「「現代音楽」という言葉の響きの硬さを取り払いたい」 インタビュー:打楽器奏者 會田瑞樹さん

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先日「Cheer Up! みやぎ」さんとの提携記事としてインタビューを掲載した、打楽器奏者の會田瑞樹さん。(→インタビューはこちら

Wind Band Pressではこれまでにも會田さんのいくつかの初演映像やニュースなどを取り上げていますが、今回は特にコンテンポラリー音楽を聴く、ということに焦点を当てて、若くして第一線で活躍する會田さんにお話を聴いてみました。

なぜあそこまで熱く鋭く胸を打つ演奏が可能なのか?その秘密の一端に触れられるかもしれません。

特にいわゆる「現代音楽」と呼ばれるものに抵抗のある方は、ぜひご一読ください。目からウロコです。


―すでにWind Band Press では會田さんのYou Tube の映像などを紹介していますが、改めてプロの奏者を目指そうと思われたきっかけについてお伺いできますでしょうか。

いつもご紹介頂き本当にありがとうございます。編集長梅本さんの情報収集力の高さには驚かされます。僕も知らなかったことを朝WindBandPressで知ったりする事もありましたから(笑)

打楽器演奏家として身を立てていこうと決意したのは、中学二年生のときです。後の師匠となる吉原すみれ先生、そしてツトム・ヤマシタ氏の打楽器独奏を聞いた事がきっかけでした。お二人の打楽器の「音」そして「多彩な表現」に魅せられたのです。

実は、小学校の文集には「ロックスターか小説家になりたい」と書いたことをよく覚えています笑 ロックの歌手には今も憧れています。REBECCAのNokkoを皮切りに、JUDYANDMARY は父も好きだったのでライヴに三度も連れて行ってもらえました。小学生でしたが、今や伝説になりつつあるバンドのサウンドが身体の中に今も流れています。でも、吉原すみれ先生、ツトム・ヤマシタ氏は突き抜けるような表現を「たった一人」でやり遂げていた。僕もこうなりたいと強く思うようになりました。

―會田さんと言えばコンテンポラリー音楽を中心に演奏活動をされていますが、初めてコンテンポラリー音楽に惹かれたきっかけとなった作品はございますでしょうか。

先ほどの続きになりますが、中学二年生のときにCD で聞いた吉原すみれ先生演奏による、石井眞木作曲《サーティーン・ドラムス》そして、ツトム・ヤマシタ氏演奏によるハンス・ヴェルナー・ヘンツェ作曲《刑務所の歌》です。

―特に現在の日本の吹奏楽においてはコンテンポラリー作品はあまり受けが良くないというか、現代の音楽という意味ではこれもコンテンポラリーと言えますが、いわゆる「現代音楽的」な作品はあまり聴かれていないのかなという印象があります。會田さんが考えるコンテンポラリー音楽の魅力はどういったところにあるでしょうか。

僕は吹奏楽少年でした。中学の吹奏楽部が所蔵していたコンクール課題曲の楽譜を引っ張りだしてはスコアを眺めたり、音源が聞きたくて少し離れた図書館に行ったりしましたね。まだYouTube もない頃でしたから「音源を聞く」ということもお小遣いを貯めたりしてなんとか手に入れて、わくわくしながら聞いていました。「課題曲も現代の音楽」であることに間違いはありません。だって、同時代の音楽ですから。「現代音楽」という言葉の響きの硬さを取り払いたいなと常々思います。「今日(こんにち)の音楽」というのは武満徹さんがプロデュースした公演シリーズの名前でもありますが、僕はとても良い響きのする言葉だと思います。

つまり、僕自身が「現代音楽」と意識している部分があまりないと言った方が良いのかもしれないのです。

かつて高校生の頃、仙台フィルの定期演奏会の定期会員で毎月通っていたのですが、ある時二人のロマン派の作曲家の作品2曲の演奏会がありました。今では大好きな二人の作曲家ですが、僕は頭から終わりまで爆睡してしまいました。何が何やら、さっぱり分からなかった。どうしてなんだろうと考えたけれどそのときはまったく分かりませんでした。でもブルックナーはその当時から凄く好きだったのです。この違いは何なのだろうかと。

その謎が解けたのは、大学に入ってからでした。音楽評論家の諸石幸生先生、楢崎洋子先生のゼミを受講し、西洋音楽史は園田みどり先生に習いました。例えばベートーヴェンのピアノ協奏曲をすべて聞く授業だったり、様々な演奏を比較し意見を述べるプレゼンテーションなども行いました。時代毎に系統立てることも習いました。すると、西洋音楽というのは時代ごとに、相互に作用し合っていることに気がついたんです。教会音楽というものの成り立ちがその後のバロック期の音楽に繋がっていったり、ハイドンが宮廷音楽師として膨大な数の、いわば劇伴音楽に近い作曲を行った経験がモーツァルトに、ベートーヴェンに活かされていった。そんな師匠を越えたいと願ったであろうベートーヴェンは自らは独立した”芸術家”であることを宣言して、実験的な語法や自分の書きたい音楽を書いた。その姿勢がロマン派に繋がっていった・・・等々、音楽は突然降って沸いてきたわけではなく、歴史の息づかいに密接だと思います。

少し話がそれてしまいましたが、すなわち「現代音楽を聞かない」ということの問題は、音楽の歴史を感じながら系統立てて聞くことなく、突然目の前に突きつけられるような状況が今も続いているということだと思います。歴史と密接に音楽は関わっている事をもっと奏者が上手に説明していかなければ、確かにかつての僕のロマン派の演奏会の時のようなことになってしまいますよね(笑) これをどうしたらいいのか、ずっと悩んでいます。僕自身の人生をかける命題と思っています。

―これから「現代音楽的」なコンテンポラリー音楽にも触れていきたい、興味があるけど入口がわからない、というリスナーや奏者もいらっしゃると思います。ビギナーのとっかかりとして、どのような部分を聴いたり読んだりすれば良いと思われますか。

そして先ほどの続きのもう一つの謎であるなぜ高校時代からブルックナーが好きだったかという話に繋がるのですが、実はその当時僕が好きだったのは、ブルックナーの交響曲の特定の箇所。例えば交響曲第8番の第二楽章(三拍子の舞曲を思わせるリズムを持ち、ティンパニがとてもかっこいいです。)だけ。とか、交響曲第7番の第二楽章(ワーグナーの追悼音楽として書かれ、美しい和声が魅力です。)だけ、だったのです。もちろん今は全体を通して好きですが。

つまり、別にすべてを好きである必要はないのです。長大な作品や難解そうな作品の「この部分はお気に入り。」という箇所を作っていくと、そこから思わぬ糸口がひらけると思うのです。あとは、何でもまずは「聞いてみる」事ではないでしょうか。身近な演奏会はもとより、公共図書館にある現代作品のCDって結構充実した品揃えです。僕も重宝しました。結構、食わず嫌いの方は多いなと思います。まずは聴いて頂いて、「この曲は好きだけど、この曲は嫌い。」とか、「この部分だけは好き。」あるいは「まったくなじめない。」とか。それもまずは聞いてみない事には始まらないので。そしてそういうご感想を僕の演奏会であれば、終演後などに會田まで是非伝えてほしいと思います(笑) 僕もそういうご意見から大事な発見をいつも頂いているので。

―デビューアルバムの「with…」も各方面から絶賛され、先日発売された「ヴィブラフォンのあるところ」も好評です。各アルバムの聴き所やこだわられたポイントなどをあらためてお伺いできますでしょうか。

恐れ入ります。聴いて頂く方から様々なご感想を頂き、僕自身も大きな勉強になっております。それぞれのアルバムには、それぞれコンセプトはありますが聴いて頂く方にすべて委ねたいので、一言だけ言うとすれば「日本の現代音楽の歴史を考える」というのが大きな源流になっているかと思います。

―最後になりますが、学生を含む全国のアマチュア打楽器奏者にメッセージをお願いします。

ここまで読んで頂きありがとうございます。身近なところに様々な出会いが落ちていると思います。「知る」ということは昨日までの自分とはまた違った自分との出会いの第一歩です。明日学校帰りなど、図書館やCD ショップ、身近に開催されている演奏会に是非足を運んでみてください。いつか会場でお会い出来ます事を楽しみにしております!!


インタビュー・文:梅本周平(Wind Band Press)


まとめ:

いかがでしたでしょうか。

少し現代の音楽(それがどんなスタイルであろうとも)の聴き方や演奏に際しての考え方が変わりましたでしょうか?

インタビューを読んだだけではすぐに変わるものでもないかもしれませんが、これをきっかけに様々な音楽を聴いて、そしてその音楽と結びついた歴史についても考えてみると、きっともっとクラシック音楽を楽しめるのではないかなと思います。もちろん現在取り組んでいらっしゃる作品があれば、それについても同じように考えてみてはいかがでしょうか。より作品への理解が深まり、さらに楽しく演奏できることと思います。

Wind Band Pressの動画カテゴリにたくさんの動画があるので、近くに図書館がない、CDを買うお金がない方は、まずはここから聴きあさってみても良いかもしれませんね。そして、やはりライブは格別です。演奏会に行きましょう!


會田瑞樹氏プロフィール

1988年宮城県仙台市生まれ。
武蔵野音楽大学ヴィルトゥオーソ学科打楽器専攻卒業、同大学院修士課程修了。佐々木祥、星律子、吉原すみれ、神谷百子、有賀誠門、藤本隆文の各氏に師事。日本現代音楽協会主催第九回現代音楽演奏コンクール「競楽IX」第2位入賞。

デビューアルバム『with…』は朝日新聞夕刊推薦盤、音楽の友12月号推薦盤に選出。2016年12月にはNHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部」において會田の演奏を一時間に渡って特集した「打楽器百花繚乱 Percussion Extraordinaire -Mizuki Aita-」が全国に渡って放送された。2017年6月、ALMコジマ録音よりセカンドアルバム「ヴィブラフォンのあるところ」をリリース。アルバムはレコード芸術特選盤、朝日新聞をはじめ各所より大きな反響を得ている。


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