「情熱を貫くのは難しいときもあるけれど、それが幸せへの一番の近道だと信じています」作曲家インタビュー:ジェニファー・ヒグドン氏(Jennifer Higdon)






 

[English is below Japanese]

アメリカの作曲家ジェニファー・ヒグドン氏に、設問に答えて頂く形でインタビュー取材を行いました。

楽譜の取り扱いをしている小売店が少ないこともあって日本ではあまり作品の演奏機会のない作曲家かもしれませんが、世界で最も注目されているであろう作曲家の一人です。ごゆっくりお読みください。

 

1. まず簡単にあなたの生い立ち、どこでどのように育ったのか、作曲家としての活動を始めたきっかけは何だったのか、などについて教えて頂けますでしょうか?

子供時代はジョージア州アトランタとテネシー州シーモアで過ごしました。 高校ではマーチングバンドをやっていて、本当に大好きでした。 そこで吹奏楽に対する愛情が芽生えたのだと思います。 大学ではフルート演奏を専攻しました。 フルートの先生だったジュディス・ベントレーは、私の中にある何かを見抜き、マスタークラスのためにとても小さな曲を書かせました。 私は音を組み合わせることに魅力を感じ、学士号を取得した後は、他のすべての学校教育で作曲に専念することを決め、それが仕事になりました。

 

2. あなたは多くの吹奏楽作品を発表しています。吹奏楽にどのような魅力を感じているかについて教えて頂けますか?

オーケストラにはない音の組み合わせが好きです。 吹奏楽はパワフルな音を出すことができます!

 

3. 吹奏楽曲を作曲する際、特に注意していることや心がけていること、あるいはあなた独自のルールはありますか?

私は自身を特定のルールに縛ることはありません。 私が従う唯一のガイドラインは、委嘱そのものから来るものです。 例えば、委嘱契約書には必ず作品の長さや特別なもの(学校の創立記念日など)かどうかが書かれています。 もうひとつの目安は、その作品が協奏曲のソリストを求めているかどうかです。 その場合、私はソリストと一緒に仕事をし、その人が楽器やレパートリーの他の作品について何が好きなのかなどを調べるのが好きです。

 

4. 作曲家として人生のターニングポイントとなった自身の作品があれば、その作品についてのエピソードを教えて下さい。(これは吹奏楽作品でなくても構いません)

私の最も有名な作品は「ブルー・カテドラル」で、世界中で750回以上演奏され、現存する作曲家の作品としては世界で最も演奏された作品となっています。 わずか33歳で亡くなった弟のアンドリュー・ブルーを偲んで書かれたもので、非常に感情的なレベルで人々に語りかけていると思います。 アメリカ大統領直属の海兵隊音楽隊の音楽監督であるライアン・ナウリンから、吹奏楽のための編曲を質問されたのは光栄でした。 彼は素晴らしい仕事をしてくれて、今、ブルー・カテドラルは吹奏楽界の新しい聴衆に届いています。

(Wind Band Press注:この楽譜はヒグドン氏の出版社であるLawdon Pressから出版されています。)

 

5-a. ご自身の作曲または編曲に強く影響を受けた他の作曲家や編曲家の作品があれば、それについてどのような影響を受けたのか教えて下さい。(クラシックでなくても構いません)

私はクラシック音楽に親しんで育っていないので、初期に影響を受けたのはビートルズ、フォーク・ミュージック、ロック・ミュージック、ブルーグラス・ミュージックでした。 大学に入ってクラシック音楽を学び始めると、ストラヴィンスキー、コープランド、ドビュッシーに夢中になりました。

 

5-b. 上記とは別に、現代の作曲家で特に注目している作曲家がいれば理由と合わせて教えてください。

私は同僚の作品を聴くのが大好きです。 彼らがやっていることを聞くのはいつも素晴らしいことです。 アンディ・アキホが大好きで、彼はパーカッションのためにとても良い作品を書きます。 また、周天(元教え子)やキャロライン・ショー、その他にもたくさんの人たちをフォローしています。

 

6. 将来の目標(またはこれから新たに取り組みたいこと)について教えてください。

今は幸運なことに、自分が書きたいと思う作品の委嘱だけを受けることができているし、ジャンルを次々と切り替えるのが好きです。 現在は、シカゴ・ユース・シンフォニーという素晴らしい若い音楽家のグループのために作品を書いています。 その後、ヴァイオリンとピアノのための作品を書きます。 それから弦楽四重奏の予定もあります。 大手のオペラ・カンパニーから、別のオペラを書いてほしいという依頼が来ているのですが、まずは適切なストーリーを見つけなければなりません!

 

7. あなたの作品は、世界中の多くの国で演奏され、評価されていることと思います。日本の若い作曲家や作曲家を目指す日本の学生たちにアドバイスをお願いします。

好きなことを仕事にすることが大切だと思います。作曲で成功するには長い時間がかかるので、自分がやっていることを本当に楽しまなければなりません。 情熱を貫くのは難しいときもあるけれど、それが幸せへの一番の近道だと信じています。

 


インタビューは以上です。ヒグドンさん、ありがとうございました!

ぜひ多くの方にCDやYou Tube、演奏会を通じてヒグドンさんの作品に触れていただきたいと思います。

 

取材・文:梅本周平(Wind Band Press)

 

 


Interview with Jennifer Higdon1. First of all, would you tell me about your background, where and how you grew up, what made you started as a composer?

My childhood was spent in Atlanta, Georgia, and Seymour, Tennessee. I was in marching band in high school and really loved it. I believe that’s where I developed my love for wind band. When I went to college, I started my studies as a flute performance major. My flute teacher, Judith Bentley, saw something in me and had me write a very small piece for a master class. I found combining sounds to be fascinating and, once I graduated with my Bachelors Degree, decided to focus on composition in all my other schooling and has my profession.

 

2. You have published many wind band works. Would you tell me about what fascinates you about wind band music?

I love the sound combinations that you don’t have in orchestra. Wind bands can make a powerful sound!

 

3. When composing a wind band piece, is there anything you pay special attention to, keep in mind, or have any rules of your own?

I don’t limit myself to certain rules. The only guidelines I follow are the ones that come from the commission itself. For example, a commission contract will always tell you the length of the work and whether it’s for something special (like the anniversary of a school). The other guideline is whether the work calls for a soloist in a concerto. If that’s the case, I like to work with the soloist and find out what he/she likes about the instrument, other works in the repertoire, etc.

 

4. If you have a piece of your own work that was a turning point in your life as a composer, would you tell me the episode about that work? (This does not have to be a wind band piece)

My most known work is blue cathedral which has now had more than 750 performances around the world and has become the most performed work (in the world) by a living composer. It was written in memory of my younger brother, Andrew Blue, who died when he was only 33 and I think it speaks to people on a very emotional level. I was honored that Ryan Nowlin, the Music Director of the US President’s Own Marine Band, asked to make an arrangement for wind band. He did a beautiful job and now blue cathedral is reaching new audiences in the wind band world.

 

5-a. If there are works by other composers or arrangers that have strongly influenced your composition or arrangement, would you tell me about them and how they have influenced you? (It does not have to be classical music)

I didn’t grow up with classical music so my early influences were the Beatles, folk music, rock music and bluegrass music. Once I went to college and began studying classical music, I fell in love with Stravinsky, Copeland, and Debussy.

 

5-b. Apart from the above, would you tell me about any contemporary composers that you are particularly interested in, along with the reasons why?

I love listening to the works of my colleagues. It’s always great to hear what they’re doing. I love Andy Akiho who writes really well for percussion. I also follow Zhou Tian (who was a former student), Caroline Shaw and so many others.

 

6. Would you tell me about your future goals (or what you would like to work on in the future)?

I am lucky now to only accept the commissions of works that I want to write and I like to switch from one genre to the next. Currently, I’m writing a work for the Chicago Youth Symphony which is an amazing group of young musicians. After that, I’ll write a work for violin and piano. Then I have a string quartet on my schedule. There is a major opera company that wants me to write another opera but I have to find the right story first!

 

7. Your works are performed and appreciated in many countries around the world. What advice would you give to young Japanese composers and Japanese students who want to become composers?

I believe it’s important to do what you love. It can take a long time to become successful in composition so you really have to enjoy what you’re doing. Sometimes it’s hard to follow your passion but I believe it is the most important way to happiness.


Interview and text by Shuhei Umemoto (Wind Band Press)




協賛






Wind Band Pressへの広告ご出稿はこちら


その他Wind Band Pressと同じくONSAが運営する各事業もチェックお願いします!

■楽譜出版:Golden Hearts Publications(Amazon Payも使えます)


■オンラインセレクトショップ:WBP Plus!






■【3社または3名限定】各種ビジネスのお悩み相談もお受けしています!

様々な経験をもとに、オンラインショップの売上を上げる方法や商品企画、各種広報に関するご相談、新規事業立ち上げなどのご相談を承ります。お気軽にお問い合わせください。



▼人気の記事・連載記事

■プロの指揮者・岡田友弘氏から悩める学生指揮者へ送る「スーパー学指揮への道」
プロの指揮者・岡田友弘氏から悩める学生指揮者へ送る「スーパー学指揮への道」

■作曲家・指揮者:正門研一氏が語るスコアの活用と向き合い方
作曲家・指揮者:正門研一氏が語るスコアの活用と向き合い方

■有吉尚子の【耳を良くする管楽器レッスン法】~ソルフェージュ×アレクサンダー・テクニーク~
有吉尚子の【耳を良くする管楽器レッスン法】~ソルフェージュ×アレクサンダー・テクニーク~

■【エッセイ】ユーフォニアム奏者・今村耀の『音楽とお茶の愉しみ』
今村耀エッセイ

■僧侶兼打楽器奏者 福原泰明の音楽説法
福原泰明の音楽説法

■石原勇太郎の【演奏の引き立て役「曲目解説」の上手な書き方】
曲目解説の上手な書き方

■石原勇太郎エッセイ「Aus einem Winkel der Musikwissenschaft」
石原勇太郎エッセイ

■音楽著作権について学ぼう~特に吹奏楽部/団に関係が深いと思われる点についてJASRACさんに聞いてみました
音楽著作権について学ぼう

■【許諾が必要な場合も】演奏会の動画配信やアップロードに必要な著作権の手続きなどについてJASRACに確認してみました
動画配信