「楽器の演奏と同じように、作曲も練習が必要」作曲家インタビュー:ブルース・ブロートン氏(Bruce Broughton)



[English is below Japanese]

アメリカの作曲家ブルース・ブロートン氏に、設問に答えて頂く形でインタビュー取材を行いました。

ブロートン氏は数多くの映画音楽で知られており、代表作には『シルバラード』、『トゥームストーン』、『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』、『プレシディオの男たち』、『34丁目の奇跡』、『奇跡の旅』、『ハリーとヘンダスン一家』などがあります。

テレビ番組の音楽としては、『宇宙探査艦オーヴィル』、『JAG 犯罪捜査官ネイビーファイル』、スティーヴン・スピルバーグ製作の『タイニー・トゥーンズ』、『恐竜家族』などのテーマ曲を手がけています。

エミー賞に24回ノミネートされ、同賞を史上最多の10回受賞しています。『シルバラード』の音楽はアカデミー賞に、『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』の音楽はグラミー賞にノミネートされました。彼の音楽は世界中のディズニー・テーマパークのアトラクションでも使用されており、『ハート・オブ・ダークネス』の音楽は、ビデオゲームのために録音された初のオーケストラ・スコアとなりました。

コンサート作品の多くは、クリーブランド管弦楽団、シカゴ交響楽団、シアトル交響楽団、ナショナル交響楽団、ロサンゼルス室内管弦楽団、シンフォニア・オブ・ロンドン、ハリウッド・ボウルなどで演奏されています。

吹奏楽のための委嘱作品には、『祝典序曲(A Celebration Overture)』、『グリム童話(Grimm Tales)』、『ファンファーレ、マーチ、賛歌、そしてフィナーレ(Fanfares, Marches, Hymns and Finale)』、『Masters of Space and Time』などがあります。

彼の作品『ヒーローズ(Heroes)』は、英国ナショナル・ブラスバンド・チャンピオンシップの2020年大会におけるチャンピオンシップ・セクション(最上級部門)の課題曲に選ばれました。

また、室内楽アンサンブルのための作品も数多く演奏・録音されています。その例として、ピアニストのグロリア・チェンが録音した『ピアノのための5つの小品(Five Pieces for Piano)』、トランペットの名手フィリップ・スミスが録音したトランペットとバンドのための『エクスカーションズ(Excursions)』、そしてリリス・カルテット(Lyris Quartet)が委嘱・録音した弦楽四重奏曲『ファンシーズ(Fancies)』などが挙げられます。

ブロートンは現在、ASCAP(米国作曲家作詞家出版者協会)の理事を務めるほか、テレビ芸術科学アカデミーおよび映画芸術科学アカデミーの元理事、そしてSCL(作曲家・作詞家協会)の元会長兼創設メンバーでもあります。

これまでに、南カリフォルニア大学(USC)ソーントン音楽院の映像音楽作曲学科や、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ハーブ・アルパート音楽院で、作曲やオーケストレーションの指導を行ってきました。また、2023年から2024年にかけては、ノーステキサス大学音楽学部のコンポーザー・イン・レジデンス(専属作曲家)を務めています。

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1. まず簡単にあなたの生い立ち、どこでどのように育ったのか、作曲家としての活動を始めたきっかけは何だったのか、などについて教えて頂けますでしょうか?

私は音楽一家で育ちました。祖父の一人は作曲家で、他の3人の祖父母や両親も皆、アマチュアの音楽家でした。ソングライターの叔父や、プロのピアニストである叔母もいましたし、兄はトロンボーン奏者として映画スタジオで演奏していました。私は6歳頃にピアノを始め、その直後にトランペットも習い始めました(家族は皆、金管楽器奏者でしたが、ピアノも弾くことができました)。12歳頃からバンドで演奏するようになり、同じ時期に、バンド曲をピアノ用に、あるいは交響曲をバンド用に編曲することも始めました。こうして、他者の音楽を学ぶことを通じて、私は作曲家としての道を歩み始めたのです。大学では作曲を専攻し、卒業後は映画音楽の仕事に就くことにしました。人々の心に響く音楽、つまり聴く人が楽しみ、演奏する音楽家もまた楽しめるような音楽を作りたいと願っていたからです。

 

2. あなたは多くの吹奏楽作品を発表しています。吹奏楽にどのような魅力を感じているかについて教えて頂けますか?

テレビや映画の仕事をする中で、私は主にオーケストラ編成を扱い、優れたオーケストレーターとしての腕を磨きました。一方で、バンド音楽にも興味を惹かれました。オーケストラとは異なり、バンドは新作を積極的に演奏する傾向があり、楽器の音色の選択肢も豊富だからです。また、オーケストラ音楽に比べて堅苦しさが少ないという点も魅力でした。

 

3. 吹奏楽曲を作曲する際、特に注意していることや心がけていること、あるいはあなた独自のルールはありますか?

私が吹奏楽の曲を書く際に最も重視しているのは、適切なオーケストレーション(楽器の割り当てや構成)を行うことです。吹奏楽の楽曲の多くは、不必要な楽器の重複(ダブリング)に頼りすぎており、その結果、バンドの響きが極めて凡庸で色彩に乏しいものになってしまっています。吹奏楽の作曲において最大の課題の一つは楽器間の適切なバランスを保つことですが、その解決の鍵は作曲者自身が握っています。作曲者は、あらゆる楽器の特性を理解し、どのような組み合わせであっても、それぞれの楽器が最も効果的に響く音域や奏法を把握していなければなりません。残念なことに、多くのバンドはとかく「大きく、速く」演奏しがちです。そのため作曲者は、バンド(あるいは指揮者)のコントロールが完全に行き届かない状況であっても、意図した通りの響きが得られるようなバランスの取り方を理解しておく必要があります。特に市民バンドや学校の若いバンドなどでは、奏者の技術レベルに大きなばらつきがあることが珍しくありません。したがって作曲者は、すべての楽器セクションが均質ではないこと、そして指揮者と同様に、個々の奏者の能力にも大きな差があることを理解しておく必要があるのです。

 

4. 作曲家として人生のターニングポイントとなった自身の作品があれば、その作品についてのエピソードを教えて下さい。(これは吹奏楽作品でなくても構いません)

「これこそが転機だった」と言えるような特定の作品を挙げることはできません。しかし、テレビ番組の音楽を書き始めた当初、数年が経つにつれて、自分の書く音楽がより力強く、焦点の定まったものになっていくのを感じました。アイデアの活かし方においても、楽器の扱い方においてもです。テレビの仕事をしていた時期は、週7日、1日14時間働くことも珍しくありませんでした。私は若い作曲家たちにこう言います。楽器の演奏と同じように、作曲も練習が必要なのだと。なぜなら、絶えず実践を重ねることでしか身につかない技術があるからです。より良い曲を書くためには、練習を積み、問題解決の方法を学び、技術を習得しなければならないのです。

 

5-a. ご自身の作曲または編曲に強く影響を受けた他の作曲家や編曲家の作品があれば、それについてどのような影響を受けたのか教えて下さい。(クラシックでなくても構いません)

もちろん、私が敬愛するクラシック音楽の作曲家は数多くおり、その理由はそれぞれ異なります。私は彼らの多くから技法や手法を学び取り、時にはそれらを自身の作曲に取り入れてきました。手短に言えば、バッハの持つ技法の幅広さと純粋な音楽性を高く評価していますが、ワーグナー、ドビュッシー、バルトークについては、その生涯を通じて音楽がいかに発展・変化していったかという点において、特に敬意を抱いています。映画音楽の分野では、ジェリー・ゴールドスミスの技法を特に高く評価していました。彼はオーケストラや音の組み合わせを深く理解しており、映画全体に合わせた独自のスタイルを構築し、その「声」を用いて物語を語ることに長けていたからです。

 

5-b. 上記とは別に、現代の作曲家で特に注目している作曲家がいれば理由と合わせて教えてください。

私はルトスワフスキの作品を特に好んでいます。その理由は、彼の音楽性や作曲技術もさることながら、後期の作曲技法を実に優雅に駆使している点にあります。とりわけ「ピアノ協奏曲」には感銘を受けています。私にとってこの作品は、極めて現代的な技法と語法を用いつつ、19世紀の形式を再構築したもののように感じられるからです。リゲティの作品についてはそれほど多くを知っているわけではありませんが、彼の「ピアノのためのエチュード」は特に気に入っています。作曲として緻密で興味深いだけでなく、ピアノという楽器の特性が存分に活かされており、演奏もしやすい作品だからです。

 

6. 将来の目標(またはこれから新たに取り組みたいこと)について教えてください。

「(聴き手に合わせて)レベルを落とす」ようなことはせず、分かりやすく、かつ人々の心を動かすような音楽を創り出す力を高めようと努めています。どのような音楽的スタイルであれ、常に「明快さ」を重視しています。私は長年にわたり、一度聴いただけで理解されることを意図した映画やテレビ番組の音楽を書いてきました。その経験で培った力を活かし、映像を伴わなくても、一度聴いてすぐに理解できると同時に、繰り返し聴くたびに新たな発見があるような深みを持った音楽を書いていきたいと考えています。

 

7. あなたの作品は、世界中の多くの国で演奏され、評価されていることと思います。日本の若い作曲家や作曲家を目指す日本の学生たちにアドバイスをお願いします。

練習、練習、そして練習を重ねてください。それと同時に、可能な限り自分の曲を実際に演奏してもらいましょう。そうすることで、自分の作品を耳で確かめ、どこを改善すべきかを知ることができるからです。

 

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インタビューは以上です。ブロートンさん、ありがとうございました!

ぜひ多くの方にインターネット上の音源や、演奏会を通じてブロートンさんの作品に触れていただきたいと思います。

さらに多くのことを知りたい場合はブロートンさんの公式サイトへどうぞ。
https://brucebroughton.com/

 

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取材・文:梅本周平(Wind Band Press)
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Interview with Bruce Broughton, composer

1. First of all, would you tell me about your background, where and how you grew up, what made you started as a composer?

I grew up in a very musical family. One grandfather was a composer, the other three grandparents and my parents were all amateur musicians. I had an uncle who was a songwriter and an aunt who was a professional pianist. My brother was a trombonist and played in the motion picture studios. I began playing piano when I was about six years old and was given a trumpet to learn shortly afterward (my family were all brass players, but could play piano, as well). I started playing in bands when I was about twelve years old, and, around the same time, I started making piano arrangements of band pieces and band arrangements of symphonic pieces. This is how I began as a composer, studying other people’s music. When I began university, I became a music composition major, and, after graduation, I decided to work in the movies, since I wanted to make music that affected people; music that people would enjoy listening to and that musicians would enjoy performing.

 

2. You have published many wind band works. Would you tell me about what fascinates you about wind band music?

While working in television and motion pictures, I worked primarily with orchestral combinations and became a good orchestrator. Band music was interesting to me because bands, unlike orchestras, like to play new works and have more instrumental colors to work with. It also tends to be less formal than orchestral music.

 

3. When composing a wind band piece, is there anything you pay special attention to, keep in mind, or have any rules of your own?

My essential rule when writing for band is to orchestrate the music properly. A lot of band music relies on unnecessary instrumental doubling, which makes the sound of the band very bland and colorless. One of the biggest problems in writing for band is to attain correct balance between the instruments, but the solution to that problem begins with the composer. The composer has to understand all of the instruments and where they sound best in whatever combination is desired. Many bands, unfortunately, like to play mostly loud and fast, so the composer has to understand how to balance the sounds so that the intended sound can be achieved even when the band (or the conductor) isn’t entirely under control. There are many bands in which the players’ technique varies quite a lot, especially in community bands and many young school bands; so the composer has to understand that not every instrumental section is equal, and that each player varies greatly in competence, as do the conductors.

 

4. If you have a piece of your own work that was a turning point in your life as a composer, would you tell me the episode about that work? (This does not have to be a wind band piece)

I can’t give you one specific piece that was any sort of turning point. However, when I was first writing for television, I noticed that, after a few years, my writing was becoming stronger and more focused, both with regard to how I used my ideas and how I used the instruments. In those television years, I often worked seven days a week, 14 hours a day. I tell young composers that, just like someone playing an instrument, one has to practice, because there are skills that have to be learned by constant application. In order to write better, one has to practice, learn to solve problems and master techniques.

 

5-a. If there are works by other composers or arrangers that have strongly influenced your composition or arrangement, would you tell me about them and how they have influenced you? (It does not have to be classical music)

There are, of course, many classical composers whom I admire and many for different reasons. I have picked up techniques and methods of many of these and have, at times, applied them to my own writing. Briefly, I admire the breadth of technique and sheer musicality of Bach, but I also especially admire Wagner, Debussy, and Bartok for how their music developed and changed throughout their lives. In motion pictures, I particularly respected the technique of Jerry Goldsmith, who understood the orchestra and combinations of sound in a way that he could adapt a style for an entire movie and help tell a story using that particular voice.

 

5-b. Apart from the above, would you tell me about any contemporary composers that you are particularly interested in, along with the reasons why?

I particularly like Lutoslawski, partly for his musicianship, partly for his craft, and partly for how he used his later compositional system so elegantly. I especially admire his piano concerto, which to me is a reworking of the 19th-century form using a very contemporary technique and voice. Although I don’t know a great deal of his music, I particularly like Ligeti’s piano etudes. They are compositionally tight and interesting, and entirely pianistic and playable.

 

6. Would you tell me about your future goals (or what you would like to work on in the future)?

Without “writing down,” I try to expand my ability to compose in a way that is understandable and has the ability to move people emotionally. Regardless of the idiom I am working in, I try to focus on clarity. I spent many years writing music for film and television that was meant to be understood on first hearing. I would like to be able to use that ability to write music, unaccompanied by a film or visual aid, that could also be comprehended on first hearing, but that had enough depth to reveal more when heard multiple times afterward.

 

7. Your works are performed and appreciated in many countries around the world. What advice would you give to young Japanese composers and Japanese students who want to become composers?

Practice, practice, practice, and, as much as possible, get your music performed so that you can hear what you’ve done and know what has to be improved.

 

Interview and text by Shuhei Umemoto (Wind Band Press)



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