以前、ホームページなどを公開されている多くの吹奏楽部保護者会、吹奏楽部OB会の皆様に、Wind Band Pressよりアンケートへのご協力のお願いをさせて頂きました。
目的は「保護者会やOB会の運営のノウハウをシェアすることで、より多くの部活動と各会の間に今よりも良好な関係を築くきっかけとなる」ような特集記事を組むことでした。
できるだけ多くの事例を集めてみたかったのですが、今回ご協力頂けたのは千葉県立長生高校吹奏楽部OB会様のみとなりました。
そこで今回は千葉県立長生高校吹奏楽部OB会の秦清彦様に質問を追加させて頂き、メールインタビューにご協力頂きました。
これからOB会を作りたい人、すでに運営をされている人、そして学校の先生、現役の生徒の皆様、色々な立場の方のお役に立てれば幸いです。
―この度はご協力頂き誠にありがとうございます。まずはOB会の結成のきっかけからお伺いできますでしょうか。
秦:平成2年の「長生高校吹奏楽部創立50周年記念演奏会」がきっかけです。
そのときに集まった多くのOBの中に、休止状態であった先代のOB会に代わり、新しくOB会を作りたいという機運の高まりがありました。
また、当時、熱心な外部講師が部の活動をレベルアップし、マーチングにも挑戦しようとしていました。
しかし公立高校なので必要な予算はそれでなくても全く足りていませんでした。そうした現役の状態を知り、現役を支援したいという思いもきっかけになりました。
昭和30年代に一度OB会は結成されましたが自然消滅したので、現OB会は二代目になります。
―立ち上げが難しいこともあるかと思いますが、OB会の発足までの流れについてお聞かせください。
秦:記念演奏会当日、OB会再建の話し合いを持ち、その場でOB会設立準備委員会を発足させ、規約、役員等を決め、翌平成3年6月に第1回総会を開きました。
地元の市民バンドで活動しているOBが多数いたので、集まりやすかったのではないかと思います。
―OB会を運営するにあたって苦労されていることや、考慮されている点についてお聞かせください。
秦:苦労していることは、若いOBの参加率を上げること、資金の確保、新しい活動の実行などです。
考慮していることは、会員に何かを強制することがないようにすることと、現役の活動に迷惑をかけないことです。
―OB会を運営するにあたって、特にどんな活動に重点を置いておられるかお聞かせください。
秦:現役支援とOB間の親睦を会の重点活動(目標)にしています。
具体的な活動は以下の通りです。
(1)定期的には年一回の現役への金銭援助。
(2)毎年、秋に行う「現役・OB合同演奏会」の開催
(3)「現役・OB合同演奏会」後の現役との懇親会、およびOBのみの懇親会。
(4)年一回、4月に「OB会報」の発行。
―御会の場合、卒業生の入会は必須でしょうか?必須ではない場合でも、入会への協力を求めていますか?
秦:卒業すると自動的に入会する建前で、協力を求めていますが、入会されない卒業生もいらっしゃいます。
―御会の場合、会員の皆様から会費などのお金はお集めになられておりますでしょうか?
秦:会費は集めず、自主的な寄付金をあつめています。
―御会の場合、学校(部活動)とどのような関係にありますでしょうか。関わりのある活動範囲などについてお聞かせください。
秦:「活動の重点」で前記した、【(2)年一回の「現役・OB合同演奏会」の開催】に当たっては、8月から11月の間に、8日程度の現役とOBの練習日を高校の施設で行っています。その際に演奏のことや、部の運営などいろいろな指導を行っています。
その他はOB会としては行っていません。
―OB会を組織することで、卒業生と現役生それぞれが受けるメリットとデメリットについてご意見をお聞かせください。
秦:一般的には、卒業生には懇親を深める、現役の援助をしながら見守っていける、というメリットと、役員の負担、寄付金の負担、というデメリットがあると思います。
現役生には物心両面の援助が受けられるというメリットと、部の活動に制約を受けることがあるというデメリットがあると思います。
当会では「現役・OB合同演奏会」の開催を通じて、卒業生には再び同窓の仲間と演奏の場を得られるメリットがあり、現役にも演奏の場を増やす、というメリットがあると思います。
また、この演奏会に参加するOBは毎年40名から60名ぐらいなので、現在30名ほどの現役生にとっては大編成で演奏できる、というメリットもあると思います。
現役生のデメリットは、アンコンなどと重なって、練習日程や準備に無理が生じるということです。
―御会の場合、現役の部活動に対して、OB会の存在意義またはOB会の役割として最も重要視している点についてお聞かせください。
秦:OB会の役割としては、現役の活動を支援する、現役に迷惑をかけない、という二点を重要視しています。
―OB会として、運営をスムーズに行うために、顧問の先生や生徒側にも希望することがあればお聞かせください。
秦:生徒には卒業したら今度はOBとして支援する側に立つ意識を持ってもらいたいと思っています。
―続いて学校側とOB会の付き合い方についてお考えをお伺いしたいと思います。
まずは顧問の先生との付き合い方です。
公立の学校の場合は先生の異動も多いかと思いますが、新しく着任された先生とどのように関係をお作りになられていますでしょうか。
また、その場合に気を付けている点などございましたらお聞かせください。
秦:OB会は、金銭的援助はするけれども、部の演奏面や運営には一切口出しをしない、もちろん顧問からOB会に要望があればできる限りのことはする、というOB会の方針を伝えて実践しています。
昨年度までの20数年間は、幸いなことに中心になる二代の顧問の先生が吹奏楽部のOBだったため、特に関係作りを意識することはありませんでしたが、今年度以降も顧問の先生とは今までと同じ関係を保ちたいと思っています。
―次に生徒との付き合い方です。生徒も新年度を迎えるに当たり、最上級生が卒業すると新体制となり、また新入生も入ってきます。
新しい環境に置かれた現役生の彼らに対して、OB会として何か行うこと、または行った方が良いと思うことはございますでしょうか。
秦:年に一度、5月に金銭的な援助を行っています。県立高校なのでたとえ少額でも少しは役に立っていると思いますし、OB会の存在を意識してもらい、卒業後はOBとして現役支援をする側になってもらいたいからです。
また、現役の演奏や部の運営に助言することもOBとして大事なことだと思いますが、本校は部員の自主的な運営が伝統になっており、OBもそれを大事にしているので、OB会としての指導や助言は行っていません。
ただ、 毎秋の「現役OB合同演奏会」の企画や練習は共同で行いますので、そのときのOBの演奏会に対する考え方やノウハウを参考にしてほしい、という思いは現役に伝えています。
―反対に、「こういうことはやらないようにしている」「やらない方がよいと思う」という点はございますでしょうか。
秦:現役部員が、OBからの「押しつけ」と感じられるようなことはやらないようにしています。部の運営、演奏など現役の活動には一切口を出しませんし、その結果(たとえばコンクール)についての批評なども行いません。
「現役OB合同演奏会」の企画、運営に当たっても決して押しつけにならないように配慮しています。
学校に行き指導するOBもいますが、それはあくまでOB個人の責任で行っており、OB会として何かをすることはありません。
―秦様にとって「理想のOB会」とはどんなものでしょうか。またその実現のために現在取り組んでおられる具体的な事項がございましたらご教授下さい。
秦:とても難しい質問ですが、現役部員が卒業後OB会に進んで参加しようと思うようなOB会ではないでしょうか。
卒業しても年代を問わずつながりを保ちたい、現役の時にOB会に助けられたから今度は現役の役に立ちたい、など動機は様々でしょうがその動機をつくる根本には、現役時の部活動が楽しく充実したものであった、という思いがなければならないと思うので、OB会はそのような思いを現役部員に持ってもらえるように活動するのが良いと思っています。
インタビュー・文:梅本周平(Wind Band Press)
以上、いかがでしたでしょうか。
OB会と現役の部活動との関係に悩まれている方、運営に悩まれているOB会の方は、参考に出来る部分があれば是非実践してみて下さい。
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