CDレビュー：クラリネット再発見/ティモシー・カーター（Cl） Clarinet Reinvention : Timoth Carter, Clarinet - 吹奏楽・管楽器・打楽器・クラシック音楽のWebメディア Wind Band Press

2016年8月3日に発売された、ティモシー・カーターの1stアルバム「クラリネット再発見」（Clarinet Reinvention）。

日本にもなじみの深い奏者の1stアルバムだが、まずジャケットの強烈なインパクトに目がいってしまうので、「どうなの？イロモノなの？」と思わせられてしまうが、内容は素晴らしいの一言！

「クラリネット再発見」というタイトルから、秘曲でも発掘してきそうなイメージだが、収録曲を見て頂ければわかる通り、収録されているのはほとんど皆さんご存知であろうクラシックの名曲の数々。

クラリネットのために書かれたわけではないこれらの作品をクラリネットとピアノのための作品に編曲することで、改めてその感動的な魅力、芸術性を「再発見」しようという試みである。

こうして改めてクラリネットで聴くと、美しいメロディーの数々が、ただ美しいだけではなく「ため息が出るほどに美しい」ことに改めて気づくだろう。

もちろんそれを感じさせるためには高い表現力とそれを支える技術、ピアノとのアンサンブルの相性の高さが必要になるが、カーターのクラリネットは次から次へと名旋律をロマンティックに歌い上げ、土居里江のピアノと有機的に絡み合いながら、聴き手の手を優しく掴み、名曲の深く深くの柔らかい場所へといざなっていく。

まるですべての作品がこの編成のために書かれたように、当然のように存在する二人の音楽からは、敷き詰められたバラの上に光が立つような感覚を覚える。

いつまでも聴いていられる素晴らしいアルバムの完成に拍手を送りたい。

ジャケットについては、ブックレットの最初にカーターから説明があるので、購入した人だけの楽しみにしておこう。

（txt.　Wind Band Press　梅本周平）

CDは「WBP Plus!」でも販売中です！

ティモシー（ティム）・カーター（クラリネット）
アメリカ東海岸のメイン州で生まれる。幼少期よりクラシック音楽に興味を抱くようになり、高校・大学とジュリアード音楽院に進む。在学中、ソリスト、室内楽奏者、またオーケストラのクラリネット奏者として、アメリカ・ヨーロッパ・日本など世界各地で演奏する。その中には、京都国際音楽学生フェスティバル、タングルウッド音楽センター、マルボロを含む数々の公演も含まれる。これまでに、クラリネットをイェフダ・ジラード、チャールズ・ナイディック、大島文子の各氏に師事。卒業後、名古屋フィルハーモニー交響楽団に入団。2007年から2009年まで、首席クラリネット奏者を務める。在籍中に、名古屋フィルハーモニー交響楽団、ウィーンフィルハーモニーの演奏者と渋谷オーチャードホールにて3度共演（トヨタマスタープレイヤーズ）。その後、新日本フィルハーモニー交響楽団、紀尾井シンフォニエッタ東京等、様々な日本のオーケストラとゲスト首席クラリネットとして演奏。また、ソロクラリネット奏者として、日本やヨーロッパで開催された国際音楽コンクールで数々の上位入賞を飾る。
現在はくらしき作陽大学でクラリネットの指導を行う。最近では日本のみならずアメリカでも中国でもソリストや室内楽奏者としてコンサートで演奏。またソロ奏者として、一般的なクラリネットのレパートリーのみならず、「マルチメディア」かつ「クラシックのクロスオーバー」な演奏会の開発にも注目している。さらに、クラシックの象徴的かつ感動的な作品の、クラリネットのための新しい編曲を自ら行っている。

メーカー：株式会社フォンテック
品番：FOCD9720
定価：￥2,700＋税
発売日：2016/8/3

収録内容：

ショパン：幻想即興曲Op.66（編曲：ティモシー・カーター）

ラヴェル：亡き王女のためのパヴァ―ヌ（編曲：ティモシー・カーター）

ブラームス：ハンガリー舞曲第1番（編曲：ヨゼフ・ヨアヒム）

ショパン：スケルツォ第2番 Op.31（編曲：ティモシー・カーター）

ガーシュウィン：ラプソディー・イン・ブルー（編曲：ティモフェイ・ドクシツア）

モーツァルト：歌劇『ツァイーデ』よりアリア「安らかにお休み、いとしい命よ」（編曲：ティモシー・カーター）

モーツァルト：モテット『エクスルターテ・ユビラーテ』より「アレルヤ」

モンティ：チャルダッシュ（編曲：ティモシー・カーター＆土居里江）

フォーレ：ロマンス Op.28

バルトーク：ルーマニア民俗舞曲（編曲：小倉清澄）