受け継がれるジャズへの愛! ダブル・インタビュー:「みなとみらいSuper Big Band」担当 白川美帆さん、「熱帯JAZZ楽団」青木タイセイさん





横浜みなとみらいホールで中高生を中心に結成されたビッグバンド「みなとみらいSuper Big Band」。2017年11月には結成から5年目を迎え、2017年12月3日には、結成当初からサポートを受けている熱帯JAZZ楽団と共演します。

今回は、その「みなとみらいSuper Big Band」を担当する横浜みなとみらいホールの白川美帆さん、そして結成当初から指導をされている熱帯JAZZ楽団の青木タイセイさんに、これまでのこと、そして12月の公演について、お話を伺いました。

ダブルインタビュー、どうぞお楽しみください。


「同世代で活動できる貴重な経験を大切にしていきたい」横浜みなとみらいホール みなとみらいSuper Big Band 担当 白川美帆さん―みなとみらいSuper Big Bandは今年の11月で結成5年目を迎えますね。まず結成のきっかけからお伺いできますでしょうか。

2012年に横浜みなとみらいホールで「熱帯JAZZ楽団」公演を開催した際、横浜市立笹下中学校のジャズ部“笹下ジャズ・アンサンブル・オーケストラ”との共演機会をつくり、熱帯メンバーによるワークショップを行ったことがきっかけです。

笹下中学校は横浜市内の中学校では唯一部活動にジャズ部があり、とても熱心に活動されている学校なのですが、この共演を終えたあとジャズ部のメンバーや顧問の先生から、「ここまでジャズを頑張ってきたのに、卒業後、高校でジャズ・アンサンブルができる場がない。ジャズを続けていく場を作って欲しい」という声があがりました。

大学に行けば盛んに活動しているジャズサークルが多くありますが、中高生の期間に同年代とジャズに取り組める場は、実はほとんどありません。

子どもたちの熱い想いと、日本におけるジャズ発祥の地とも言われている横浜でジュニア・ビッグバンドの活動をする意義を考え熱帯JAZZ楽団の協力を得て、「みなとみらいSuper Big Band」が誕生しました。

―現在中高生約40名で活動中とのことですが、バンドに参加でするための条件などがあれば教えて下さい。

参加条件は、「中高生であること」「楽器経験者であること」「楽器を所有していること(管楽器・ベース)」「毎週の練習に参加できること」です。

様々な学校から来ているメンバーが集まる貴重な週1回の練習なので、「毎週の練習に参加できること」が一番大切だとメンバーには伝えています。

ジャズ自体が未経験でもジャズを演奏してみたい、ジャズを通して音楽を楽しみたいという気持ちがあれば、大歓迎です。

―練習のペースはどれくらいでしょうか。また、例えば学校にもよると思いますが、部活動などとの掛け持ちは可能でしょうか。

練習のペースは週1回で月4回です。

きちんと両立が出来るのであれば、部活動との掛け持ちは可能です。

実際に、掛け持ちしている生徒は半数ほどいます。

ビッグバンドの練習開始は18時からですので、うまく両立が出来ているようです。

―結成からこれまでを振り返って、1年目、2年目・・・そして今年と、年々バンドにどのような変化があったと思われますか。

中高生という期間ですので、毎年卒業を迎えるメンバーが出てきます。そのため4月に必ずメンバーが入れ替わり、1年1年新しいメンバー構成でバンドを作り上げています。

結成当初はソロをとれるメンバーがバンド全体を盛り上げ引っ張っていくような形でしたが、年々ジャズが初めてというメンバーが増えてきて、ソロだけに頼るのではなくビッグバンドとしてのアンサンブルで聴かせられるようになってきたと思います。

アンサンブルの響きがしっかりしてきて、その上にソロがあり、とても良い形になってきたと思います。

メンバーの積極性が出てきているのも嬉しいです。

―近年は2016年に札幌、今年は石川と、地方のジャズフェスにも参加していますね。現地のお客様の反応はいかがでしたでしょうか。

札幌も石川もとてもお客様が温かい印象を受けました。「すごく良かったよ」と声をかけてくださる方もいて、メンバーもお客様の温かさを感じたのではないでしょうか

札幌も石川も同世代のジュニア・ビッグ・バンドが多く参加しており、お互いの演奏を聴くことで、とても刺激になったようです。


2017年9 月「金沢 JAZZ STREET 2017」への参加の様子

―バンドの出身者の方の中には、より専門的にジャズを学ぶために音楽大学に進学される方もいらっしゃるそうですね。バンドメンバーの「卒業後」の活動について、何か傾向などがあればお伺いできますでしょうか。

「みなとみらいSuper Big Band」をきっかけに音楽大学への進学を決めたメンバーもいますし、音楽大学でなくても大学のサークルに所属してビッグバンドを続けているメンバーも多いです。

卒業生が現在のビッグバンドの演奏を聴きに来てくれたり、練習に遊びに来てくれる際に「大学でビッグバンドを続けてます」という話を聴くととても嬉しいです。

―結成当初から、熱帯JAZZ楽団のカルロス菅野氏や青木タイセイ氏、また近年ではLowland Jazzの具理然(ぐ いよん)氏からも指導を受けているとお聞きしましたが、バンドのメンバーは彼らからどのようなことを吸収していると思われますか。

講師のお二人は、子どもたちの協調性や自主性を伸ばすような指導をしてくださっています。

自分たちで考えることを学び、講師の的確な助言で劇的に成長していく様子が見られます。

悩み考えながら音楽と向き合い練習していくことで、メンバー間で協力するようになり、人間的にも成長していると思います。

そして演奏会を終え達成感を得ることで、音楽の楽しさやジャズの楽しさをメンバー自身が感じ、次へのステップにつながっていると思います。

―2017年の12月3日には、その熱帯JAZZ楽団との共演が待っていますね。このコンサートの魅力、または見どころ聴き所についてお伺いできますでしょうか。

カルロス菅野さんが率いるラテン・ジャズ・ビッグバンド「熱帯JAZZ楽団」は、自らの演奏だけでなく、ジャズを演奏する楽しさを次世代に伝え続けています。

1st ステージでは、そんな熱帯メンバーと「みなとみらいSuper Big Band」とのスペシャルコラボで3曲演奏します。

メンバーの表情や音楽が変化していく様、はじけるような若さ溢れるサウンドは、音楽の未来を感じる瞬間になるのではないでしょうか。

2ndステージは「熱帯JAZZ楽団」のコンサート。ジャズのスタンダードナンバーやラテンの名曲をリズミカルでパワフルな演奏で楽しめます。

今回は、「アフリカンシンフォニー」や「ルパン三世のテーマ」等ブラスバンド部でも馴染みのある曲にも注目です。

熱帯アレンジで聴く名曲は、きっと新鮮な発見があるはず。

熱帯JAZZ楽団の演奏は、会場との一体感を生み出す圧巻のステージです!

―最後になりますがみなとみらいSuper Big Bandの将来の展望についてお伺いできますでしょうか。

「みなとみらいSuper Big Band」でジャズを通して音楽を好きになり、自ら学んで楽しめるようになって欲しいと思っています。

“ジャズが好き”という共通の仲間と過ごすことで、卒業しても音楽を好きでいるきっかけとなり、一生の音楽仲間を見つける場となれたら嬉しいです。

彼らが同世代で活動できる貴重な経験を大切にしていきたいと思います。


「音楽がずっと傍にある毎日を」 熱帯JAZZ楽団 青木タイセイさん―青木さんはみなとみらいSuper Big Bandの結成当初から指導にあたられているとお伺いしましたが、指導にあたられることになったきっかけと、最初の彼らの印象についてお伺いできますでしょうか。

結成当初は、横浜市立笹下中学校のジャズ部卒業生がメンバーの多くを占めていたので、大変な難曲をサラリと演奏してしまうという意味で結構な驚きがありました。

―メンバーの中高生を指導する際に、特に重視している点がございましたらお伺いできますでしょうか。

音楽の楽しさを感じてもらうことを最優先しています。

―結成からこれまでを振り返って、バンドにどのような変化を感じておられますでしょうか。

結成当時から比べると、ジャズに関してほとんど初心者のメンバーが多くなってきましたが、それでも、メンバーなりに、アドリブソロに果敢に挑戦する、新しい楽器にトライしてみる、など、ジャズ、ビッグバンドの演奏等に対してとっても前向きになってきていると思います。

―2017年の12月3日には、みなとみらいSuper Big Bandとの共演が待っていますね。このコンサートの魅力、または見どころ聴き所についてお伺いできますでしょうか。

第一線で活躍するベテラン揃いの熱帯JAZZ楽団との共演で、さらに、プロの音楽に対する姿勢に触発される若き音楽家達の姿を目の当たりにされることでしょう。

―最後になりますがみなとみらいSuper Big Bandをご指導されるにあたって、将来の展望についてお伺いできますでしょうか。

中学生から高校を卒業するまでの、長くもあり、短くもある、最長でも6年間という期間でジャズをはじめとする音楽の素晴らしさをどんどん身につけて、音楽家として活躍、もしくは人生の友として、音楽がずっと傍にある毎日を送ってくれるよう、みなとみらいSuper Big Bandが、そのきっかけになり続けていかれたらと思います。


インタビュー・文:梅本周平(Wind Band Press)


いかがでしたでしょうか。

ジャズにかける、音楽にかける熱い想い、伝わりましたでしょうか?

公演の詳細は下記のページでもご案内していますので、興味のある方はぜひ足を運んで見てくださいね。

中高生ビッグ・バンドとも共演!熱帯JAZZ楽団 LIVE FOR NEXT GENERATION(2017/12/3:横浜みなとみらいホール 大ホール)

◆プロフィール

みなとみらいSuper Big Band

「みなとみらいSuper Big Band」は、熱帯JAZZ楽団のサポートを受け、2013年に横浜みなとみらいホールで中高生を中心に結成されたジュニア・ビッグバンド。週1回のペースで練習を行い、横浜みなとみらいホール主催の音楽イベントや、横濱ジャズプロムナードなどに出演し、演奏活動を行う。このビッグバンドの活動は、日本マクドナルド株式会社、日本コカ・コーラ株式会社よりご支援をいただき、演奏とともに、病気の子どもとその家族のための滞在施設である「ドナルド・マクドナルド・ハウス」を周知する活動にも取り組む。熱帯JAZZ楽団トロンボーン奏者の青木タイセイ氏を特別講師に、Lowland Jazzトランペット奏者の具理然氏を講師に招き、一層の練習と活動に励み、今年で5年目を迎える。

青木タイセイ トロンボーンetc、作編曲家

ホーンセクションからフリーインプロヴィゼーションまで、その活動はきわめて多岐にわたる。90年代広木光一グループに参加したのをはじめとし、オルケスタデラルスでの海外ツアー、伊藤多喜雄、菊池成孔DCPRG、大友良英ONJO、宮本亜門演出「三文オペラ」、内橋和久音楽監督「時計仕掛けのオレンジ」、酒井俊、UAのサポート等に参加。三谷幸喜演出 音楽:高良美子「酒と涙とジキルとハイド」そして、現在、熱帯ジャズ楽団、芳垣安洋オルケスタリブレ、等で演奏活動とともにアレンジも手がける。




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