、笑顔で語りあっているように感じるのです。

それは密室で行われている二人だけの会話でありながら、我々はそれに耳を傾けることを許されているというような、そんなような錯覚に陥ります。

ドラゴンボールで例えるのもどうかと思いますが「精神と時の部屋」のようなもので、アルバムのトータルタイムは72分ですが、1枚まるまる聴いた後、まるで何日もその地下の小部屋で彼らの会話を聴いていたような気もするのです。

彼らの会話を聴いた我々聴衆は、会話をヒントにそれぞれの探求の旅に出る。そんな、人を動かす力を持ったアルバムだと思います。

演奏者と作品、その究極的な対話の形を明示しているとも言えるのではないでしょうか。

もちろん、その空間を演出する共演者たち、マリンバの新谷祥子さん、ピアノの仲地朋子さん、チェロの宮澤等さん、彼らの果たしている役割もかなり大きく、敬服せざるを得ません。

プロとかアマとか楽器の種類は関係なく、作品と向き合いそれを演奏する機会のあるすべての方にオススメしたい至高の1枚。


レビュー:梅本周平(Wind Band Press)

こちらのCDはWind Band Pressのセレクトショップ「WBP Plus!」でもお取り扱いしています。ご注文はこちらからどうぞ。


商品詳細は以下の通り。

▼メーカーより

マスランカに捧げる比類なき雲井の音楽

クラシカルサクソフォーンの第一人者として世界で活躍する雲井雅人が、敬愛するアメリカの作曲家、デイヴィッド・マスランカの作品3曲をレコーディング。

華美で技巧的な作風を排し、シンプルで深淵な響きから音楽の深さを追求するマスランカの世界を、ストイックな姿勢で作品からメッセージを見事に表現しています。

今作も雲井は作品の解釈を深めるためにマスランカとコンタクトを取りながらレコーディングに臨みましたが残念ながらこのアルバムの完成を待たずマスランカは2017年8月に他界。

日本の、そして世界のマスランカを愛する方達に捧げるメモリアルアルバムとなりました。

マリンバとのデュオによる「ソング・ブック」、サックス・ピアノ・チェロの三重奏アウト・オブ・ディス・ワールド」、ピアノとの「トーン・スタディーズ」の3曲を収録。

品番:CACG-0268
定価:税込3,024円(税抜価格2,800円)
発売日:2017年12月20日

演奏:雲井雅人(サクソフォーン)
新谷祥子(マリンバ)[1]~[7]
仲地朋子(ピアノ)[8]~[14]
宮澤 等(チェロ)[8]

収録内容:

ソング・ブック
アルト・サクソフォーンとマリンバのための(デイヴィッド・マスランカ)
[1]デイヴィーに捧ぐ歌
[2]喪失
[3]賛美歌と四つの変奏
[4]シリアス・ミュージック-アーサーコーンの想い出に
[5]サマー・ソング
[6]アリソンに捧ぐ歌
[7]夕べの歌

[8]アウト・オブ・ディス・ワールド
アルト・サクソフォーン、チェロとピアノのための(デイヴィッド・マスランカ)

トーン・スタディーズ
アルト・サクソフォーンとピアノのための(デイヴィッド・マスランカ)
[9]ヨルダン
[10]我は信ず、唯一の神
[11]ともに夜を見つめて(Part 1)
[12]ともに夜を見つめて(Part 2)
[13]魂よ、いかなれば我をかく悩ます
[14]クジラの物語(おお、血と涙にまみれた御頭よ)

2017年3月14~17日三芳町文化会館(コピスみよし)にて収録

こちらのCDはWind Band Pressのセレクトショップ「WBP Plus!」でもお取り扱いしています。ご注文はこちらからどうぞ。


プロフィール
サクソフォーン / 雲井雅人
Masato Kumoi

国立音楽大学を経てノースウェスタン大学大学院修了。第51回日本音楽コンクールおよび第39回ジュネーヴ国際音楽コンクールで入賞した。1984年東京文化会館小ホールでリサイタル・デビュー。2012年ハンガリー・ソルノク市立交響楽団、2013年「香港国際サクソフォンシンポジウム」、2014年「シンガポール木管フェスティバル」にて協奏曲を演奏。2015年には、アメリカ合衆国メイン州で開催された「フレデリック・ヘムケ・サクソフォーン学校」に講師として参加。2016年インディアナ大学にてオーティス・マーフィー教授のサバティカルリーブにともなう客員教授を務める。2017年アメリカ海軍ネイビーバンドのサクソフォーンシンポジウムに招待されて演奏。同年、準・メルクル指揮、国立音楽大学オーケストラとドビュッシー「ワプソディー」を共演。2005年と2014年「サイトウキネン・フェスティバル in 松本」に参加。
CDに「Dream Net」(バンドジャーナル誌特選盤)、「Simple Songs」(レコード芸術誌特選盤)、「Songs for the Coming Day」、「アルト・サクソフォーンとピアノのためのクラシック名曲集」などがある。大室勇一、フレデリック・ヘムケの各氏に師事。
「雲井雅人サックス四重奏団」主宰。国立音楽大学教授、相愛大学客員教授、尚美学園大学非常勤講師。

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