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金管吹きの悩みってどんなものがありますか?
こもった音になる、音が抜けない、バテやすい、高音が出ない、息が続かない、そもそも音が出ない、色々あると思います。
もしかしたらあなたのあるところが狭いからかもしれません。
心じゃないですよ。
それはアゴの開きです。
色々な方のレッスンをさせて頂きましたが、高い音が苦手、音がこもる、バテ易いといった生徒さんに多くみられたのがアゴが開いてない・動いていないという点でした。
音域の広いホルンや、トロンボーンやチューバといった低音パートの楽器は自然と顎が開く・動くようになる傾向にあるのですが、トランペットだとアゴの動き、開きが少ないように感じます。
トロンボーンやチューバの低音はトランペットに比べると大きくアゴを開きますが、トランペットはローCあたりからアゴが開き始めます。でもそれが少ないので色んな問題が生じているように思います。
解決策としてはベンディングが有名です。たとえばソの音でロングトーンをしつつ、ピストンを押さずに半音下のファ#を吹きます。
口をアウアウさせながら「ソファ#ソファ#」と音程を変えて行くのですが、この時音が響く場所が見つかります。その時のアゴの開き具合を目安にすると良いと思います。
ピッチが変わってしまったらその吹き方のままチューニング管を抜き差ししてください。口で合わせようとしたら今までと変わりません。
トランペットの場合は大口をあけるように動くわけではなく、ホンの数ミリ~1センチにも満たない動きだと思いますが、大事なように感じます。
注意して欲しい事
これを読んでアゴを動かしたら、開いたら問題が解決した!って方がいたらとても嬉しいです。ですが、いつまでもそれを思い続ける必要はないんです。
アゴの動きが少ない時に「アゴを動かそう」と思うのは役立ちますが、アゴが動く状態になったのに「アゴを動かそう」と思ってもやり過ぎてしまったり、アゴに注意が行き過ぎてその他の大事な要素(息、舌、お腹など)が抜け落ちてしまう事があります。
こういったアドバイスはどの練習が、いつ自分に必要なのかを見極め、取り入れるのが大事です。レッスンでの先生の役目はそれがいつ、どれくらいなのかを判断する事でもあると思います。
何かのきっかけになれば幸いです。
なぜアゴの開きが狭かったり、動かなくなってしまうのでしょうか?思いついた理由や仮説を書いてみます。必要な事は既に書いたので、ここから先は無理に読まなくてもかまいません。
無理なマウスピースバズィング、振動を作ろうとする吹き方
吹奏楽部に入った中高生が最初にやらされるのがマウスピースでのバズィングだと思います。ですが、楽器を吹くよりマウスピースだけで吹く方が難しいとも言われています。
そして最初からズムーズに吹ける人はいません。しかし「出来なければ他の楽器に変えさせる!」なんて言われると無理やり唇を振動させて吹いてしまう生徒が出てきてしまいます。そんな時の唇はとても固く、アゴも狭い場合が多いです。
そのまま楽器を吹いてもつまった、こもった音になってしまい、唇も無理しているのでなかなか初心者から脱却できないのではないでしょうか?
マウスピースバズィングをウォームアップに取り入れたり、練習として取り入れる方はプロでも多くいらっしゃいますが、正しくやらないと逆効果だと感じます。
どの音域も同じ口で吹きなさい
もしくは「ダブルアンブシュアで吹いてはいけない」と言われたりすると思いますが、これを受け取り側が誤解している場合があるのかな?と感じます。
細かく見るとみんな同じ口で吹いてはいません、別の音が出ているのだから何かが違っていて当たり前。まず唇の振動数が違います、息のスピードも変わります、それによって唇の状態や舌、アゴも僅かに変わります。
上手な人は同じ口で吹いているように見えますが、どこかしら僅かに変化していると思います。その小さな変化を「口変えて吹いちゃった」と思ってしまうと、それが上達の妨げになるのではないかと思います。
ただ、「同じ口で吹いているように見える=最小限の労力で吹ける=どの音域も自由に繋がりを持って吹ける」と言えます。最初は口が変わってもいいので、少しずつ口周りの変化が少なくても吹けるようにしたいですね。
音を揺らさず真っすぐロングトーンしなさい
音程だったり、音そのものを揺らさず、まっすぐロングトーンしなさい。それが出来てから次の音を吹きなさい、など。
よくあるのが音程はピタっと合っているが響いてない音。そんな時は唇が固く、柔軟性が損なわれているので他の音に移行し難いです。もしくは、アゴの開きが狭く、その開き具合で固まっているので唇が無理をしている。
最初は弱々しくてもヘロヘロでも響く音で吹く様にして、少しずつ真っすぐ吹けるようにすると良いのかなと思いました。
音が揺れる→ロングトーンしなさいと言われる→無理やり真っすぐ吹く→バテ易くなるor限界が来て震える→練習量が足りないと怒られる→もっと無理な練習を増やす→音が揺れる→エンドレス・・・にはなりたくないですね。
高音練習のし過ぎだったり、無理やり高音を吹いてしまう
高音を吹く時はよく「口の中を狭く」と聞きます。アゴの開きが狭くなったり、舌の位置が変わって狭くなったりすると思います。
ですが、やり過ぎると通常音域でも口の中が狭くなりすぎて演奏に支障をきたす場合があります。高音の口で固まってしまうパターンです。
または、無理やり吹いて唇やアゴの開きが必要以上に狭くなってしまい、無理をして潰れるパターンもあります。
高音だけでなく中低音の練習もまんべんなく、そして低音から高音へ繋がるような練習をすると良いです。
息が足りない
これは息の量の事ではありません。その音を出すのに適した息、息圧とか息のスピードとか、息の太さ・細さなんて言われています。
それがないと、必要以上に唇を固くしたりアゴを狭めたりして無理して音を出してしまいます。これが続くと当然バテたりします。
一般的に言われるのはお腹を使って吹く、口先で吹かない、という事です。言葉で書くと簡単なんですが・・・。大抵は最初のブレスが浅いのが原因だと思います。深いブレスが出来ていればお腹を使うとか、口先で吹かないなんて考えはいらないと個人的には思います。
もしかしたら、具体的にはそうでない場合もあります。
実際に試してみた結果やご感想など頂けたら嬉しいです!
こちらの記事も参考に:なぜリップスラーが高音の練習に、音域拡大に繋がるのか
こちらの記事も参考に:「喉を開いて」「あくびの様なブレス」「裏声で高音を吹く」は身体のここの事を言っている。
※この記事の著作権はサトウトクヤ氏に帰属します。
サトウ トクヤ
大学のビッグバンド・ジャズサークルでトランペットを始める。独学で奏法を学び、自身の大学や他大学、企画バンドでリード・トランペットを担当する。
昔からアガリ症に悩み、時に力任せの演奏をする事もあり大学3年に血行障害を患う。以降、より無理のない奏法を身に付けるため思考錯誤を重ねている。
現在は都内、千葉県内でトランペット、アレクサンダー・テクニークのレッスンをする傍ら、アガリ症に悩まされず楽しく、より自然体で演奏する方法を模索・実践中。
ボディチャンス認定ボディシンキングコーチ
アレクサンダー・テクニーク教師(仮免)