「作曲家の意図をアルバムでもライブでも明確に再現したい」インタビュー:打楽器奏者 加藤訓子さん

日本を代表するパーカッショニストとして世界中で活躍されている加藤訓子さん。先日はライヒの「ドラミング」をすべて一人で演奏するという演奏会が好評に終わりましたね。またこの「ドラミング」のCDはイギリスのリンレコーズから発売されており、第73回文化庁芸術祭優秀賞を受賞しました。

また現代音楽での演奏にスポットが当たることが多かった加藤氏がマリンバでバッハを奏でる「カテドラルツアー」(これもCD「BACH」と連動したツアーでした)など、時代の先端をひた走る加藤さんに、パーカッションとの出会いから最近の活動までお伺いしました。

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Photo (c) michiyuki ohba

-まずはパーカッションとの出会いをお聞かせ下さい。

加藤:幼少からピアノをやっており、小さい頃は、ヤマハの教室などにも通っていまして、コンクールでも賞を貰ったりしていたのですが、何より手が小さく、ある時期から子供心にも弾きたい曲が弾けないというジレンマを抱えていて、そういう時にマリンバと出会いました。ピアノ同様にキーボードで、木の柔らかい音色が気に入って、直ぐに翌日くらいには、親に無理言ってマリンバを買いに行ってました。マリンバを習っていた先生が、桐朋学園出身で、そのご縁で師である安倍圭子の下でマリンバを学び、在学時にマリンバ以外のパーカッションも学びました。

-パーカッションという楽器(様々ありますが)の好きなところをお聞かせ下さい。

加藤:最も好きなところは、叩けば、応えるという極めてプリミティブな要素ですね!また、リズムの要素が大きいのも打楽器の魅力だと思います。

-練習の際に心がけていること、気をつけていること、重点を置いていることをお聞かせ下さい。

加藤:ある程度、プロフェッショナルとして活動していくと、これからプロの演奏家を目指す人たちや愛好家とは違い、演奏の技術的な部分より身体的な柔軟さやキャビティ(重心)の動きに注意を払います。
マリンバにしてもその他打楽器にしても楽器間の移動も含め動く要素が、多く、一音一音を最高の音色で奏でたければ、次の一音のためにベストなポジションへ最も無駄の無い動きと距離で移動し、その際に重心がぶれていないことが、非常に重要な要素になります。
そういう意味でもストレッチなど柔軟やヨガ、ピラティス等にかなり時間を費やします。

-楽器本体およびパーツや備品へのこだわり、また現在使用している楽器と備品などについてお聞かせ下さい。

加藤:私の場合、楽器に関しては、幸いグローバルでパール楽器とアダムスがサポートしてくれているので、常にリプレースメントのパーツや備品等へ必要な時にアクセスできています。打楽器は、やはり叩くものですので、どうしても壊れる、磨耗する等の消耗は、避けられません。また、マリンバも運搬、分解、組立を繰り返しますので、見た目も含めた楽器のコンディションを長く良く保つには、ケースも重要な要素ですね。その点で常に適切なパーツへアクセスできるのは、大変助かります。今使用しているマリンバは、アダムスの5オクターブモデルで、ドラム、パーカッション類は、バスドラムからトム、コンガ、ボンゴまでほとんど、パール製です。

-これまでのプロとしての活動の中で、「最高だった瞬間」についてお聞かせ下さい。

加藤:特にこれが「最高」という瞬間は、ありませんが、コンサートでお客様から温かい言葉をいただいたり、アルバムに対する素晴らしいリビューをいただいたり、大変な曲が、仕上がった時やレコーディングが終了する時等が「ほっと」する瞬間ではあります。

-同じくこれまでのプロとしての活動の中で、「もっとも落ち込んだ瞬間」と、それをどう乗り越えたか、についてお聞かせ下さい。

加藤:楽観的な性格ですので、特に酷く落ち込むこともありませんが、やはり楽曲が身体に入ってこない時が、最も落ち込む瞬間かなと思います。それを乗り越えるには、ただただひたすら練習して、音楽を身体に入れることでしょうか?

-演奏前、舞台に出る直前や演奏し始める直前のルーティンなどがあれば教えて下さい。

加藤:特にルーティンやゲン担ぎのようなことは、私の場合は、ありませんが、打楽器の場合、マリンバも含めてボルト、ナット類の緩みや楽器とスタンドのポジション等は、必ず開場前に再確認します。時々スタッフや他の奏者がスタンドや楽器に触れて位置が変わっていたりして、本番中に気づくと、冷や汗です!

-上記と少しかぶりますが、本番での楽器演奏にあたって心がけていること、気をつけていること、重点を置いていることを教えて下さい。

加藤:本番では、やはり聴きに来てくださったお客様にどのくらい音楽を届けられるか?それだけですね!

-これからさらに上達したいと考えているアマチュア奏者に「これだけは聴いておいて!」というCDやDVDがあれば教えて下さい。

加藤:バッハでもベートーベンでも名盤といわれているものは、聴くと必ず何か感じるものがあると思います。また、宣伝になってしまいますが、私が、昨年リリースしたライヒの「ドラミング」や15年に発表したクセナキスの「プレイアデス」等も作曲家の意図していることを正確に表現したかったら、そのリファレンスとしては、オススメです。

-最近の活動についての質問です。まず先日はサントリーホールでライヒの「ドラミング」を一人で演奏するという離れ業を行い、ネット上を見てみると好意的に受け入れられているようです。この企画・演奏にあたって、なぜそれをやろうと思ったのか、そして実際に公演をやってみてどう感じたのか、お聞かせ願えますでしょうか。

加藤:「ドラミング」に関しては、欧州時代にベルギーのアンサンブル・イクトゥスと数多く演奏している演目で、ダンスカンパニー・ローザスの同作品初演や世界ツアーにも参加して演奏してきましたが、何回演奏しても100%満足行かないパートが多々あり、前から一度は、全部を検証してみたかった名曲でした。一般的にメディアは、「1人で12人分の演奏」とか「840時間」とか、そういうところをフィーチャーしがちですが、私が訴求したいのは、やはりこの作品の本当の素晴らしさであり、作曲家の意図をアルバムでもライブでも明確に再現したいというのが根底にあります。一人で全てをオーバーダブしたのは、あくまでそれを実現するための一つの手法に過ぎません。
ライブでは、会場のサイズ、マテリアル、アコースティックによりプリレコードとライブソロのバランスを取るのが、非常に難しい要素です。しかしながら、数年前から使用しているボーズL1システムのお蔭で、テープとライブソロ双方の理想的なバランスを創れていますし、自身のモニターとしても一台二役で活躍してくれています。

-続いて昨年の「バッハツアー2018」、改めてこのツアーのコンセプトや、ツアーを続ける中で感じたことについてお聞かせ願えますでしょうか。

加藤:バッハに関しては、圧倒的にファンが多いので、現代音楽とは違い、一般的なクラシック音楽ファン層へアクセスできるのが、私にとっても新たな出会いであると言えます。また、楽曲は、2017年にリリースした「BACH」 からヴァイオリンソナタ1、2、3とチェロ組曲の1、3、5ですので、殆どどの国や地域へ行っても皆さんに楽しんでもらえることが、最大の魅力ではないでしょうか?
ただ、バッハの時代にはマリンバは、存在していませんし、「マリンバでバッハ」というとどうしても観光地の街角やビルの谷間で聞こえてくるバッハのメロディ等、ノベルティー的な見方をされる方も多々いますし、同時にバッハ純粋主義的にマリンバでもバッハなど在りえないと云う方もいます。それは、聴く側の選択と自由ですので、そこに対して何も言うことはありませんが、そのようなレベルのパフォーマンスや解釈ではないことをコンサート中、お客様と共有している時間と空間の中で、表現していかなくてはならないといつも感じています。

-最近気になっていることやハマっていることについて教えて下さい。

加藤:最近、以前公演していたスチールドラムワークスというインダストリアルのドラム缶の音色に改めて魅力を感じており、再演しようかと考えています。ドラム缶、特にコーティングする前のものは、共鳴体として本当に素晴らしく、そこからの何とも言えない美しい音色とインダストリアルな外観のコントラストが改めて気になっています。

-最後に、アマチュア奏者の方や愛好家の方に向けて「今一番伝えたいメッセージ」をお願いします。

加藤:特に奏者の方には、何よりもライブに来ていろいろな音楽を聴いて欲しいですね!自分たちで練習すのは、勿論ですが、それよりも生で他の奏者の演奏や音色、空間の響きを感じて欲しいと思います。
これは、音大で勉強している学生にも共通することで、自分が素晴らしい演奏をしたいと思ったら、プロの演奏をライブで五感にインプットして、そこからイメージしていくことが最も大事です。


インタビュー:梅本周平(Wind Band Press)


 

メールインタビューだったので設問に答えていただく形でしたが、ファンの皆様、いかがでしたでしょうか。また機会を見つけて実際にお会いしての取材もしたいなと思いました。トップランナーの思考や行動、またそれに至る背景などはもっと掘り下げたいですね。

インタビューの中でも出てきましたが加藤訓子さんのCDのリンク貼っておきますね。気になる方はぜひGETして下さい。(リンレコーズの日本の代理店さんと契約出来ていないのでWBP Plus!で扱えないのが辛い)

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