「偏見することなく、外の世界を見ることが大事」サクソフォン奏者:塙美里さんインタビュー






2020年11月にはアメリカのカーネギー・ホールでのソロリサイタルも開催が予定されている、世界的に活躍中のサクソフォン奏者の塙美里(はなわ みさと)さん。

2020年1月には日本でもオペラシティのB→C(ビートゥーシー:バッハからコンテンポラリーヘ)シリーズに出演され、満員御礼となりました。CDもこれまでに2枚リリースしています。

今回はそんな飛ぶ鳥を落とす勢いの塙さんに、基本的なことから最近の活動まで、メールインタビューをさせていただきました。


―サクソフォンを始めたきっかけを教えて下さい。

ピアノを3歳からスズキメソードで初めてなんとなくピアノを専門的に勉強していました。しかし中学で吹奏楽部に入ってサクソフォンに出会い中学三年生の時にA部門に初めて出場して東関東大会に出場しました。その時の課題曲のリストが全てアルト・サクソフォンをフィーチャーして書かれた作品でした。私たちの学校は保科洋さんの「アルビレオ」を演奏しましたが、曲中に出てくる私のアルト・サクソフォンのソロを聴いたプロの先生方から専門家の道へ勧められたのがこの道に入ったきっかけです。

―サクソフォンの好きなところを教えて下さい。

一見「華やかで派手」とだけ見られがちな楽器ですが、実はクラシック界に陰影を落とす役割もしています。そして、それは必ず人の記憶に残る音色を生み出し、何百もの色を作り出す事の出来る楽器だと思っております。実はそれが出来ている人はかなり少ないのです。

―日々の練習の際に心がけていること、気をつけていること、重点を置いていることを教えて下さい。

とにかく朝、楽器に息を吹き込んだら「それしか考えない。」という事です。

よく悩みや悲しい事があると楽器に影響するのでは?と聞かれる事がありますが、私の場合は驚くほど感情面と練習が全くリンクすることは無いので、それが良い事と捉えています。

―楽器本体およびパーツや備品へのこだわり、また現在使用している楽器と備品などについて教えて下さい。

ソプラノ→
セルマーシリーズ3 GPジュビリーモデル
マウスピース セルマー170、コンセント
リガチャー bg gp、バンブー
リード バンドレン 青箱4

アルト→
セルマーシリーズ3 GPジュビリーモデル
マウスピース セルマー170
リガチャー bg gp、バンブー
リード バンドレン 青箱4

テナー→
セルマーシリーズ3 GL ジュビリーモデル
マウスピース バンドレンT20
リガチャー bg gp、バンブー
リード バンドレン3半

バリトン→
セルマーシリーズ3GL ジュビリーモデル
マウスピース バンドレンBL3 オプティマム
リガチャー バンドレン オプティマム
リード バンドレン 青箱3半

かなりオーソドックスなセッティングだと思っています。

フランスに留学してからはお腹の支えと息をしっかり使うようになったのでリードはソプラノとアルトは四番を使用しています。

―フランスに渡りサクソフォンを学ばれていますが、特に今のご自分にとって転換期となったような出来事があれば教えて下さい。

大学3年生の時に、初めてフランスに渡り講習会でレッスンを受けました。

長年悩んでいたフォームと音色、奏法、全てがフランスの先生のアドバイスにより一瞬にして解決したことが目から鱗でした。

留学3年目にしてジュリアン・プティ氏に師事しましたが、それまで習得していたつもりだったフランスの奏法をさらに深めるきっかけとなりました。

―これまでのプロとしての活動の中で、様々なことがあったかと思いますが、「最高の瞬間」について教えて下さい。

自分の演奏が上手く行った時とお客様の反応は必ずしも一緒だとは限りません。お客様の反応はそれはそれで有り難くお受けしていますが、自分の奏法に関して最高のものを求めて日々鍛錬することが大事です。舞台上でそれがドンピシャに上手く行く時というのは、厳密にはあまり多くないと思います。それが出来て初めて楽しめるようになるのだと思います。

それはフランスに留学したからこそ耳も肥えて求めるものが高くなり、より難しいレベルに挑戦し続けるという事です。

―逆に「もっとも落ち込んだ瞬間」と、そこからどのように立ち直ったか、またはそれとどのように向き合ったか、について教えて下さい。

毎日10時間何年も練習し続けてもあまり伸びなかった時期があった事です。

自分だけの力ではその解決法を見つけるのが困難でした。しかし、沢山練習する事は大好きなのでなんとか良い方法を見つけようとフランスに渡りました。

―これからさらに上達したいと考えているアマチュア奏者に「これだけは知っておいてほしい!」という心構えなどがあれば教えて下さい。

アマチュアのみならず、世間一般に言えますが、サクソフォンの世界は非常に独特だということです。そして閉鎖的な世界でそれを信じていると時間は過ぎ、気づいたら井の中の蛙になってしまいます。何でも偏見することなく、外の世界を見ることが大事だと思います。

―2020年1月21日にはオペラシティのB→C(ビートゥーシー:バッハからコンテンポラリーヘ)シリーズに出演され、満員御礼となりました。今回のB→Cを終えてみて、何かご自身にとって新しい発見や、さらに追求したいと思うようなことはございましたでしょうか。

B→Cを終えて感じた事は、これまで私は現代曲を自分のコンサートにはあまり取り上げてこなかったのですが、今回特に、メシアンのクロツグミを取り上げ、到底出来そうに無いような高度な技術を駆使する曲に取り組んだ自分の時間は宝になりました。年に一回はパリ管弦楽団の首席フルート奏者のヴァンサン・リュカ氏にレッスンをしていただいたのですが、今回はメシアンを聴いていただき「こんな難曲をサクソフォンで吹けるのは世界にお前しかいない!」と半分呆れられました。笑

そして改めて感じたのは、バッハもコンテンポラリーも結局「大切なことは一緒である。」という事です。音楽や音の方向性が無いもの程聴いていて苦痛な事はありません。

これからは自分のコンサートにも現代曲を取り入れて、自分自身の訓練の為にもバランスをとってゆきたいと思いました。

―塙さんはこれまでに2枚のアルバムを出していて、それを聴いたことのあるお客様はどんなサウンドや音楽性を持った方なのかある程度分かると思うのですが、まだ塙さんの演奏を聴いたことがない方に向けて、ご自身のサクソフォンの強みや特徴などを教えて下さい。

デビューリサイタルから11年が経ちましたが、私は今が1番伸びている!と感じでいます。音楽はスポーツと全く違うので必ずしも若い時が伸び盛りとは限りません。

その人自身の工夫と勉強とアンテナと全てをフルにして自分に取り入れたとき、初めて「伸びた」事になると思います。毎年夏にはヨーロッパへ行き最近ではスペイン人のトマス・ジェレス・ムネラ氏のもとで一定期間勉強しております。きっかけは数年前に動画配信サイトで演奏に聴き惚れ、彼にすぐにコンタクトを取りレッスンを受けにスペインへ行きました。

「頭で良く考えて大胆に行動し続ける」ことが出来るのが自分の長所だと思います。

またインタビューの最初の部分で答えたように、幼少期の頃から「本物」しか聴いてこなかったため、その感覚が今身体の芯から備わっているように思います。例えば、本当に小さい頃からコンサートは超一流のアーティストのものしか行きませんでした。それが良いものか何かも判断出来ない頃からアルゲリッチやウィーンフィルを聴きに行っていました。今良くありがちな、親子コンサートのようなものには行ったことがありません。そもそも両親がそのようなラフなコンサートに興味がありませんからコンサートはいつも母の興味があるもの(ピアノソロが多い)から入りました。

―最後に、アマチュア奏者の方や愛好家の方に向けて今一番伝えたいメッセージをお願いします。

アマチュア奏者さんや愛好家さんによって演奏家が支えられている部分もあります。

いつも思うことは、是非ご自身の耳や感覚を養い続ける努力を怠らないでください。という事です。情報がこれだけ飽和状態の世の中、何を信じたら良いかわからず、自分の好き、嫌いをはっきり発言出来ない不自由さ。芸術の世界においてはその制限無しに感じ、感動を表現してほしいです。


インタビュー:梅本周平(Wind Band Press)


コロナウィルスの影響で3月に予定されていた大きな公演も延期になってしまったとのことでしたが、大変な中、インタビューにご協力頂いた塙美里さん、ありがとうございました!

皆さんは塙さんの言葉から何を感じましたか?

塙さんのウェブサイトではより多くの情報を得ることが出来ますのでぜひアクセスしてみて下さい。
http://misatosax.wixsite.com/misatosax-

また、Wind Band Pressと同じくONSAが運営するセレクトショップ「WBP Plus!」でも塙さんのCDを販売しています。

どちらも素敵なCDなのでぜひ聴いてみてほしいですね。

■エディット・ピアフを讃えて
Yahoo!ショッピング店→https://store.shopping.yahoo.co.jp/wbpplus/ovcc-00112.html
楽天市場店→https://item.rakuten.co.jp/wbpplus/ovcc-00112/

■ロンド・カプリチオーソ
Yahoo!ショッピング店→https://store.shopping.yahoo.co.jp/wbpplus/ovcc-00142.html
楽天市場店→https://item.rakuten.co.jp/wbpplus/ovcc-00142/

今後も色々な演奏家の方にお話を伺っていく予定ですので、どうぞお楽しみに!




協賛






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その他Wind Band Pressと同じくONSAが運営する各事業もチェックお願いします!

■楽譜出版:Golden Hearts Publications(Amazon Payも使えます)


■オンラインセレクトショップ:WBP Plus!






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