【エッセイ】ユーフォニアム奏者・今村耀の『音楽とお茶の愉しみ』第2回

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埼玉県入間市を拠点に幅広く活躍されているユーフォニアム奏者の今村耀さん。

紅茶好きでもある今村さんが『音楽とお茶の愉しみ』をテーマに徒然と語るエッセイです。

ごゆるりとお愉しみ下さい。


 

今日はお正月公演に向けてユーフォニアム奏者ふたりでちょっとした音出しをしてみる日。冬の寒さはこたえるもので、冷え切ったユーフォニアムを抱えて演奏していると、からだの芯まで凍えるのではないかと思うときがあります。数分前に暖房をつけたばかりの部屋は空気も冷たいのでまだまだ音程が低く、これだけで楽器が冷えきっていることがわかるのです。目の前で寒そうに楽器を演奏する人を見ながらお茶を一口。あたたかい。

これが、最も冬を意識する瞬間。

気温差により音の伝わるスピードに変化が出るため、楽器や空間の冷えで音程が低くなりやすいとか、あたたかいと音程が高くなりやすいとか、冬の寒さや夏の暑さは演奏に少しだけ影響します。雪山のように気温がマイナスの場所と、サウナのような灼熱の場所にいる人が一緒に演奏をするとしましょう。字のとおりまったく違う環境のため、同じドの音でも違うドの音になってしまうので困ってしまいます。たとえ同じ部屋にいる人でも、使っている楽器も違えば体調も違いますし、それぞれがまったく別の状態なので、お互いの様子に注意しながら演奏することでおおよそ同じ音程で演奏できるというものです。全然違う音程じゃ、別の曲を演奏しているように聴こえてしまいますから・・・

暖房はパワフルモードで部屋もすごしやすい程度にぽかぽか。生姜を混ぜたお茶でからだもあたたまっただろうし、楽器の調子も大丈夫だね!そんなことを口に出しつつ、公演で予定している曲を聴かせてもらいます。

デュハーストのユーフォニアムのための曲「パナシェ」

お茶を飲み、美味しいな。おやつも食べたい。私だったらいまのはこうだなぁ。リップトリルもピストンでやるトリルも、毛色は違うけれど、どちらも悪くないし気持ちいいな。やっぱり、お茶じゃなくて違うものが飲みたいかも。頭の中はお茶と演奏とお茶ではない何かでいっぱい。ちょっと煩悩が混じっている気もするけれど、大人になって仕事をするうえで、素直にお互いの演奏について話せるのは嬉しいことだと思うのです。
煩悩はほうっておいて、今度は私の曲を。日没まであーでもないこうでもないと続くのでした。

「ところで、パナシェっておいしいよね」

いきなり何を言い出すのか。「パナシェ」は曲の名前じゃないのか。いつもおなかが空いているのはわかっているけれど、楽譜でも食べようというのか。日没を過ぎて今日やるべきことをやったのだから「パナシェ」を飲もうと言っているのです。楽器をしまってテーブルに着いたらはじまり。冷蔵庫で冷やしてあるビールとレモンサイダーを出してお好みで割るだけ。長めのグラスに1:1がベターだけれど、私はレモンサイダーを少し多めに注いで楽しみます。爽やかな黄色で曲と同じ華やかさのあるカクテル。大人になってから気づいたけれど、子供の時に知っていればシャンメリーよろしく、アルコールの入っていない子供のビールで真似して作って曲のイメージも広げられたのかな?シュワシュワと浮かんでくる泡がキラキラ。

パナシェはいわゆる標題音楽だと思うので、そのままのイメージで飲み物美味しいね。なんて言っているけれど、明確な題名であるほど力があり、聴く人や演奏する人にとてつもない影響を与えるのも事実。標題音楽ではなく、内容を意味するような題名で、バラード、ノクターン、ラプソディこんな文字が目に入ればどんな曲なのか想像は付くけれど、逆に作品番号の記載しか存在しない作品もあり、この場合は先入観なく譜面を見ることができるのも幸せのひとつ。

パナシェで乾杯して、良いお正月公演にしようと誓ったときの一言。

「そういえば、この前パナシェ飲むって言っていたよね」

あら、ちゃんと覚えていたのか。


優雅な時間を過ごしていただけましたでしょうか。次回もお楽しみに。

「音楽とお茶の愉しみ」、その他の回はこちらから。ユーフォニアム奏者・今村耀の『音楽とお茶の愉しみ』

今村さんのTwitterアカウントはこちらです。
(@euph_yoh)
https://twitter.com/euph_yoh

今村さんには以前にWind Band Pressでインタビューも行っていますのでそちらも合わせてどうぞ。
https://windbandpress.net/12419


※この記事の著作権は今村耀氏に帰属します。


【今村耀 プロフィール】

埼玉県入間市出身。埼玉県立芸術総合高校音楽科卒業。成績優秀者卒業演奏会に出演。日本大学芸術学部を経て尚美ミュージックカレッジ専門学校コンセルヴァトアールディプロマ科を修了。大阪国際音楽コンクール部門最高位他、多数受賞。 2015年「ニコニコ超パーティー2015」出演。2016年日本ユーフォニアム・テューバ協会会報にダブルベルユーフォニアムの演奏が掲載。ヤマハ演奏支援アプリ≪ふこうよアンサンブル~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~≫(響け!ユーフォニアム)開発に演奏提供。2017年2月に同アプリVer.2と書籍第二弾のリリース記念イベントにてオープニングアクトとユーフォニアム独奏によるデモンストレーションを担当。YAMAHA・AI合奏システムと国際イベント「デジタルコンテンツエキスポ2017」で共演。地元・入間市民吹奏楽団の定期演奏会にソリストとして出演。2018年吹奏楽雑誌「Wind-i mini vol.39」巻頭インタビュー掲載。ユーフォニアムなどの金管楽器の個人指導から吹奏楽指導、楽器講習会講師もおこなっており、メディア出演も多く、希少価値の高い古楽器演奏者としても話題を呼んでいる。ASKS Windsより編曲譜出版中。 Ensemble PETS、小江戸ウインドアンサンブル、moiphics、ですカル!各メンバー。




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