「一見四水」~僧侶兼打楽器奏者 福原泰明の音楽説法 第5回

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人気連載コラム、僧侶兼打楽器奏者 福原泰明さんの音楽説法。第5回のタイトルは「一見四水」。今回はどんなお話が聞けるのでしょうか。

 


「あなたは何者ですか?」

もしそんな質問をされた時、皆さんならどう答えますか?
名前を言うかもしれませんし、自分の所属している組織、役職を答えるかもしれません。家族構成を持ち出して説明する人もいるかもしれませんし、自分の趣味、特技など、答え方は様々です。

「一見四水(いっけんしすい)」という言葉があります。これは唯識思想という大乗仏教の思想から来た言葉です。
「水」は人間にとっては飲み物や何かを洗う時に使うものですが、天人にとっては歩くための水晶の床であり、魚にとっては住処であり、そして地獄の餓鬼にとっては血や膿(うみ)となります。同じ物でも、立場によってそれぞれ意味合いが変わってくるのです。

「あなた」は何者でしょうか?
水と同じように、見るものによって変わってきます。同じ組織の人から見たあなた、家族から見たあなた、同じ趣味の人達から見たあなた、そして自分自身から見たあなた。それぞれ姿が変わってきます。
私はやはり、地元地域の人からは「お坊さん」という目で見られます。しかし、一方外に出ると「なんかスキンヘッドの人」。妻は時々、何もできない私のことを「赤ちゃん」と呼びます。(お察しください。余談ですが、あと1ヶ月で本当に子供が産まれます。)

 

Cmという和音がありますね。和声学的にはド、ミ♭、ソの三和音で構成される和音です。
このCmの役割というのは、「何の調で出てくるか」によって役割を変えます。
例えばB♭メジャーの調でしたらCmはIIの和音となるので、次にB♭のVの和音であるFに繋げます。
言い換えると、CmはB♭メジャーの調ではFへ繋げる役割くらいしか持てません。

しかし、E♭メジャーの調ですとCmはVIの和音となります。そうなると次にIIの和音、IVの和音、Vの和音が繋げられるので、B♭メジャーの時より出来る事が増えます。

同じCmの和音でも、その時の調で出来る事と出来ない事が変わってきます。
人間も一緒です。「自分がどこにいて、周りにどんな人がいるか」によって自分の役割は変わってきて、どんな行動するかが変わってきます。

 

特に日本人はよく「自分を主張するのではなく、他人を思いやりなさい」と教えられますが、果たして「自己主張せず他人を思いやる事=自分を殺す事」なのでしょうか?単純にそうなるわけでは無いと思います。

大事なことは「今自分のいるところで何をするべきか、またするべきで無いか」を自分自身で正しく把握する事だと思います。

家族の中のあなたとして、組織の中のあなたとして、別のコミュニティでのあなたとして。そこには必ず「他人」がいます。
そしてそれぞれ「何をするべきか、するべきでないか」と自分の役割を考えてみると、安易に「自分自身を殺す」という結論には至らないと思います。自分が犠牲になる事が必ずしも最善策ではないからです。

水も、和音も、そして人間も、「自分が今どこにいるか」で意味が変わってきます。
その意味や役割を自分自身で把握する事ができれば、また見える世界が変わってくると思います。

「あなたは何者ですか?」
冒頭の質問、あなたならどう答えますか?

私ならこう答えます。
「毎日妻に怯えながら生きている坊主です。」一ヶ月後、私はまともな「父親」になれるでしょうか。

ここまで書いて気付いた。今回音楽あんまり関係ねぇなって。


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うん、音楽あんま関係ないね!とはいえ生き方として考えさせられる内容でした。

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※この記事の著作権は福原泰明氏に帰属します。


【福原泰明 プロフィール】

東京都出身。15歳より打楽器を始める。日本大学文理学部心理学科卒業。英国王立北音楽院修士課程修了。
在学中に学内奨学金を授与される。打楽器全般を大里みどり、シモン・レベッロ、エリザベス・ギリバー、ポール・パトリック、ティンパニをイアン・ライト、ラテンパーカッション及びセットドラムをデイヴ・ハッセルの各氏に師事。第11回イタリア国際打楽器コンクール(ヴァイブラフォンの部)ファイナリスト。

2011年7月、渡英と同時に、世界で最も名高いブラスバンド(金管バンド)の一つ、フェアリー・バンドに入団。同年10月より首席打楽器奏者を務める。同年12月にはブラスバンド専門ウェブサイトの4barsrest.comにて「2011年打楽器奏者ベスト5」の一人として取り上げられる。2012年には有名ブラスバンド専門雑誌「British Bandsman」にて表紙を飾り、ロング・インタビューが掲載されるのを始め、複数の音楽雑誌に取り上げらるなど、英国ブラスバンド界ではまだ数少なかった”打楽器ソリスト”として活動。その存在は、普段ブラスバンドの中ではスポットが当たりにくかった”打楽器”を”ソロ楽器”として認識させることとなる。2013年1月、「RNCM Festival of Brass」にて自身が委嘱したロドニー・ニュートン作曲の打楽器協奏曲「ザ・ゴールデン・アップルズ・オブ・ザ・サン」をフェアリー・バンドと共に世界初演し、満員の観客からスタンディング・オベーションを受け、ブラスバンド界の演奏者、指揮者、作曲家、編集者の各方面からも絶賛される。

同年10月よりレイランド・バンドに入団。打楽器ソロ曲のレパートリーを更に広げていく。同年11月、三大ブラスバンド・コンテストの一つ「Brass In Concert Championships」にてマリンバとフリューゲル・ホルンのデュオを演奏し、「本日の最高の演奏の一つ」(4barsrest.com)と評される。

2014年、世界で最も有名なブラスバンドと言われるブラック・ダイク・バンドに史上初の日本人正式メンバーとして入団。マリンバ・ソロイストとしてコンサートでソロを務める。
オランダの打楽器メーカー”マジェスティック・パーカッション”エンドーサー。


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