「終演後にお客様をお見送りする時間がとても幸せ」ユーフォニアム奏者:今村耀さんインタビュー

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埼玉県を拠点に、奏者としてだけでなく指導者としても活躍されているユーフォニアム奏者の今村耀(いまむら よう)さん。

近年は演奏支援アプリ「ふこうよアンサンブル」の開発協力、テレビ朝日系《アメトーク!高校野球大好き芸人SP》番組オリジナル応援歌の音源収録&映像収録への参加、「デジタルコンテンツEXPO」での人間と合奏できるヤマハのAIシステムとの共演、プロのプレイヤーによる小編成吹奏楽団「小江戸ウインドアンサンブル」への参加、入間市のコミュニティーラジオ「FMチャッピー」の吹奏楽番組「ブラスアワー」への出演など、活動の幅を拡げています。

今回はそんな老若男女問わずファンが多いであろう今村さんに、ベーシックなことから最近の活動まで、メールインタビューをさせていただきました。


-今の楽器(ユーフォニアム)を始めたきっかけを教えて下さい。

今村:すべてのきっかけとなる出来事は、幼稚園の頃に友達のピアノ演奏を聴いて触発され、その後すぐにピアノをはじめたことです。
様々な音楽に関心を持ったので、その流れから小学4年生より必須の抽選制部活動で音楽クラブに入部しました。
その後、最初は打楽器でシロフォンやスネアドラム、トライアングルなどの小さい楽器まで経験しました。
転機が訪れたのは小学5年生。トロンボーンの友人が楽器を貸してくれたので、試しに吹かせてもらったら音が出たのです。
音楽の先生だった顧問がその光景を見て転向を勧めてくれ、ユーフォニアムの担当になり、今までずっと続けられています。

-ユーフォニアムの好きなところを教えて下さい。

今村:音の持つ力です。具体的に言うと、ここぞというときに一撃必殺で仕留めるような存在感であったり、アンサンブルに溶けきることで、聴こえているのに聴こえない=必要以上に目立たないという選択もできるオールマイティーさ。

-日々の練習の際に心がけていること、気をつけていること、重点を置いていることを教えて下さい。

今村:誰よりも自らの音を聴いている自分自身が不快にならない音を作ること。それが、確実に演奏の中に生きるようにと思いながら取り組んでいます。
基礎練習は、すべての礎だと思っているリップスラーを重点的に行っており、子供のころからやっているパターンにどんどん新しいものを追加してバリエーションを持たせています。

-楽器本体およびパーツや備品へのこだわり、また現在使用している楽器と備品などについて教えて下さい。

今村:現在はヤマハのYEP-842Tというモデルを主に使っています。よく見ていただくとわかるのですが、演奏効果を狙って抜き差し管の金メッキを他の仕上げに変えたため、かなりタフな楽器になりました。
いままで音を出したどの楽器よりも信頼できる強い相棒です。
バルブオイルもヤマハのスーパーライトで、ピストン操作性の向上と入手のしやすさを重視した選択です。価格も現実的なので思い切って使えます。

-これまでのプロとしての活動の中で、様々なことがあったかと思いますが、「最高の瞬間」について教えて下さい。

今村:終演後にお客様をお見送りする時間がとても幸せだなと思います。
コンサートを通して何かひとつでも贈り物ができたのか・・・お帰りになるときの姿や表情から、その断片を垣間見ることができることはとても光栄ですし、最高の瞬間であると思います。会場にいた人がそのとき感じたことが、ほかの誰かに還元されていくことだってあるかもしれません。音楽は社会性の強い芸術だと思います。

-逆に「もっとも落ち込んだ瞬間」と、そこからどのように立ち直ったか、またはそれとどのように向き合ったか、について教えて下さい。

今村:落ち込んだことではなく、取り返しのつかない後悔をしたことがあります。緩和病棟で亡くなる直前まで私の演奏を聴きたいと言っていた人に、聴かせてあげられなかったことです。もともと聴かせてあげたいという気持ちと、どうすればいいか考えているうちに終わってしまいました。そうできなかった今、自分はこの気持ちを抱えてどうやって演奏していくのか・・・その人が他に願っていたことが何だったのか考えたとき、自分がこれからしていくことの答えは出ました。たくさんの演奏をいろんな人に届けてね。聴かせてね。と言っていた方ですから、自分がいつもしていることそのものだったんですよね。この経験が自分を強くしたと思います。お客様をお見送りするときが最高の瞬間というのもこの話にリンクするところがあると思います。

-ホールかどうかを問わず、様々な場所で演奏する機会もあるかと思いますが、本番での演奏にあたって心がけていること、気をつけていること、重点を置いていることなどを教えて下さい。

今村:演奏という点だけに絞るならば、不必要なことをせず、適切であること。その言葉に尽きると思います。特別なことをしてみる?と、頭をよぎっても、悪魔のささやきなので絶対にのらない・・・音楽には、押し付けではなく、受け取った側が自由に解釈できる余裕を持たせたいなと思っています。

-これからさらに上達したいと考えているアマチュア奏者に「これだけは知っておいてほしい!」という心構えなどがあれば教えて下さい。

今村:楽譜にはたくさんのメッセージが書いてあります。拍子や音符の長さだけでも、色々な部分が見えるようになっています。やったことのある曲や聴いたことのある曲でも、あらためて楽譜を見てもらうと、違う発見や新しい解釈が見つかることも多々あるので、なんとなくやらずに、必要なことを拾い上げてください。きっと良い音楽につながると思います。

-Twitterなどを拝見していると、演奏活動については割と地域密着型で、客席との距離が近いコンサートが多いようにお見受けしますが、演奏する地域や会場の規模などにこだわりはあるのでしょうか?

今村:最近は、お客様ひとりひとりを見られる距離=お客様がこちらをしっかり見られる、どんな位置でも聴こえ方が大きく変わらない距離というところに寄っています(自由席のホールで良い席に座れず、いわゆるハズレ席に当たったとき、良い聴こえ方がせずにげんなりする自分の気持ちの裏返しかもしれませんが)。
場所によっては、手を伸ばしたら触れる位置にお客様がいらっしゃる場合もあるので、一定の距離があるホールより精神面の強さは求められると思います。
地元・入間市は相撲の街というスポーツに強い側面もありながら、文化で誇れる部分もたくさんあり、特にここ数年の学生をはじめとした音楽面の発展は目覚ましいものがあります。数年前の表敬訪問では、市長・教育長と文化的なお話をたくさんすることができました。文化財も有効活用されており、埼玉県の隠れた文化都市だと思っています。その発展に少しでも役に立てているのなら何よりです。

-リサイタルのプログラムを決める際に特に重視していることはございますでしょうか?

今村:そのとき何をするべきかや、どのような来場者が想定されるかあるかで変わってくるのですが・・・
例えば、大正10年築の入間市の文化財「旧石川組製糸西洋館」でのコンサートでは、建物のできた年から現在までの流れでプログラミングし、新しい時代に向かう流れも感じてもらえるような音楽の変化を楽しんでもらいました。サン=サーンスが亡くなってから、まだ100年経ってないんですよ。
一方、ユーフォニアムを楽団などで楽しんでいる方が多いと思われるコンサートでは、ユーフォニアムの楽曲で取り組みやすいものを多めに入れて紹介しながら、少しギョッとする難易度のものまで入れるなどします。
聴く人やその場所のことを考えて組み立てることを大切にしていきたいです。

-今後のリサイタルなどの予定について決まっていることがあれば教えてください。

今村:毎年楽しみにしている小江戸ウインドアンサンブルの公演が4/13にあり、いまからとてもワクワクしています。一般的には小編成と呼ばれることの多い20名程度での吹奏楽団ですが、メンバーそれぞれが様々なジャンルでおもしろい活動をしているため、そんなサウンドが集まるこの団体はとても興味深いと思います。
夏には自身のソロ公演を予定しています。

-最後に、アマチュア奏者の方や愛好家の方に向けて今一番伝えたいメッセージをお願いします。

今村:盲目的に取り組むのではなく、一度まわりを見渡してみる。そんな瞬間があってもいいと思います。目の前の楽譜にかじりつくだけでなく、同じ音楽を愛する人がどんな音楽をやっているのか・・・取り組んでいる曲がすべてではないので、広い範囲で聴いて見て楽しんでみると、さらに楽しめる道が広がっていくと思います!


インタビュー:梅本周平(Wind Band Press)


今村耀さんへのインタビュー、どうでしたか?今回は初回ということもあり、あえてベーシックな質問を多めにしていますが、また機会を見て、今度は少しくだけた感じで色々なお話を伺いたいですね(SNSでは長いおつきあいなのですがまだお会いしたことがないので)。

今村さんの考えや活動は主にTwitterを通して知ることが出来るので、興味のある方はフォローしてみましょう。
今村さんのTwitterアカウントはこちら

演奏もYou Tubeにいくつかありますのでご紹介しますね。

保科洋:幻想曲

AIと人間が合奏に挑戦―みらいのアンサンブル

「みらいのアンサンブル」の舞台裏

今後も色々な演奏家の方にお話を伺っていく予定ですので、どうぞお楽しみに!

■今村耀氏プロフィール:

埼玉県入間市出身。埼玉県立芸術総合高校音楽科卒業。成績優秀者卒業演奏会に出演。日本大学芸術学部を経て尚美ミュージックカレッジ専門学校コンセルヴァトアールディプロマ科を修了。大阪国際音楽コンクール部門最高位他、多数受賞。 2015年「ニコニコ超パーティー2015」出演。2016年日本ユーフォニアム・テューバ協会会報にダブルベルユーフォニアムの演奏が掲載。ヤマハ演奏支援アプリ≪ふこうよアンサンブル~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~≫(響け!ユーフォニアム)開発に演奏提供。2017年2月に同アプリVer.2と書籍第二弾のリリース記念イベントにてオープニングアクトとユーフォニアム独奏によるデモンストレーションを担当。YAMAHA・AI合奏システムと国際イベント「デジタルコンテンツエキスポ2017」で共演。地元・入間市民吹奏楽団の定期演奏会にソリストとして出演。2018年吹奏楽雑誌「Wind-i mini vol.39」巻頭インタビュー掲載。ユーフォニアムなどの金管楽器の個人指導から吹奏楽指導、楽器講習会講師もおこなっており、メディア出演も多く、希少価値の高い古楽器演奏者としても話題を呼んでいる。ASKS Windsより編曲譜出版中。 Ensemble PETS、小江戸ウインドアンサンブル、moiphics、ですカル!各メンバー。




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