2016年8月3日に発売された、東京メトロポリタン・トロンボーン・クァルテットのアルバム「ノスタルジア」。
東京メトロポリタン・トロンボーン・クァルテットは東京都交響楽団のトロンボーン奏者たちによるアンサンブルで、今回のメンバーは以下の通り。
小田桐寛之(テナー・トロンボーン)
井口有里(テナー・トロンボーン)
青木 昂(テナー・トロンボーン)
野々下興一(バス・トロンボーン)
多少のメンバーチェンジはあるものの、これまでに多くのCDを出しているので、トロンボーン愛好家であればご存知のアンサンブルである。特に東響首席の小田桐寛之氏はソロでも多くのCDを出しているので、その力量は多くの愛好家が知るところであると思われる。
アルバムは、トロンボーン・アンサンブルの定番であるフラッケンポールの四重奏曲で幕を開ける。のっけから鋭いアンサンブルで斬り込んでくるあたりはさすがといったところ。
だが続くシャルル=アンリのピアノ作品をアレンジした「夢の形で」では、まったく異なるアプローチで人懐っこい、人間味のある表情を見せ、早くもこのアンサンブルの表現力の幅を存分に楽しめる。この作品は10曲の小品で構成される作品で、楽譜が出版されるようであればアマチュアのアンサンブルにもぜひ数曲でもトライしてもらいたい。
そしてバッハ、バルトークもまた異なるアプローチで、まさに変幻自在のアンサンブルを楽しむことが出来る。ずーっと同じようなアンサンブルが続くと、ものによっては飽きてしまう場合があるが、1枚の中でこれだけ表情を変えてくれると、聴く側としてもたっぷりと楽しめる。
フラッケンポール以外はすべてアレンジだが、原曲のもつ素晴らしいエッセンスと、トロンボーン・アンサンブルの面白さ、奥深さを伝えてくれる良盤である。
ラスト3曲は坂本九メモリアルとでもいえる選曲だが、アルバムの最後を飾るにふさわしい、日本人らしい明快なメロディの中に哀愁を帯びた「ノスタルジア」を聴かせてくれる。
ぜひ作品ごとの吹き分けを楽しんでほしい。
(txt. Wind Band Press 梅本周平)
メーカー:株式会社フォンテック
品番:FOCD9714
定価:¥2,700+税
発売日:2016/8/3
収録内容:
フラッケンポール:トロンボーン四重奏曲
シャルル=アンリ(小田桐寛之 編):夢の形で
J.S.バッハ(小田桐寛之 編):パッサカリア(原曲:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582)
バルトーク(小田桐寛之 編):トロンボーン四重奏のための組曲(原曲:ピアノのための組曲 Op.14 Sz.62)
いずみたく(小田桐恵子 編):見上げてごらん夜の星を
中村八大(兼松 衆 編):明日があるさ
中村八大(小田桐恵子 編):上を向いて歩こう
収録:2016年1月19-21日 三芳町文化会館 コピスみよし
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