【演奏や人生の役に立つコラム】「現成公案」~僧侶兼打楽器奏者 福原泰明の音楽説法 第14回

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2014年に日本人として初めて世界で最も有名なブラスバンド「ブラック・ダイク・バンド」の正式メンバーとなりパーカッション・ソロイストとして活躍。帰国後は僧侶としての修行を積み、現在は僧侶兼打楽器奏者として幅広く活躍している福原泰明さん。

そんな福原さんが、「心」をテーマに、仏教の教えを元に、演奏家(音楽家)の悩みや心のモヤモヤを晴らし、どう生きていくか、をライトに語る連載「僧侶兼打楽器奏者 福原泰明の音楽説法」。

第14回となる今回はのタイトルは「現成公案」。さてどんなお話が聞けるのでしょうか。


緊急事態宣言による外出自粛のため、家に籠もらざるを得ない方々も多いと思います。そして非常に残念ですが、コンサートやイベントもほぼ全てが中止となっており、厳しい日々が続いております。

家にいると楽器がなかなか触れず、練習したくてもできない日が続くかもしれません。なので今回は、楽器が無いからこそできる学習方法をお伝えします。

 

「現成公案(げんじょうこうあん)」。宋時代の中国にて生まれた仏教書、「碧巌録(へきがんろく)」に記された言葉です。「碧巌録」はこのコラム第11回目の「箭(や)新羅(しんら)を過ぐ」でも出てきました。

「現成公案」の意味は、「目の前の物全てが公案である」。「公案」とは僧が修行する際に老師(師匠)から与えられる問いかけ、つまりは禅問答です。
なので、「目の前のことは全て修行のために役立つもの」ということです。

実際に禅宗の修行というのは、歩く時、食べる時、また寝る時に至る日常動作全てにおいて作法が細かく決まっており、それを毎日繰り返すことで自己を研鑽していきます。

まず修行道場に初めて入る時は、玄関にて「頼みましょう」と大声で叫び、その後何時間も同じ場所に座り込み、道場に入れてもらうことを頼み続ける必要があります。日常生活に至っては、歩く時も音を立てずかつ速く歩き、食べる時もお椀の開き方や持ち方、そして寝る時は座禅が終わった後すぐに棚から布団を降ろし、素早く敷き、なるべく早く布団の中に潜り込む。などなど…。しかも、ちょっとでも綺麗にいかないとケイサク(木の棒)で叩かれます笑。

私は、この禅の修行も音楽の練習も、根本的には同じなんじゃないかと思っています。

 

なぜなら、楽器の演奏というのは五感のうち聴覚、視覚、触覚を使いながら行うものなので、それらの感覚に結びつく日常の動作にて練習の要素を見つけることができます。

例えば、打楽器は触覚が非常に重要な要素を持っています。

叩いた時の「楽器に与える圧力」は、聴覚だけでなく触覚に頼ることでどれだけ、またどのように自分の手やマレットに振動が伝わるかによって判断しています。

なので、例えばその圧力を感じ取るために、「お皿を洗うときにスポンジをどれだけお皿に押し付けるか、そしてその時の手の感触がどうなっているか」を私はいつも意識しながら洗っています。

 

これも私個人の考えですが、楽器を使う練習というのは実験の一種だと思っています。

楽器を触っていない間も音楽のことを考え、そこで得たものを実際に楽器に触れる練習で試してみる。

私の場合、少し重心が前に行くことが多いので身体全体の骨と筋肉に関する書物を読み、立っている時に腰の位置がきちんと脚の上に乗っている状態かを立っている時も歩いている時もチェックし、それが楽器を触る時にも再現できるかどうか、そして何よりそれで音が変わるかどうかをその時に確認します。実際正しく立っている時は楽器を最大限鳴らすことができるのがわかりました。

もちろん音楽に関する本や楽譜を読み分析することも勉強になりますが、それ以外にも音楽の演奏のヒントは色々なところに転がっています。

 

私は僧侶という職業上、筆を使って文字を書くことが多いです。
個人的に思うには筆で字を書くことは楽器を演奏するのと感覚がよく似ています。

例えば「右払い」の部分は、手首のスナップだけでサッと書くと短くなってしまいます。きれいな払いを書くためには腕全体をそのまま右に動かすことが必要になります。これは身体がうまく使えていないとできません。

楽器でも必要以上に手首に頼ろうとすると音が固くなったり最悪の場合まともな音が出ません。

身体をうまく使うという点で楽器と字は共通しており、楽器の場合は聴覚、字の場合は視覚で確認する違いだけなのです。

 

話は飛びますが、最近アニメ化もされた「ランウェイで笑って」と言うファッション業界を舞台にした漫画をご存知ですか?主人公のライバルの言葉に「24時間頭も身体も全て服に捧げている人間の前で、あんまり舐めたこと言わないでよ」という台詞にあるように、起きている間、極論を言えば寝ている時も音楽に繋げることができるのです。

 

最後に私のオススメする日常動作で意識する5つのことは、

1. 歩く時の足の裏への重心の掛かり方。(マーチ風に素早く重心が切り替わるか、コラール風にゆっくり重心が移るか、など)
2. 座っている時の骨盤の角度。
3. 物を持ち上げる時に使う部位の順番。(指→手首→腕というように)
4. 手を洗う時の手のこすり方。(サッとこするかしっかりと撫でるか、など)
5. 声がしっかりと出ているかどうか。(正しい姿勢だと声が出やすい)

です。ちなみにピアノを弾く妻には「マニアック過ぎる」と言われ全く理解されませんでした。

もちろんこれ以外にもできることはたくさんあります。そして人によって苦手な部分、足りない部分は違うので、日常動作で意識することは千差万別だと思います。

大事なのは「楽器を触っていない時でも意識はできる」ということなのです。

 

余談ですが、自宅のパソコンでこのコラムを打っている時、1歳の娘が横からちょっかいを出してきます。どうやら私がパソコンのキーボードを打っているので、自分もキーボードを叩きたい様子。
机も畳に直接座る高さのものなので、娘が立てば丁度よい高さ。

横から身体を入れてきて、私とパソコンの間に仁王立ちしてキーボードを指で押して文字入力を邪魔しryす。

なので途中にしょっちゅう変な文字を打たktてその度lwに打ち直vdちょっとやめて¥」S¥・¥¥¥:ccccccs\異0位0k


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今回も面白いお話が聞けましたね!

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※この記事の著作権は福原泰明氏に帰属します。


【福原泰明 プロフィール】

東京都出身。15歳より打楽器を始める。日本大学文理学部心理学科卒業。英国王立北音楽院修士課程修了。
在学中に学内奨学金を授与される。打楽器全般を大里みどり、シモン・レベッロ、エリザベス・ギリバー、ポール・パトリック、ティンパニをイアン・ライト、ラテンパーカッション及びセットドラムをデイヴ・ハッセルの各氏に師事。第11回イタリア国際打楽器コンクール(ヴァイブラフォンの部)ファイナリスト。

2011年7月、渡英と同時に、世界で最も名高いブラスバンド(金管バンド)の一つ、フェアリー・バンドに入団。同年10月より首席打楽器奏者を務める。同年12月にはブラスバンド専門ウェブサイトの4barsrest.comにて「2011年打楽器奏者ベスト5」の一人として取り上げられる。2012年には有名ブラスバンド専門雑誌「British Bandsman」にて表紙を飾り、ロング・インタビューが掲載されるのを始め、複数の音楽雑誌に取り上げらるなど、英国ブラスバンド界ではまだ数少なかった”打楽器ソリスト”として活動。その存在は、普段ブラスバンドの中ではスポットが当たりにくかった”打楽器”を”ソロ楽器”として認識させることとなる。2013年1月、「RNCM Festival of Brass」にて自身が委嘱したロドニー・ニュートン作曲の打楽器協奏曲「ザ・ゴールデン・アップルズ・オブ・ザ・サン」をフェアリー・バンドと共に世界初演し、満員の観客からスタンディング・オベーションを受け、ブラスバンド界の演奏者、指揮者、作曲家、編集者の各方面からも絶賛される。

同年10月よりレイランド・バンドに入団。打楽器ソロ曲のレパートリーを更に広げていく。同年11月、三大ブラスバンド・コンテストの一つ「Brass In Concert Championships」にてマリンバとフリューゲル・ホルンのデュオを演奏し、「本日の最高の演奏の一つ」(4barsrest.com)と評される。

2014年、世界で最も有名なブラスバンドと言われるブラック・ダイク・バンドに史上初の日本人正式メンバーとして入団。マリンバ・ソロイストとしてコンサートでソロを務める。
オランダの打楽器メーカー”マジェスティック・パーカッション”エンドーサー。




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