「自分も演者の一人だということを認識する」~より良い演奏会のためのフロア・スタッフのマナーとは?元ホテルマン、ムジカ・エテルナ合同会社の豊永さんにお話を伺いました

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今回は、お客様にとって演奏会をより良い体験にしていただき、主催者側も気持ちよく円滑に演奏会を進められるように、演奏会におけるフロア・スタッフ(特に学生や知人にアルバイトお願いした場合やOBが手伝う場合)の接客の仕方について、基本的なマナーからプラスアルファの部分まで、ムジカ・エテルナ合同会社の代表である豊永和也氏にお話をお伺いしました。

豊永氏は3年間ほどホテル勤務の経験があり、フロントをメインに、ロビーなどの仕事をしていたそうです。あくまでもフロア・スタッフのプロではなくホテルマンとして豊永氏が当時の上司から教えられたおもてなし、接客マナーに基づくお話になりますが、得られるものは多いかと思います。

インタビューというよりは放談のような感じになっていますので、お気軽にお読みいただければ幸いです。

ちなみにインタビュアーの梅本自身は大学4年生の時には演奏会当日の責任者という立場だったので舞台裏からフロアまで、開場前から終演後まで関わる立場でもありました。


―本日はお忙しいところありがとうございます。早速ですが、私の経験などを元に演奏会のフロア関係の色々なシチュエーションを想定して、マナー面だけでなくその場合の対応などについてご意見をお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

こちらこそよろしくお願いいたします。

―まずは入場前の話ですが、開場時間前にホール前に沢山人が並んでいる場合がありますよね。施設内だけどホール外、場合によっては施設外の場合もあるかもしれません。季節によって外が寒いまたは暑い中、人が沢山並んでいるのに、開場時間を厳守してロビー開場すらしない場合があります。フロアのスタッフでは決められない場合も多いのかもしれませんが、お客様としては聴く前からあまり良い気分ではないかもしれませんよね。このような状況について、どうすれば良いと思われますか。

マニュアル・・・とは少し違うのですが、主催者側であらかじめ、例えば「列がこのくらいまで並んだら開場前倒し可能」などの状況を想定したうえで、ある程度、現場の判断に任せるということが第一かと思います。僕自身、寒い中並んだ覚えもありますし、逆に演奏会で誘導の係をやったこともあるのでどちらの立場も分かりますが、これに関しては主催者が現場の判断にゆだねることが大事かと思います。もし出来るのであればインカムを使って内部と連携したりするのが望ましいですけれど。誘導する係の側からすると、自分たちで判断して決められないというのがネックになります。開場時間などはあくまでも主催者都合になりますので、臨機応変に対応出来るような体制が整えられていると良いですよね。

―例えばあらかじめ、公示している開場時間から、状況によって15分前までは開場前倒しをしてもいいよと決めておくとか、実際その状況になったらインカムでやり取りするとか伝令を走らせるとか、そういうことですよね。

責任者が楽屋や舞台側にいたとしたらそうですね。

―ホールに内線があれば内線を使うのも手ですね。次に、開場前にお客様から見てドアの向こう側にはフロア・スタッフがいますよね。そのスタッフが、じゃれ合ってたり談笑していたりする場面がありますよね。まあリラックスしていても良いんですけど(笑)、先ほどのように、外が寒い、暑いという状況で並んでいる側からするとちょっと嫌な気分になる方もおられるかもしれません。この辺りはマナーとしてはどうなんでしょう。

お客様を招き入れる準備が整っているのであれば、必要以上に気にする必要もないのかもしれませんが、日本ではマナーとして良い印象を持たない方も多いと思います。特にアマチュアの演奏会となると、プロのスタッフが取り仕切るということも少ないでしょうから難しいとは思うのですが、お客様を招き入れる立場の人間として、ある程度「私たち(フロア・スタッフ)も演者である、演奏会を創り上げる重要な役割である」という認識を持つと良いと思います。OBの方や初めてスタッフ業務をやられる方の場合は、主催者側がある程度「あなたも演者の一員としてスタッフを演じなければいけませんよ」ということを、彼らに伝わるか伝わらないかは別として、そういう「演じる役割」を与える、ということは大事だと思いますね。

―あの時間帯ってスタッフはどうしてたら良いんでしょうね。整列してれば良いんでしょうかね。

ホテルでもヒマな時間はあって、喋ってないように見えて喋ってたりするんですけど(笑)、周りから見てどうか、ということですよね。大笑いしていたり、というのはどの場面でもあまりよくないかと思います。持ち場に合わせて整列しているのが良いかもしれませんが、「今からお客様を招く、開場できる準備が整っていますよ」という風に見えれば、何でもいいのかなと思います(笑)。

―これはインタビュー前に基本的な質問項目を見直しているうちに思いついただけの話なんですけど、例えば飲食店なんかだと、待っている人に先に注文を伺ってたりするとことがありますよね。開場前に待っているお客様に出来るサービスってありますかね。先にパンフレットを渡して回るとか。それはそれで入場の際に混乱しそうですけど。

パンフレットを配るのもそうですけれど、待ち時間をどう過ごして頂くかということに関しては、何か気を紛らわせるようなものがあると良いかもしれませんね。パンフレットの他には例えば「あと5分で開場予定ですので今しばらくお待ち下さい」というようにお声掛けをして回るだけでもだいぶ印象は変わると思います。何も世間話をする必要はないですけど、場外スタッフがお客様の列を順に歩きながら「もう間もなくです」などと言ってまわるだけでもだいぶ違うのではないでしょうか。

―声かけは良いですね。ちなみにホテルの場合はお客様が演奏会のようズラリと並ぶってこともないとは思うのですが、どうなんでしょう。

そうですね、演奏会とは違いますけれど朝と夜のラッシュの時間帯というのはあって、そういう場合はもちろん人員を増やして、並ばれているお客様のサポートを行います。お客様が「いま何を求めているのか」ということを予測して、先ほどの飲食店の事例に近いですけれど、先に「フロントで何をしたいのか」をお伺いするようなこともあります。

―そう考えると、先にチケットをもぎっちゃってすぐに入場できるようにしておくのもアリかもしれませんね。ドアをいくつか使うことになりますけど、先にもぎり終わっている方とまだもぎりが終わっていない方で入り口を分けて、先に列を誘導をしておけばいいのかなあと。ただの思いつきなんですけど(笑)

アリだと思います(笑)。

―次に入場前と入場後直後の共通のお話になるのですが、まず入り口に当日券売り場、招待者受付、チケット取り置きの受付、そしてもぎり(入場口)など受付が多い場合は、特に開場前から開場後しばらくの間は混雑していて、まだお客様がホールには入りきっていない状態が生まれますよね。その場合、施設内の他の施設、例えば他のホールや施設内の飲食店などをご利用されるお客様にも影響がある、迷惑がかかる場合があります。その状態で場外の誘導があまりに下手だな~と思う時があるのですが、誘導員の数と質をどうすればより良い環境を作れると思いますか。何かノウハウなどございますでしょうか。

これは施設によって出来るところと出来ないところがあると思いますし、列の先頭から最後尾までは難しいと思いますが・・・列に関しては、人間の習性上、前に並んでいるお客様の後ろに並びますよね。ですので最初に並んでいる20~30人くらいのところまでに「こういう風に並んでほしい」という感じで、整列させるためにパーテーション的にポールを並べて立てておく、という手はあります。並び方に関して言えば、これは有効ではあると思います。ただ混雑に伴う他の施設のお客様への配慮についてすべてを解決できるものではないでしょうね・・・

―スタッフの人数としてはどれくらいが適当なのでしょうか。声かけを出来るスタッフですね。一人でどれくらいまで担当できるのかというところですけれど。

もちろん数が多いに越したことはないですけれど、きめ細やかにお客様に「お静かにお願いします」とか「このようにお並びください」といったことを声かけ出来るのは、一人のスタッフあたりお客様20人~30人くらいが限界かと思います。

―となると、過去の経験からどれくらい開場前・開場直後にお客様が外に並んでいるかを予想して、それを20~30人で割った分のスタッフを配置するのが望ましいという感じですね。

そうですね。出来ることであればそのほうがよいかなと思います。あまりスタッフが多すぎても良くないのかもしれません。

―これは吹奏楽の公演ではなくて管弦楽の公演だったのですが、以前僕が行った公演で、凄くお客様が多い公演があったときに、誘導係の人がお客様を乱雑に扱う、お客様への呼びかけが威圧的である、というようなことがありました。かなりお客様がいた割にスタッフの数も少なかったですし、開場前から話し声がワンワンと響いて他の施設にも迷惑な感じだったのでイライラしてしまう気持ちもよくわかるのですが、ホテルのお仕事を通じて学んだスタッフ側の心構えというか、そういうイライラしてしまうような状況の時にどう振る舞えば良いのか、何かポイントがあれば教えて下さい。

やはりお客様は、お金を払っている払っていないに関わらず、貴重な時間を割いて演奏会に来ていただいているので、お客様の立場、よく「当事者意識」と言われましたが、当事者意識とお客様に共感する力というのは常に持ち合わせていないといけない、と教わりました。これはホテルに限らずだと思いますけれど。演奏会の主催者側としては、お客様に最も良い状態で演奏を聴いていただくのがベストですからね。当たり前のことではありますが、そのような状況になると当たり前のことが出来なくなってくるのも人間です。そこでお客様の目線、当事者意識を持つのがイライラを抑えるのにも効果的です。ちょっと視点を自分からお客様の視点に変えるだけで、「イライラしている場合じゃないな」と思うことが出来るのではないでしょうか。忙しい時にこそ、どんな職種にも当てはまりますね。

―ではそろそろ開場しましょうか(笑)。これは別にバンドで好き好きだとは思うのですが、いざ開場というときにドアを開ける花形スタッフみたいなのがいる場合もあると思うんですけど、開場の瞬間どんな言葉をお客様にかけると良いでしょうか。無言でサーッとドアが開いてもちょっと気味悪くないですか(笑)

本当にちょっとしたことですけど、お待ちいただいたことに対するねぎらいの言葉に加えて、これから何か楽しいことが起こるぞ、と思わせるような言葉、「素敵な演奏をお楽しみください」であるとか、そういうのを加えてみてはいかがでしょうか。単純に来てくれてありがとう、だけではなくて、「何かが始まるんだな、楽しみだな」と思わせるような一言を言えると、お客様も「おおっ」と思われるかもしれません。その辺りも先述の通り、「演者」であるというかエンターテイナーであるというか、そういう心構えがあると良いですね。お客様にとって待ったストレスを少しでも和らげるようなことを言えると、待ったことを無駄だと思わないで頂けますよね。さりげない一言でも構わないと思います。とはいえ簡単なようで難しいかもしれませんが。

―続いて、入場開始した後の話になりますけど、まず入り口付近の話で、入り口でもぎりの人やパンフレットを渡してくれるスタッフの方がいらっしゃいます。だいたいの場合は「こんにちはー」みたいな声掛けをしていただけるのですが、稀に無言だったり「あっ」だけだったりすることもあります。入場の際のそういったスタッフや受付の方のお声掛けについて、より良い演奏会にするために、何が出来ると思いますか。

もぎりもそんなに時間をかけられないですよね。お声掛けを出来る時間というのは数秒しかないと思います。その分、「フツーの演奏会」から「良い演奏会」に変えるためにプラスアルファとして「グッ」とお客様の心をつかむような何かをするのであれば、やはり「ありがとうございます」「こんにちは」などの前に「お暑い中/お寒い中、大変お待たせいたしました」であるとか、何か言葉をプラスすると「おっ」と思わせる効果はあるかと思います。簡単にできる挨拶の仕方、お礼の仕方として、接客のプロの方でなくても、学生さんでも実践できることではあると思うので、取り入れてみると良いのではないかと思います。本当に数秒ですけど、スタッフとお客様の二人だけの空感になるので、それを活かしたいですね。

―後は、入場口が狭いのに対して列を2列にしてしまっていたりとか、誘導不足で入場した直後に入り口付近で立ち止まってしまうお客様がおられたりとか、の理由で、スムーズに入場できずに入り口付近が混雑している場合がありますよね。その際に、他のスタッフが特に何も手伝いもせずに目の前で談笑しているか突っ立っている場合がありますよね。彼らが何者なのかよくわからないですが、スタッフであった場合で、自分の持ち場がある場合、そのように混雑している状況で、どうするのが良いのでしょうね。

例えばドアマンであれば開場後、ドアが開放されている場合は誘導に回るとか、そういうことを事前に決めておくのが良いでしょうね。臨機応変は難しいところがあるかもしれません。他には、人数が割けないようであれば、立て看板のようなものを使ってお客様を誘導して動線を確保しておけば、そんなに入り口で混雑することもないと思います。

―ホールを借りるのが当日だけという場合、準備だけで時間がかかるので、なかなかフロア・スタッフの動きのリハーサルが出来ないとは思います。その場合は責任者が簡単な指示と確認事項を伝えるだけで終わってしまっているのかもしれません。

僕も母校のOBとしてフロアのスタッフをやったことがありましたが、規模が大きかったので、係の割り振りが終わった後に、そのチームで集まって、フォーメーションを確認したり、「万が一こういうことが起きたらこうする」というところまで打ち合わせはしていました。そんなに時間がかかることではなくて10~15分で出来るので、当日集まったスタッフでも出来ることです。最低限それくらいはしておきたいですね。

―では無事に開場した後のお話に移りたいと思います。まず全席指定の公演の場合ですが、ホール付きのフロア・スタッフがいる公演だと座席の誘導をしてくれたりすることもあるのですが、そうでない場合は誰も誘導せずに、お客様がホールに掲示されている座席表の前に群がって、動線がふさがれることがありますよね。他にはホールの構造上、座席番号を見てもどこのドアから入るのが近いのか分からないこともあります。これを解消するためのスタッフの動き、ホール内の誘導係の動きや配置についてはいかがでしょうか。

色々方法はあるとは思いますが、スタッフの人数には限りがあると思うので、スタッフが少ない場合は何らかの手段をつかって「座席表」そのものを増やすという手もありますね。座席表を拡大したものをスタッフが持ったり、ホワイトボードなどに掲示したりして物理的に座席表を増やすという考え方です。

あとは、座席エリアごとに、スタッフが「ここからここの座席の方はどこそこの扉から」とか「2階へお上がりください」とか声を出して誘導しているところもあります。これだと比較的迷わずに進めるので、良いかと思います。スタッフがどのエリアの座席はどこへ誘導するか、決めておくと良いですね。アルファベットと数字だけで区分けするのであれば、当日でも充分覚えられると思います。

また別の観点から、スタッフ一人一人が座席表を持っていた方が良いとは思います。

―例えばそれだとパンフレットに座席表を印刷しちゃえば便利じゃないですか?

それは理想的ですね。ただそれが難しい時はやはりスタッフ一人一人になりますね。全部の責任を負う必要はないと思うので、誘導スタッフの担当範囲を決めて配置するのも良いかもしれません。

―これはちょっと余談ですけど、全席自由の場合で入場後に駆け出すお客様がいらっしゃいますよね。正直危ないので主催者としては走って欲しくないと思いますが、これを止める方法ってあると思いますか?

難しいですね(笑)。あのディズニーランドでさえ開門後に走るお客様を止められてないですからね(笑)。ディズニーランドで制御出来ないということは演奏会でも制御するのは難しい気がします(笑)。

―またちょっと話が変わりますが、お客様同士で何かトラブルがあった場合ってスタッフはどうしたら良いですかね。

スタッフとしては見てみぬふりは出来ませんよね。目や耳でトラブルを感知したらまずその場所に飛んでいって、立ち会って、どういう状況なのか瞬時に把握をして、何が原因でトラブルになっているのか、その理由を知ることです。お客様も興奮されているでしょうから、まずは自分が冷静に「お客様いかがされましたか?」とお声を掛けて、主催の何かが原因であれば謝る、主催と関係ないところでトラブルということであれば、出来ることは限られますが、スタッフが間に入ることでお客様同士を落ち着かせることですね。

―開場した後は舞台側のスタッフとの連携も大事になってくると思いますが、やはりインカムはあった方が良いでしょうか。

やはりスタッフが個々で動くことになるにあたって、プロのスタッフの方であれば状況に応じて誰に指示を仰ぐとか、縦の構造・横の構造がしっかり出来ているからこそ個々で動けると思うのですが、そうでない場合はコミュニケーションを円滑に行うという意味では、何かしらの連絡手段は持っていた方が良いですよね。逆に上から下に指示を出すときにもインカムがあれば円滑に進むので、インカムに限らず、指示を出す仕組みは必要でしょうね。

―例えば入り口付近だとか、フロアを見渡せるところとかにリーダーを配置して、その人が状況を見ながらどんどんインカムで指示を飛ばしていくのが良いんでしょうかね。

その通りだと思いますね。僕はマクドナルドで働いたことはないのですが、マクドナルドでは、厨房、レジ、ドライブスルーすべてを把握出来る位置にいるスタッフが自分の業務をしながら指示を出している、という風に聞いたことがあります。実際にマクドナルドで働いている知人がいて、彼に聞いた話では別にポテトを揚げる場所とか、そのように場所が固定されているわけではないそうですが、一番全体を見渡せる位置にいる、指示を出すスタッフがいるのは本当みたいです。

―インカムを導入するかどうかは別として、ホールの下見の時には全体を見渡せる場所を探しておくと良さそうですね。そこまでしっかりやるバンドだとこれまでお話してきたことも特に問題なさそうですけど(笑)

状況を見渡せるスタッフは必要でしょうね。

―続いて公演中の話なのですが、開演に遅れて途中で演奏会に来た場合に、演奏中「この演奏会はどのタイミングで途中入場できるのか」とかわからないですよね。ドアマンの方が座ってうつむいておられたりすると、話かけて良いのかも分からない。ドアマンの接客という意味では、こういう場合はどうしたら良いと思われますか。

遅れてきたお客様が大勢で一人のドアマンの周りに群がるということはないと思うので、必要に応じてお声掛けをしてみたほうが良いかもしれません。例えば指定席であれば、チケットを拝見して、自分の持っている座席表と照らし合わせて、最適なドアの場所をご案内することも出来ます。自由席の場合も、開演時ドアを閉める前に、だいたいどのあたりに空席が多いかを見ておいて、それをご案内するのも良いのではないでしょうか。舞台側からインカムや内線でドアマンに「この辺りは10人くらいいけるよ」などの指示を出しても良いですけれど。

後は時間によって、「もう少々でご案内出来ます」とか、そういうケアであればどんな方でも出来るかと思います。接客業としては、「お客様から声をかけることが出来ないスタッフ」になってしまうと、仕事にならないんですよね。もちろん望んでドアマンをやっているわけではない、という人もいらっしゃるかとは思いますが、「ドアマンは途中でご来場のお客様にはこういう風に声をかける」とあらかじめ仕事内容に盛り込んでおくことですかね。

―なるほど。後はドアマンに限らずトイレの場所や自販機のある場所なども把握しているとなおよしですね。

そうですね。

―さていよいよ終演しました。終演後に混雑してなかなかホールの外に出られないことってありませんか。吹奏楽に限ったことではないですけど。

ありますね。

―誘導がいたとしても、物販との兼ね合いや、演奏者がフロアに出てきて動線が混乱するということもあります。これどうしたら良いですかね。

どうすることも出来ないと言えば出来ないんですけど(笑)、スタッフにある程度人数がいる場合は、もう仕事が終わった方、例えばもぎりの担当だった方、受付の方、ドアマンの方、皆担当を外れることになるので、そういったスタッフを等間隔に配置するなどして動線を決めてしまって、その動線を邪魔しない範囲で物販を行ったり出演者と話していただくなりするしかないかなと思います。

―スタッフを等間隔に配置して動線を作るのは分かりやすいかもしれませんね。公演前に、あらかじめ終演後の動線を決めて、そのうえで物販の位置や出演者が出てこれる位置を決めておくのが良いかもしれませんね。その他、終演後にフロア・スタッフがお客様に対してしたら良いと思うことはありますか。例えばホテルであれば、高級ホテルだとホテルの入り口までスタッフがお見送りに来たりするところもありますよね。

そうですね。その場で立って「ありがとうございました」で終わるよりも、ある程度ご案内をして頭を下げてお見送りをする方が良いとは思います。ただそれを演奏会で一人一人のお客様にどこまで出来るかというところですよね。

―お客様にとって、演奏会がどこで終わるのか、というのを考えると、僕個人はホールのドアを出た時なんですよね。大ホールでも小ホールでも、そのドアを出た時ですね。ドアを出てホールの外に出た時に「あー終わった」って思うんです。例えばそのドアの外側、施設内のホール外とでも言いますか、その場所にスタッフを配置して、ドアを開けて「終わったー」っていう瞬間に「ありがとうございました」って声をかけてもらったら、なんかほっこりした気分で帰れるんじゃないかなあと思うんですが、どうですか。

それは良いですね!高級ホテルの接客ですね(笑)

―長くなりましたが、最後に、当日のフロア・スタッフに主催者側が伝えておくべき大事なことは何だと思われますか。

やはり先ほども申し上げましたが、スタッフに対して、「裏方ではあるけれどお客様から見たら皆さんも出演者なんですよ、空間を演出する出演者の一人なんですよ」ということを伝えて、ある程度共通認識を持つだけでも、意識が大きく変わってきますし、それに伴って行動も変わります。「そんなこと言ったところで変わらないだろ」と思われるかもしれませんが、これは私がホテルで働いていた時に言われていた言葉と同じような言葉で、自分自身にそういう役割があると認識するだけで実際に行動が変わるのは体験済みです。ただのスタッフではなく演者である、という意識を持ってもらうこと、動機付けを行うことが大事ですね。


インタビュー・文:梅本周平(Wind Band Press)


まとめ:

どちらかというと大きいホールを想定しての話だったのですが、いかがでしたでしょうか。

豊永さんもホールのフロアのプロではないですが、ホテルマンとしての経験と自身が演奏会に行っている経験、またOBとしてフロア・スタッフを行った経験などから、色々なお話が聞けたと思います。

実行するのはなかなか難しいこともあるかもしれませんが、もし皆様がご自分の演奏会をただの演奏会から「ちょっと良い演奏会」にランクアップさせたいのであれば、フロア・スタッフについても色々と気を配ってみてはいかがでしょうか。今回の記事が何か参考になれば幸いです。

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