「自分自身に正直でいること、自分自身を制限しないこと」作曲家クリストファー・マーシャル氏(Christopher Marshall)インタビュー

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以前にご紹介した作曲家クリストファー・マーシャル氏(Christopher Marshall)にメールインタビューを行うことができました。

新作の「Rust Belt」を中心としたインタビューですが、特に最後の「日本の若い作曲家へのアドバイス」の項目では熱いメッセージを感じ取れるかと思います。

「Rust Belt」のMIDI音源は以前の記事で確認いただけます。簡単なプロフィールも下記のリンクからどうぞ。

クリストファー・マーシャルの新作「Rust Belt」が完成、さらにエレキギターと室内吹奏楽のための「Burning Blue」が初演される

また、原文の英語も日本語版の後に併記しますので、英語で直接読みたい方はそちらでお楽しみ頂けます。

※ちなみにマーシャル氏は作曲家になる前は英語教師だったそうで、私のつたない英語の文法を修正していただきました。大変ありがたいことです・・・。

※誤訳等ございましたらこちらのフォームからお知らせいただければ幸いです。


1.作曲家になろうと思ったきっかけを教えてください。

私の家族がオーストラリアのアーミデイルに住んでいた間、私の父は厳しいアマチュアのリコーダー奏者でした。

彼は私と私の兄弟を次の隣人が運営するリコーダーグループに登録しました。

私が7歳のとき、私は最初の作品を書きました。

それは非常にシンプルで、2つのソプラノ・リコーダーと10小節しかありませんでした。

しかし、私の父は驚き、興奮していました。

私はまだ彼の反応で感じた喜びを覚えています。

これが私に作曲家になる道を歩ませたのだと思います。

2.新作の「Rust Belt」が完成しすでにアメリカとイギリスで初演が行われたそうですが、聴衆の反応はいかがですか?

アメリカ空軍アカデミーバンドは、今年(2017年)2月13日に「Rust Belt」を初演しました。

私はその演奏会に出席し、観客の反応は非常に熱狂的でした。

バンドはコロラド州とユタ州のツアーでこの作品を取り上げ、指揮者は各会場で聴衆が「Rust Belt」を愛していると私に伝えてくれました。

イギリスのマンチェスターにいる私の友人は3月23日のロイヤル・ノーザン・カレッジ・オブ・ミュージックの演奏について、スタンディング・オベーションを得たことを伝えてくれました。

3.「Rust Belt」を作曲した背景(または理由)を教えてください。

2016年に、アメリカ空軍アカデミーバンドのデヴィッド・プライス大佐は、2人の最高級トランペッター、エイドリアン・ホルトン上等空兵とティム・アラムス曹長を披露するための8-10分の作品を書くようにと私にアプローチしました。

私はSummit Brassとの仕事からエイドリアンを知っていましたし、彼の技術的な才能とミュージシャンシップについても知っていました。

私はまたバンドの素晴らしい評価や、初演を指揮することになっていたシャンティ・サイモン大尉のことも知っていました。

だから私は新しい作品が素晴らしい演奏を得られると確信していました。

「Rust(錆びた) Belt」とは、かつて強力だった工業地帯が縮小したことによる経済の衰退、人口の減少、都市部の腐敗などを指す、米国北東部、五大湖、中西部にまたがる地域を指す用語です。

「Rust Belt」は、放棄された工場や荒廃した地域など、この地域の写真をフィーチャーしたフォト・エッセイにインスパイアされました。

私は、かつてそのような場所に充満していたような「ブルー・カラー」のエネルギーと楽観主義の活気を音楽で示したかったのです。

ロック・ミュージックは、ざっくりと50年代から80年代前半にかけて、工業時代のサウンド・トラックでした。ですから、この作品にはおそらく少しロックの影響があります。

また、工業のテーマに沿って、アンビルやスティール・ドラムなどの金属製の打楽器がフィーチャーされ、サイレンとともに目立っています。

音楽は、良かった時代への住民のノスタルジアと、彼らの適切で尊厳のある復帰への切望を呼び起こそうとしています。

4.吹奏楽に限らず数多くの作品を作曲されていますが、作曲家として人生のターニングポイントとなった作品はどれですか?

それは良い質問です―答えは少し複雑です!

2000年に私はウィンド・アンサンブルのための私の最初の作品、「Aue!」を書きました。

ニュージーランドを訪れたティモシー・レイニッシュは、ラジオで私の管弦楽作品「Hikurangi Sunrise」を聴いていました。彼がイギリスに戻ったとき、彼は私にバンドのための7分間の作品の委嘱をオファーしました。

私は90年代後半にイーストマン音楽学校に通うときにウィンド・アンサンブル作品を聴いて、楽しんでいました。

しかし、当時はニュージーランドでは吹奏楽団のムーヴメントが強くないことを知っていたので、私はこの手段の作曲を考えたことは一度もありませんでした。

「Aue!」は成功し、私はそれを書くことから多くを学びました。

しかし、ティム・レイニッシュと彼の妻のヒラリーから委嘱された次の作品の方がよりターニングポイントでした。

彼らの息子のウィリアムの想い出に捧げられた「ロム・アルメ変奏曲(L’homme arme: Variations)」は今や世界中で70回以上演奏されています。まだ日本では演奏されていないと思いますが。

それは私を作曲家として地図に載せ、2006年にアメリカに移住するという私の決定に役立ちました。

5.すでに世界的に活躍されていますが、今後の目標を教えてください。

私の主な目標は、常にそうあってきたこと、つまり作曲家として成長し続けることです。

私は、指揮者、演奏家、観客の数の増加につながるように、私の音楽の表現力の幅と力を高めることを目指しています。

私の音楽が幅広い聴衆に届いてからわずか20年です。

だから私は、音楽に関して言えば、私の潜在能力を最大限に発揮するための長い道のりの中で、若年期にいると感じています。

6.日本の若い作曲家にアドバイスをお願いします。

私が私の生徒やすべての若い作曲家に与えるアドバイスはそれほどオリジナルではありませんが、それでもなお有効だと思います。

それは3つです。自分自身に正直でいること、自分自身を制限しないこと、自分自身をプロモーションすること。

あなたが人として音楽家として何者であるかを表現する音楽を書くこと。

利便性または他人を喜ばせることのためにあなたに正直に響くことのない作曲スタイルを採用することはしないでください。

しかし、あなた自身に正直であれ、というのは、異なるスタイルや影響を試してはならないというわけではありません!

あなたが尊敬する作曲家の作品を模倣し、あなたには馴染みのないスタイルを使って試してみたりすることにはとても価値があります。時にはすぐにあなたが気に入ることができない場合もあります。

それが助けになる場合は、そのような作品に「演習」や「実験」というラベルを付けて、より多くの「パーソナルな」作品と区別します。

このようにあなたの心を開けば、それらのスタイルのいくつかを自分の音楽的なボキャブラリーに統合することができます。このプロセスでは、それらはあなた独自のものになるように変化するでしょう。他のスタイルはまったく正しいと感じず、あなたは前に進むことでしょう。

私はジャズやロックを聴くために私の道から出ることはありません。

いくつかの例外を除いて、どちらのジャンルも私にとって強い魅力を持ちません。

しかし、自分の音楽にジャズとロックの両方の影響を見ることができます。

どのようにしてそれは入り込んだのでしょうか?

あらゆる種類の音楽が私を取り囲んでいます – ラジオやテレビで – ショッピングセンターで – そしてその要素が組み込まれました。

私の人生の初期段階で経験した伝統的なポリネシア音楽があります。

私はこれらの要素を引き出すつもりはありません。

それらは作曲プロセスの一部として現れます。

日本の若い作曲家は、彼らが利用できる豊かな遺産を持っています。

2003年にスウェーデンで、後藤洋氏の作品を聴いたことを覚えています。

それは非常に美しく – 喚情的で、感動的でした。

私と強いつながりを持つ独特の何かがありました。

私はこの特別な品質は作曲家の日本の伝統から引き出された美学によるものとしか思えません。

いつか、私はそれを分析し、作品を効果的にしているものを発見したいと思っています。

その後にはおそらく私は間接的に自分の作曲言語に日本文化の要素を取り入れることでしょう!

セルフプロモーションは私にとっても簡単ではありませんし、私はまだそれほど得意ではありません。私の非常にすたれたウェブサイトによって証明されたように!

しかし、たとえどんなに厄介に感じても、すべての作曲家は指揮者、演奏家、新しい音楽に興味を持つすべての人の前に自身の音楽を置くよう努力すべきです。

チャンスがあるときにラジオやソーシャルメディアでそれについて話すべきです。 現代人の生活は競合する刺激という気が散ることに満ちています。

1秒間でもスポットライトをつかむことは困難です。

あなたは、自分の作品がスポットライトを見つけるのに十分な品質を持っていると感じるかもしれません。

どれほどそれらが上質でも、たいていそれは本当ではありません。

私の見解は、あなたがあなた自身の音楽を良いと感じる場合は、それを聴いてもらうためにとてもハードに戦う価値があるということです。


インタビュー・翻訳:梅本周平(Wind Band Press)


1. Why do you think you wanted to become a composer?
The answer:

During the time my family was living in Armidale, Australia, my father was a keen amateur recorder player. He enrolled me and my brothers in a recorder group run by our nextdoor neighbour. When I was seven I wrote my first piece. It was very simple, for two descant recorders and only ten bars long. But my father was surprised and thrilled. I still remember the joy I felt at his reaction. I think it was this that started me on the road to becoming a composer.

2. The new work “Rust Belt” has been completed and the premiere has already been held in the United States and the UK. What is the reaction of the audience?
The answer:

The United States Air Force Academy Band premiered Rust Belt on February 13th this year. I was present at that performance and the audience reaction was very enthusiastic. The band took this piece on tour throughout Colorado and Utah and the conductor told me that at each venue the audience loved it. A friend in Manchester, UK for the Royal Northern College of Music performance on March 23rd reported that it earned a standing ovation.

3. Please tell me the reason for composing “Rust Belt” and the background of the piece.
The answer:

In 2016 Colonel David Price of the Air Force Academy Band approached me about writing an 8-10 minute work to showcase their two finest trumpeters, Senior Airman Adrian Holton and Master Sergeant Tim Allums. I knew Adrian from my work with Summit Brass and was aware of his technical prowess and musicianship. I also knew of the band’s fine reputation and that of Captain Shanti Simon who was to direct the premiere. So I was confident the new piece would receive a fine performance.

The ‘Rust Belt’ is a term for the region straddling the upper North-Eastern United States, the Great Lakes and the Midwest, referring to economic decline, population loss, and urban decay due to the shrinking of its once-powerful industrial sector. Rust Belt was inspired by a photo essay featuring images from this region such as abandoned factories and derelict neighborhoods. I wanted the music to suggest the vibrancy, the ‘blue-collar’ energy and optimism that used to permeate those places. Rock music provided the soundtrack for the industrial era, roughly from the 50s to the early 80s, and so perhaps there is some rock influence here. And in keeping with the industrial theme, metallic percussion such as the anvil and steel drums feature prominently, along with the siren. The music seeks to evoke the inhabitants’ nostalgia for the good years and their yearning for a return to relevance and dignity.

4. You have composed as many works for other ensembles as for wind band. Which work was a turning point in your life as a composer?
The answer:

That is a good question – and the answer is a little complicated! In the year 2000 I wrote Aue!, my first ever work for wind ensemble. Timothy Reynish, visiting New Zealand, had heard my orchestral piece Hikurangi Sunrise on the radio and when he had returned to the UK he offered me a commission for a 7 minute work for band. I had heard and enjoyed wind ensemble works when attending the Eastman School in the late 90s. But I had never considered composing for this medium since I knew the wind band movement was not strong in New Zealand at that time. Aue! was a success and I learnt a lot from writing it. However it was my next piece, also commissioned by Tim Reynish with his wife, Hilary that was even more of a turning point. L’homme arme: Variations, dedicated to the memory of their son William, has now received more than 70 performances worldwide – though I don’t think it has yet been performed in Japan. It really put me on the map as a composer and was instrumental in my decision to move to the United States in 2006.

5. You are already active worldwide, please tell me your future goals.
The answer:

My main goal is what it has always been: to keep growing as a composer. I aim to increase the expressive range and power of my music so that it may connect with increasing numbers of conductors, performers and audiences. It’s only about 20 years since my music has been reaching a wide audience. So I feel that, musically speaking, I am in my youth with a long way to go to reach my full potential.

6. Please advise young composers in Japan.
The answer:

The advice I give my students and all young composers is not very original, but I think it is nonetheless valid. It is threefold: be true to yourself, don’t limit yourself, promote yourself. Write music that expresses who you are as a person and a musician. Don’t adopt a style of writing that doesn’t ring true to you merely for convenience or to please others.

However, being true to yourself doesn’t mean you should not experiment with different styles and influences! It is so valuable to imitate the work of composers you admire and to experiment using styles that are unfamiliar to you, or even sometimes that do not immediately appeal to you. If it helps, label such pieces ‘exercises’ or ‘experiments’ to differentiate them from more ‘personal’ pieces. In opening your mind in this way you may integrate some of those styles into your own musical vocabulary and in this process they will be changed to become uniquely yours. Other styles will never feel right and you will move on.

I do not go out of my way to listen to jazz or rock. With some exceptions neither of those genres holds strong appeal for me. Yet I can see the influence of both jazz and rock in my own music. How did it get in there? All kinds of music surrounds me – on the radio or television – in shopping centres – and elements of it have become incorporated. So has the traditional Polynesian music that I experienced in an earlier stage of my life. I do not seek to bring out these elements. They emerge as part of the composition process.

A young Japanese composer has a rich heritage that he or she can draw on. I remember in Sweden in 2003 hearing a piece by Ya Goto. It was very beautiful – evocative and moving. There was something unique about it that made a strong connection with me. I can only think that it owed this special quality to an aesthetic drawn from the composer’s Japanese heritage. One day I would love to analyse it and try to discover what made it so effective. Then perhaps I will be indirectly incorporating an element of Japanese culture into my own composing language!

Self-promotion has not come easily to me and I am still not very good at it – as evidenced by my very out-of-date website! But no matter how uncomfortable it may feel, all composers should make an effort to put their music in front of conductors, performers and all those interested in new music. They should speak about it on radio or social media when they have the chance. Modern life is so full of distractions – of competing stimuli. Grabbing the spotlight even for one second is difficult. You might feel that your pieces have sufficient quality to find that spotlight of their own accord. Usually that is not true, no matter how fine they are. My view is that if you feel your music is good it is worth fighting very hard to make it heard.

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